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第8話 超魔王を討伐したことを宣言する!


 俺たちの目の前に現れたのは超魔王リリアーヌだった。

 

「げげっ!」


 俺はとっさにミントとクルルをかばうようにしてリリアーヌの前に立つ。

 その様子を見たリリアーヌは口元を引きつらせた。


「なんじゃ? そのニャモフ族のおなごどもは?」


 黒い炎が彼女の全身を包んだ。

 まずい……。すごく嫉妬してらっしゃる。

 

「待て待て! 勘違いするな! ここにいるミントとクルルは気を失っていた俺を助けてくれたんだ!」

「むむっ! 気を失っておっただと? なにがあったのじゃ?」

「おじちゃんはミントお姉ちゃんのおっぱ……」

「だああああああ!」

「んぐっ!?」


 俺は慌ててクルルの口をふさいだ。

 そりゃそうだろ。

 ミントのおっぱいに顔を押し付けられて、幸せな気分に包まれながら気を失った、なんてリリアーヌが知ったら……。

 島ごと吹っ飛ばされるぞ。

 

「あはは。空から降ってきた時に頭を打っちゃってな。それで気を失ったんだよ」

「なんと! そうであったか!」


 リリアーヌは殺気を解いたかと思えば、すぐに俺に抱きついてきた。

 

「大丈夫か? わらわのことは覚えておるか?」


 ああ、本当は今すぐにでも忘れたいが、残念ながらしっかり覚えているさ。

 ……とは言えず、

 

「ああ、もちろんだ」


 と告げながら、彼女を引き離した。

 

「ところでよくここが分かったな?」

「ふふふ。ヒューゴの匂いをたどってきたのじゃ」

「まじか……」


 能力だけじゃなくて嗅覚までめちゃくちゃだとは……。

 普通に引くわー。

 そこにミントが恐る恐る顔を覗かせてきた。

 

「ねえ、ヒューゴさん。この綺麗な人はどなたなの?」


 リリアーヌはずいっと胸を張った。

 

「わらわのことを『綺麗』と申すか。ニャモフ族のおなごにしては随分と分かっておるではないか。よいだろう。冥土の土産に持っていくがよい。わらわの名はリリ……。んぐっ!?」


 素早くリリアーヌの口をふさいだ俺は早口でまくしたてた。


「リリニャン! こいつの名前はリリニャンだ! 俺とはパーティーを組んで旅をしていたんだ! はは、ははは」


 リリアーヌが目を大きくして凝視してくる。

 俺は彼女の耳元でささやいた。

 

「頼む。話を合わせてくれ」

「んぐ!?(なぜじゃ!?)」

「お前の正体がバレたら、俺はおまえと戦わなければならない。それは嫌だろ?」


 実際のところリリアーヌと戦うとなれば、リリアーヌを倒せる可能性があるスキルは「クルクルプン」だけだ。

 ところが「クルクルプン」の効果はランダム。

 もし「バーシブット」で俺が飛ばされてしまったら、この国とミントたちはリリアーヌによって消されてしまうだろう。

 それだけは避けねばならない、というのが本音だった。

 

「ん……。(うん)」

「よし、じゃあ頼んだぞ」


 俺はリリアーヌの口から手を放した。

 彼女はふいっと顔をそらしながら口を開いた。

 

「わらわの名はリリ……ニャンじゃ」

「リリニャンって可愛い名前だねー! よろしくね! リリニャンお姉ちゃん!」


 ぴょんと前に出てきたクルルが小さな手をリリアーヌに差し出した。

 明らかに握手するのを嫌がるリリアーヌ。

 俺は彼女の脇腹を肘でつついた。

 

「ほら。握手」

「なんでわらわがニャモフ族の小娘ごときと……」

「いいから。これも俺たちが仲良く過ごすためだ」

「ぐぬっ……。この屈辱、二度と忘れんからな」


 リリアーヌがちょっとだけ手を出すと、クルルは勢いよくその手をつかんだ。


 ――パシッ!

 

「あはは! これで私たちもお友達だね!」

「お友達じゃと……?」

「うん! お友達!」


 リリアーヌの顔に明らかに戸惑いの色が浮かぶ。

 

 ――わらわには友達がいないのじゃ! 悪かったな!

 

 あの時の言葉を思い出されると、自然と笑みがこぼれた。

 

「よかったな、リリニャン。友達ができて」

「ふん! わらわは友達などいらぬ!」


 口では強がっているが、頬が桃色に染まっている様子からして内心は喜んでいるんだろうな。

 素直じゃないやつめ。でもなんだか可愛らしいな。


 ……って、俺は何を考えているんだ!?

 こいつは超魔王なんだぞ!

 あらゆる生物にとって敵なんだぞ!


 そんな風に自分で自分に憤っているうちに、横からミントが弾んだ声をあげた。

 

「リリニャンさんも極悪非道の超魔王を封印するお手伝いをしてくださるのですね!」


 リリアーヌの表情が凍り付いた。

 

「あ? 小娘。今なんと申した?」

「え?」

「超魔王のことを極悪非道だと? 封印するだと?」

「え? え?」


 まずい!

 リリアーヌが再び黒い炎に包まれてる!

 

「あー! その件なんだけど!」


 慌てて二人の間に入る。

 しかし後が続かない……。

 

「なんじゃ? ヒューゴも極悪非道と申すか? 封印したいのか?」


 リリアーヌは『世界を恐怖と混とんに陥れる』と豪語している悪魔。

 極悪非道だと感じたり、封印しなくてはならないと思うのは当然だ。

 ……けど、なぜだ。

 悲しげなリリアーヌの表情を見ていると、「当たり前だ」の一言が出てこないのは……。


「ヒューゴさん……?」

「おじちゃん、どうしたの?」


 ミントとクルルが眉をひそめる。

 ダメだ。

 なんとしてもごまかさなくては!

 

 道具袋に手を入れる。

 何かないか?

 ……と手におさまったのは、ベルドスを倒した時に手に入れたエメラルドグリーンの宝石がついた指輪だった。

 ええい! こうなったら破れかぶれだ!

 

「すっかり忘れてたけど、もう超魔王を倒したんだ! これがヤツの遺品さ!」

「それはちが……。んぐっ!?」


 リリアーヌの口をふさぎながら指輪を高々と掲げる。

 それを見たミントとクルルは目を輝かせた。

 

「やったああ! おじちゃん、すごーーーい!」

「あはは! さすがヒューゴさんだわ!」


 リリアーヌの冷たい視線が痛い。

 だがこうなったら嘘を貫き通すしかない。

 だから高らかと宣言したのだった。

 

「この国は平和になった! これからみんなで国づくりをするんだ!」


 と――。


『おめでとうございます。あなたはモチモチオハダ王国の国王に認められました』

『ボーナススキルとしてダンダンネムクナールをゲット』

『モチモチオハダ王国のステータスです』


【モチモチオハダ王国】

国レベル:1

人口:4人

収穫力:5

防衛力:1

技術力:1

交易力:0

観光力:10

鉱山:0

国の規模:極小

水道:×

電気:×

鍛冶:×

特徴:超魔王が領民として住んでいる


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