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第5話 勘違いした超魔王がセクシーな下着で子作りを迫ってきた

◇◇


 スキル『セクシーポーズ』の効果によって、俺と超魔王リリアーヌはパーティーになった。

 なおライブラリいわく、『セクシーポーズ』で仲間になった相手は、どちらかが死ぬまでその効果が続くらしい。

 つまり俺かリリアーヌのどちらかが死ぬまで俺たちはパーティーというわけだ。


「わらわの夫にあだなすものは許さぬ」

 ――ドオオン!

「ギャアア!」

 ――ドオオン!

「ゲエエエ!」


 彼女の圧倒的な強さによって、俺の旅はさらに楽になったのは間違いない。だって何もしなくても彼女が勝手に倒してくれるのだから。それは楽で楽で仕方ない。

 だが気になるのは彼女の口から時折出てくる『夫』という単語だ。

 明らかに俺のことを言っているように思えるのだが、気のせいだよな?

 モンスターの群れを瞬殺したリリアーヌが、ドレスのすそをふわりと浮かせながらこちらに振り返った。


「うふふ。ヒューゴよ。わらわがまた敵を倒してやったぞ!」


「そうか。サンキューな」


「……それだけか?」


 リリアーヌがもじもじしながら、上目遣いでこちらを見ている。

 明らかに何かを求めているようだ。

 そこで俺はたずねた。


「なあ、何かして欲しいのか?」


「……うむ」


 あれだけ高飛車だった彼女の態度が妙にしおらしい。

 しかし彼女が何をして欲しいのか、さっぱり分からない。

 俺は語調を強めて問いかけた。


「だったらはっきり言ってくれよ。俺に何をして欲しいんだ?」


 その直後だった。


 ――グイッ!


 俺は彼女に腕をつかまれたかと思うと、近くの繁みの中に引きずり込まれたのである。


「のわっ!」


 すさまじい力になすすべなく仰向けにされる。

 するとリリアーヌは俺の上に馬乗りになった。


「な、なにをするんだよ!? 俺たちパーティーだろ!」


「……パーティーの前に『夫婦』じゃ」


 やっぱり彼女の言う『夫』とは俺のことだったのか。だが俺は認めんぞ!


「はあ? 夫婦って、俺はお前と結婚した覚えはない!」


 俺の言葉にリリアーヌは頬をふくらませた。


「だって『愛してるぜ』と言ってくれたではないか!」


「それは口が勝手に動いただけだ!」


「それに『ポーズ』もしてくれたではないか!」


「ポーズ?」


 あのこっぱずかしいポーズのことか……。

 俺はちゃんと説明しようとした。


「あれはだな……」


 しかしリリアーヌは俺に最後まで言わせずに、とんでもないことを言いだしたのである。


「あれが人間の『プロポーズ』というやつなのだろう!?」


「は?」


「わらわは感動したのだ! これが愛されているということなのか、と!」


 リリアーヌはトロンとした目で腰をフリフリ振っている。


 『運の良さ』が限界突破した『セクシーポーズ』、恐るべし……。


 こうなってしまえば誤解を解くのはもはや無理だ。

 しかし超魔王と『夫婦』なんて絶対に嫌だ!


「それは勘違いだ! 嘘だと思うなら友達に聞いてみろよ!」

「……っ!? そ、それは……」


 リリアーヌの顔に影が落ちる。

 俺は眉をひそめた。


「どうしたんだ?」

「……いないのじゃ」

「いない? なにが?」


 なおも問いただすと、リリアーヌは叫んだのだった。


「わらわには友達がいないのじゃ! 悪かったな!」


 ふいっと顔をそむけるリリアーヌ。

 その様子を見て、ちょっとだけ胸が痛む。


「ごめん……」


 リリアーヌはぶんぶんと首を横に振った後、甘えるような声をあげた。


「ごたくはもう十分じゃ。だからそろそろ……」

「そろそろ? いったい何をするつもりなんだ?」


 沈黙したリリアーヌの白い顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

 そして彼女は大きな声でとんでもないことを告げてきたのだった。


「『子作り』に決まっておるだろ! 言わせるな! この鈍感め!」


「こ、子作りだとぉぉぉ!?」


「うふふ。わらわは1000年の眠りの間、常に考えておったのじゃ。もしわらわの体がこのまま朽ちてしまっても、我が子がおれば世界を恐怖と混とんに陥れることができたのに、とな。だから復活したらまず子作りをしようと心に決めておったのじゃ」


「ちょっと待て! 世界を恐怖と混とんに陥れるために子どもが欲しいとか、そんなのめちゃくちゃだ!」


「この際、理由などよいではないか。夫婦なんだから子を作るのが習わしであろう」


 するするとリリアーヌがドレスを脱ぎだした。黒いレースの下着とともに絹のような白い肌があらわになる。

 大きな胸の谷間に小さなほくろが一つある。

 それを見て思わず喉が鳴った。


「ごくりっ」


 そんな俺の様子を彼女は見逃さなかった。


「うふふ。お主も嫌いではないのだろう?」


 俺は慌てて首を横に振った。


「好きとか嫌いとかそういう問題ではない! こんなの間違ってる! どけ! そこをどくんだ!」


 しかし彼女がむちっとした太ももで俺の腰のあたりをがっちりと抑えており、ぴくりとも動けない。


「さあ、はじめようではないか!」


 ついに俺の服に彼女が手をかけてきた。

 まずい! このままだと本当に俺は『食われて』しまう。

 ……とその時だった。


『超魔王リリアーヌとの戦いのはじまりです』


 ライブラリが無機質な声が聞こえてきたのだ。


『お喜びください。あなたの運の良さなら、一発で元気な赤ん坊ができるでしょう』


「おい! ライブラリ! お前はどっちの味方なんだ!?」


「うふふ。それは喜ばしいことを聞いた。数年後、今日のことを世界中で祝うようになるだろう」


「そんなの嫌だぁぁぁ!!」


 ん? 待てよ?

 さっきライブラリはこう言ったよな。


 ――超魔王リリアーヌとの戦いのはじまりです。


 ということは戦闘シーン専用の魔法が使えるんじゃないか?

 そこで俺は一か八かあの魔法を唱えたのだった。


「クルクルプーーーン!!」


 とたんに俺とリリアーヌは竜巻に巻き上げられた。


「のあああ!」

「きゃっ!」


『クルクルプンの効果「バーシブット」発動。あなたは戦場からどこかへ吹き飛ばされます』


 ライブラリの声がしたかと思うと、俺だけ突風によって飛ばされ始めた。


 ――ゴオオオオオ!


「嫌じゃ! 離れるなんて嫌じゃ! ヒューゴォォォ!」


 リリアーヌの泣き叫ぶ声を聞きながら、俺はほっと胸をなでおろした。


「運が良くて助かった。次の問題は『どこへ吹き飛ばされていくのか』ということだな」


 そうして空を飛んでいるうちに、意識を失ってしまったのだった――。



 


 

 




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