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未定  作者: Ice
2/2

魔法のお家

 まだ薄らと雪が残る季節、1人の青年がとある家の前に立っていた。

 青年はリュックを黒のリュックを背負い、白のTシャツに黒いパーカーを羽織り、紺色のジーンズを履いていた。左手には住所が書かれた紙を持ち、右手は空中を彷徨っていた。

「書いてるのと違うじゃないか」

 と、青年はひとりごちた。

 彷徨う右手の前には、透かし彫りが施されたインターホンがあり、とてもお洒落な雰囲気を漂わせていた。

インターホンが設置してある門袖は、西洋風の造りをしていた。門柱部分は、薄いレモン色を基調とし、所々に赤茶色のレンガが埋め込まれていた。柱の上には金色に染色されたライオン2匹が鎮座していた。ライオンは両側の柱に一体づつ置かれ、一匹はスフィンクス座りをしていた。そして、もう一匹は何故か仰向けで、腹部を上にして四肢を遊ばせている獅子という感じであった。

柱と柱の間には、焦茶色っぽいゴシック調の門扉があっり、コンクリートで出来たアプローチには円弧を描いていた。

「間違えたかな? でも住所はここだし・・・」

 そして、右手が彷徨よう原因は、門扉と塀から見える建物であった。

漫画や小説であるように、門から建物まで徒歩30分とかいうデタラメに長いわけではないが、普通の民家よりも長く、おそらく100m位はあるように思われる。

木が生い茂って正確には見えないが、ここから見る限りでは家の正面には窓が8つほど設置され、上下4個つづ綺麗に並んでいる。窓の周りは白い額で覆われ、お洒落な両開き窓のように見える。

壁は空色で、あまり色は濃くなく、周りの景色と調和した丁度良い色だ。

「それにしても、この不動産の写真と全然違うんだが、もしかしてこの建物潰れた? それとも、俺の目が狂ったか? だってーー」



 だって目の前に見えるのは、どう見ても豪邸なのだ。



「ねえ、君。ここで何してるの?」

 と、右側から声が聞こえる。

「え?」

 声のした方向を見ると、1人の少女が腰に手を当て仁王立ちしていた。

 その少女は俺よりも若く見えた。身長は俺の目線ほどの背丈で、茶色い長髪と瞳を持ち、アジアの中でも肌が白いと言われる日本人より白い肌をしていた。

そして、少し冷気を帯びた風になびく髪は、太陽の光を浴びてキラキラと赤っぽく輝き、周辺に微かにシャンプーの良い香りを漂わせる。

また、瞳は色素が薄く、光が当たるたびに焦茶色っぽい目の色が透き通った栗色に変わり、綺麗であった。

色素が薄く、雪と溶けてしまいそうだ、と少女を見つめていると、彼女の口が動いた。

「聞いてるの?」

「えっと、あの・・・あ! これ」

 と言い、つい見惚れてしまったのを誤魔化すように急いで左手に持っていた紙を少女に見せる。

 少女には、アホ毛が搭載されているようで、首振りソーラーパネルの置物の如く左右に揺れた。

 少女はそれを暫く見ると、何かを思い出したかのように手をポンと打った。そして、先程までの怪訝深そうな顔から一転して緊張が解けたように笑い出すように言った。

「ああ! 君が今日家に見学に来るって言ってた人ね。家の前でブツブツ言いながら居たから、てっきり怪しい人かと思ったよ!」

「ごめん。この家が想像よりも綺麗だったから」

「そりゃそうさ。あたしんちだから」

「ええ?? これって、君の家? てっきりここの住人かと」

「そうだよ。私の家。そして、私がここの管理人さんさ。何だい? 君もこの家と私が不釣り合いだと言いたいのかい?」

「いや、そんな訳じゃ・・・」

 他にも同じことを思った人がいるのか、と言いそうになるのを堪えた為、少し語尾が裏返った。

 少女は少しムッとし、観察するように俺の顔を見た。

「まあ、別にこの家は私が建てたものじゃないからね。仕方がないわ。まぁ、案内したげる。でも良い?ーー」

「?」


「この家に貴方が住んで良いかどうかは、この私が決めるわ!」


 と、少女はビシリと人差し指を指し、胸を張って言う。

「え!!!??? 普通逆じゃない!?」

「ここは訳ありなの!」

「え・・・事故物件?」

 と、チラシの要項を見る。チラシには、物件の写真と間取り等しか書いなかった。

「馬鹿ね」

 と言う少女の顔には、飽きれたと言う表情が浮かんでいた。

「もしかして、このチラシに掲載してある写真と目の前の家が違うんだけど、これと何か関係してるの? これに掲載されてるのは、普通のマンションみたいなところなんだけど」

 と、チラシを少女を顔の前に持っていく。

「そんなに近づけなくても老眼じゃないんだから見えるわよ」


「だって、違う」

「そりゃそうよ。だってここはーー



“魔法のお家”    



なんだから」



 と、少女が言うと、冷たい風がぴゅうっと俺たちの横を駆け抜けた。



 体がブルリと震える。


 魔法と言われても、魔法に関する知識はハリーポッ●ター位しか知らない。しかも、映画を半分寝ながら見たから要所要所しか記憶に無い。

ふと、魔法と言えば空中に物浮いてるイメージが浮かんだ。浮かぶと言うと、ポルターガイスト現象でも物が浮いている事を思い出した。そして、頭の中で2つの記憶が融合し、幽霊の仕業を魔法と言っている可能性が浮上。

「幽霊、いる?」

「何でさっきから霊が気になるの? 気になるのそこじゃないでしょ」

「ここだけの話、俺怖い番組見た後夜中トイレ行けないタイプなんだよね」

 と言うと、少女は口を開けて少し固まった。

「・・・入ったら分かるわ。ほら行くわよ!」

 そう言い、少女は俺の腕を掴み引っ張る。

 俺は、訳がわからないままズルズルと魔法の家とやらに引きずられていった。





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