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第3話 運の良さが限界突破した遊び人は最強のようだ

◇◇


「運の良さが3500オーバーだと……」


 ちょっと意味が分からない。

 だってステータスの上限は255と決まっているのだから……。

 確かに『ラッキーシード』という種を食べれば、1粒あたりで運の良さが平均で3アップするし、さっき俺は1000粒以上食べた。だから3500アップしていても間違いはないが、それでも255を突破するなんてありえないだろ。


「ところで運が良いと何かいいことあるのかな?」


 そもそも『運の良さ』ってなんのために存在しているステータスなんだ?

 ちなみに『腕力』『魔力』『素早さ』は戦闘シーンだけでなく日常シーンでも有効だが、『運の良さ』だけは戦闘シーンだけで有効であり、日常シーンでは何の役にも立たない。

 つまり運の良さが限界突破したからといって、カジノで大当たりするわけでもなければ、ラッキースケベがあるわけでもない。


「なんかびみょーだよな」


 だからレオンたちは俺に『ラッキーシード』をなすりつけたわけだろうが……。

 俺は期待半分、不安半分で宿を出たのだった。


◇◇


 さてと。町を出たはいいが、どこへ行こうか。

 レオンたちの後を追って先を進むというのも嫌だしな。


 ちなみに俺には手持ちのお金が銀貨11枚しかない。

 宿屋で一泊するのが銀貨1枚。

 銀貨1枚は銅貨10枚で、飯代は銅貨1枚くらい。

 となるとおよそ10日しか持たない。


「仕方ないから故郷に帰るとするか。母さんや父さんも心配しているだろうし」


 それに幼馴染のアナも待ってくれているはずだ。

 

 ――毎日教会でヒューゴの無事を祈っているから。元気に帰ってきてね。


 別れ際、白い頬を涙で濡らしながら、精一杯の笑顔を見せてくれた彼女の姿が今でも思い出される。


「よし! 早く帰ろう!」


 ここから故郷のサザラントの村まではおよそ20日の距離だ。

 手持ちの金は心もとないが、時折野宿をしてどうにか持たせよう。

 俺は足早に歩き始めた。

 だが運が悪いことにモンスターの群れに遭遇してしまったのだった。


「げっ! ストーンゴーレム、キラーベア、アーマードスケルトン、マッドアントって、この前戦った奴らじゃないか!」


 思わずつぶやいた瞬間に、ライブラリの石板から無機質な声が聞こえてきた。


『ラッキー! モンスターたちはまだ気づいていない。先制攻撃のチャンス!』


 どうやら『運の良さ』がいきなり発揮されたらしい。

 しかし先制攻撃できると言っても、相手は勇者のパーティーでもかなわなかったのだ。俺一人でどうにかなる相手ではない。

 とは言え、せっかく先制攻撃できるのに、すぐに逃げるのもしゃくだ。

 もっと言えば、あいつらのせいで俺はパーティーをクビになったんだからな。

 一発かましてやらなければ気が収まらない。

 そこで俺は《《アレ》》を唱えることにしたのだった。

 そう『何が起こるか分からない魔法』を――。


「クルクルプーン‼」


 魔法を唱えたとたんに辺りが真っ暗になる。

 これは……。まさか超魔王リリアーヌが出てくるんじゃないだろうな……。

 俺はいつでも逃げられるようにストレッチをする。

 

 だがその必要はまったくなかったのである――。


 一筋の光が空から地上へ降りてきた直後。


 ――ズガアアアアアアン!


 すさまじい爆発があたりに巻き起こる。

 そうして淡々とした声がライブラリから聞こえてきた。


『アルティメット・エクスプロージョンが発動。周囲のモンスターを爆殺しました』


 土煙がおさまると、あたりには大量の銀貨と宝箱が……。


『ラッキー! ストーンゴーレムは宝箱を落とした』

『ラッキー! キラーベアーは宝箱を落とした』

『ラッキー! アーマードスケルトンは……』


 なんと倒したモンスターのすべてが宝箱を落としていったのである。


「ぬおっ! これはストーンゴーレムが1%の確率でしか落とさないレアアイテム! 『ダイヤモンドの心臓』じゃないか! 売れば金貨10枚はくだらないぞ」


 金貨1枚は銀貨10枚に相当する。

 この時点で野宿の心配はなくなった。むしろVIPルームで宿泊できる。

 そして『ダイヤモンドの心臓』の他にも売れば大金になるレアアイテムばかりを手に入れたのだった。


「これが『運の良さ』を限界突破した効果か……。すごすぎるな」


 すべての銀貨とアイテムを回収し終えた俺は、再び故郷に向かって歩き出した。

 すると今度は巨大なレッドドラゴンの群れに遭遇した。


『ラッキー! モンスターたちはまだ気づいていない。先制攻撃のチャンス!』


 まさか、な。

 と思いながらも俺は魔法を唱えた。


「クルクルプーン‼」


 ちなみにクルクルプンの発動する効果は、発生確率が低い順で次の通りだ。


 (1)超魔王の封印を解き、召喚する(ただし味方とは限らない)

 (2)究極の爆発魔法『アルティメット・エクスプロージョン』

 (3)戦闘開始まで時間が戻る『バトルリターン』

 (4)あたりが氷の大地に覆われる『アイスフィールド』

 (5)唱えた人を世界のどこかへ吹き飛ばす『バーシブット』

 (6)たらいが空から降ってくる『タライ落とし』

 (7)近くでボヤが起こる『スモールファイア』

 (8)翌日にいい夢を見ることができる『ナイスドリーミング』

 (9)特になにも起こらないが景品として銅貨1枚がもらえる『ザンネンショー』


 ぶっちゃけた話をすれば、『運の良さ』が100程度であれば(6)(7)(8)(9)の4つしかほとんど発動しない。

 しかし3500を超えている俺であれば、「今の状況に最適な効果」が発動するのではないかと思ったのだ。

 そして次の瞬間にそれは確信に変わったのだった。

 

『アルティメット・エクスプロージョンが発動。周囲のモンスターを爆殺しました』


 これでよく分かった。

 『運の良さ』が限界突破した『遊び人』は最強のようだ――。

 


運要素の魔法やスキルがすべてレアな方へ振り切ったら、それはゲームバランスが崩壊しますね、って感じです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 投稿お疲れさまです。 着眼点もよかったですし、内容も面白かったです。 テンポがあって読みやすかったです。 続きが読みたいなと思いましたので、引き続き拝読しますね。
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