異界
ほんの少しグロ注意。
かなりソフトにしましたけど。
◇
金髪に髪を染めた少年は薄暗い路地を走っていた。
全速力で走っていたため息が荒い。
疲れの為か足がふらつき足を縺れさせていた。
「ハアハア」
そのまま立ち止まる。
「あ~~糞何なんだよ」
ヒイヒイと情けない息をする。
「あ~~息が苦しい」
全力疾走で逃げてきたんで横っ腹がいてえ~~。
ああ~~糞っ!
糞爺共がっ!
ホームレスから家賃を回収しようとしたらこんなことになんて……。
「アイツ……此の間の日曜日にツレとボコって動かなくなった奴じゃないか」
何で生きてんだよ。
頭から血を流して息してなかったろ。
「しかも怖くなって山に埋めた筈なのに……」
血の泡を吹いて白目で死んでた爺の顔が脳裏に浮かぶ。
確かに死んでた筈だ。
確かに。
なんで……。
「チッ!」
ブルッと、寒気がした。
まさか幽霊?
そんな筈はない。
足が有ったし。
其れに此奴でボコった時はチャンと殴った感触が……。
あれ?
金属バットがまるで飴細工のように曲がってる。
「ひっ!」
カランカラン。
何だ。
何なんだ。
俺は何時ものように……。
「あれ?」
知らずに唾液を飲んだ。
「何だ此処は?」
思わず周囲を見渡す。
「何時もの繁華街じゃねえ?」
見覚えが有る光景なのに違和感が有った。
其の違和感は色。
色彩。
見るものすべてが赤い。
「何だ此処は?」
其の言葉を口に出すだけで精一杯だった。
まるで透き通るような硝子の世界。
色のついた硝子を見ているような異界。
硝子の上に深紅の絵の具をぶちまけた様な世界が広がっている。
赤い色。
血の色。
赤い世界。
赤い空の上を見上げると爛々と輝く月が存在した。
赤い月が。
建物は分かる。
電柱も赤く塗られてるのは許容範囲だ。
建築物だから。
し映る全ての自然が血の様に赤いんだ?
ガタン。
「ひっ!」
物音に怯え振り返る。
「な……なんだ!?」
其処に居た者を見て顔が引きつる。
「何で御前が……まてっ!?」
ガンガンガシャンッ!
連続して甲高い硝子の砕け湿った音がした。
「ぎやああああああああああああああっ!」
何か湿った音が辺りに響く。
其れは断続的に続いた。
暫しの沈黙。
何かを咀嚼する音がする。
更に時間が経過して静かになった。