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プロローグ クルクルプンに願いをこめて


 ――遊び人たる者、常に楽しいことを追い求めるべし。


 なんのことはない。

 俺、ヒューゴ・ブレインが考えた言葉である。

 なかなかの名言チックだと思わないか?



 真夏の太陽がまぶしく光る空の下。

 どこまでも広がる荒野。

 ここは俺の『国』の一部。

 ドモドモ平原。

 

「ねえねえ、ヒューゴおじちゃん! いっぱい魔物がきたよー!」


 猫の耳をした幼女が目をくりくりさせながら、俺に告げてきた。

 

 ちなみに俺のジョブは『遊び人』。さらにとある国の『国王』をやってる。

 戦いにも、日常にもまったく役立たたないゴミスキルしか覚えない『遊び人』だが、俺の場合はちょっと違う。

 

 なぜなら俺は『運の良さが限界突破した遊び人』だからだ。

 

 さて、今目の前には魔物たちの大軍が押し寄せている。

 国境を越えてきたから、立派な不法侵入だな。

 

「ヒュ、ヒューゴさん。わ、わたしも頑張ります!」


 幼女と同じく猫の耳をした美少女がぐっと拳を握りしめた。

 同時に豊かな胸のふくらみがふるると震える。

 俺は彼女の肩をポンと叩いた。

 

「俺一人で大丈夫だ」


 少女が心配そうに瞳を潤ませながら、俺を見上げてきた。

 彼女を安心させるためにニコリと微笑むと、すぐに魔物たちに向き合った。


「グルル……」

「ウガアア!」

 

 いきなりの大ピンチ。

 だがひるむ必要などない。

 

『魔物たちはこちらに気づいておりません。先制のチャンスです』


 戦闘になれば必ず先制攻撃ができるからだ。

 そしてとっておきの魔法がある。

 

「クルクルプーン!」


 ふざけた名前だと自分でも思う。

 実際にふざけた魔法でもあるからな。

 遊び人特有の魔法で、何が起こるか分からない。

 つまり『確率』によって効果が異なるのだ。

 たいていは『金タライが落ちてくる』か『ザンネン賞として銅貨1枚をゲットする』のいずれか。

 しかし俺の場合は……。

 

 ――ドガアアアアン!!

 

『極限爆裂魔法アルティメット・エクスプロージョンが発動!』


 発動確率が1%にも満たない極限魔法を放てるのだ。

 魔物たちはなすすべなく爆殺されていく。

 

『魔物は宝箱を落としました』

『魔物は宝箱を落としました』

『魔物は宝箱を落としました』

 

 運が良すぎるので、倒した魔物すべてがレアなアイテムを落としてくれるのだ。

 目の前には大量の金貨と宝箱が、夜空にまたたく星々のように散らばっている。


 しかしそれらに眼中などない。

 俺の目的は魔物を倒すことでも、莫大な財産を得ることでもないのだから。

 

「あはは。面白いねぇ」


 ニタニタと嫌らしい笑みを浮かべながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる女の悪魔。

 あいつにはアルティメット・エクスプロージョンが効かない。

 それは分かっていたさ。

 いや、むしろ「こうなって欲しい」と心の中で願っていた、という方がぴたりとはまるだろう。

 

「さあ、どうするのぉ?」

 

 まだ距離はある。

 ならば俺は自分の『運の良さ』を信じてやるまでだ。

 

「クルクルプーーーン!」


 俺の国を守るために。

 そして俺の願いを叶えるために――

 

 

◇◇


 これは『運の良さが限界突破した遊び人』が、気ままに国を作る物語。

 

 その前に、どうして俺の運の良さが限界突破したのか、どうやって国王になったのか、そこから振り返ってみることにしよう――。


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