表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅の挽歌 ~佐久間警部への遺書~(2024年編集)  作者: 佐久間元三
戦いの始まり
8/28

捜査方針(2024年編集)

 ~ 東京都 警視庁捜査一課 ~


 九条大河に、先手を打たれた捜査一課は、次の犯行を未然に止めるため、総力を挙げて、九条大河の作品を、精査している。四十八作品の中から、十六作品を、詩の対象候補とした。


「だいぶ、絞り込めたようだな」


 安藤は、絞りこんだ作品の、タイトルを確認しながら、選択理由について問うと、佐久間は、要旨を取り纏めた資料を、提示した。


「これらの作品は、九条大河の詩に、『一部でも、関連がある』と判断したものです。もしかしたら、別の作品かもしれないですが、次の周期を考えると、やむを得ずの選択ですが、確率は高いと考えます」


「九条大河の手紙では、犯行の周期は、一ヶ月から二ヶ月だったからな。今、手を打たないと、手遅れになると、判断したのだな?」


「仰る通りです。警視庁捜査一課(我々)には、時間がありません」


 佐久間は、ホワイトボードに、作品タイトルを書き出した。


 ○戦いの記憶

 ○オホーツクに消えた女

 ○途切れた愛の記憶

 ○そして、誰も愛せない

 ○荒野への疾走

 ○木更津 連続殺人事件

 ○北見山地 殺人ルート

 ○青木ヶ原での復讐

 ○浅間山荘 密室殺人

 ○少年の心 〜 遠い記憶 ~

 ○晴れ、時々、殺人

 ○藤原家殺人事件

 ○忘却の彼方

 ○私怨の泉

 ○伊豆箱根 連続失踪事件

 ○終焉の記憶


「皆、よく調べてくれた。九条大河は、捜査一課の、緊張感が無くなるタイミングを、見計らって、仕掛けてきた。ミステリー作家らしい、やり口だ。一小節目が実行されたことから、賽が振られたと判断し、今後は、一ヶ月から二ヶ月の周期で、被害が出るものとして、捜査していく。一から、プロファイリングをしていくつもりだ。襟裳岬で捜査している間に、分かった事を教えてくれ」


 日下が、報告を始める。


「これまで判明した事を、中間報告します。被害者は、加納謙一、四十八歳。東京都在住。勤務先は、東京都大手町の、出版社です。加納謙一は、この出版社で、編集長をしていました。過去に、九条大河の作品を手掛けており、その作品が、『オホーツクに消えた女』でした」


(……ほう?)


「つまり、『オホーツクに消えた女』を、担当した男が、皮肉にも、その作品のように、襟裳岬で殺された。……皮肉なものだな」


(加納謙一は、途中で、変だとは思わなかったのか。その点が、気になるな。だが、朧気ながら、犯行の手口は見えた。九条大河は、作品に関わった者を、抹殺していくつもりだ)


「他には、どうだ?加納謙一の、足取りは掴めたか?」


「加納謙一は、一月八日から、釧路湿原や日高山脈、襟裳岬を取材していたようです。出版社から、裏が取れました」


(------!)


 山川が、首を傾げる。


「編集長、自らかい?編集長ってのは、偉いんだろう?机に、どっぷりと座って、仕事をするイメージがあるけどな。取材なんぞ、下っ端の役目だろうに」


「出版社の話では、一月七日に、尾形と名乗る弁護士が、加納謙一に、会いに来たらしいです。面会を終えた加納謙一は、急に、『大スクープだから、今すぐ、長期取材に出掛ける』と上層部を説得して、出版社を飛び出したそうです。ただ、上層部が、承認するにあたり、スクープの内容について、問い詰めても、加納謙一は、明言を避けたと。困り果てた上層部は、結局、加納謙一に押し切られ、許可を出したと言っていました」


「一月七日と言えばは、尾形弁護士が、警視庁(うち)に来る、前日ですよ」


(……きな臭いな)


「尾形弁護士事務所で、本人から、事情を聞くしかあるまい」


 佐久間は、ホワイトボードの、『オホーツクに消えた女』を、二重線で、見え消しすると、次の指令を出した。


「一小節目の犯行から推察するが、小説内容と犯行は、リンクすると考えてくれ。九条大河は、作品と関わりを持つ対象者を、作品の内容に倣って、粛清するのかもしれない。まずは、絞りこんだ作品から、担当した出版社と、担当者を調べて欲しい。調べが終わった者から、手分けして、聞き込みを開始してくれ。それと、これらの作品が完成した日・初版発行日・重版発行日・犯行日が、重複するかも、調べてみてくれ。ミステリー小説だけに、相当な、小さな糸口から繋げないと、紐解けない事件となるだろう。相手は、九条大河の事を知り尽くした、優秀な知能犯だと思え。よろしく頼む」


「はい。捜査班を三班に分けて、聞き込みを開始します」


「山さんは、尾形弁護士事務所に同行してくれ。尾形弁護士を、揺さぶってみよう」


「分かりました、ご一緒します。……ん?どうされました?」


 佐久間は、左手で、顎先を撫でるように触った。


「……いや、ここで、尾形弁護士が、浮上してくるとは、想定外だった。初めから、きな臭いとは、思っていたんだが、目立ち過ぎるんだ。九条大河も、初動捜査で、捜査一課が、加納謙一の出版社を訪れて、尾形弁護士と接触した事実を知ると、百も承知のはず。……九条大河は、何を企んでいる?」


「行ってみないと、何とも、言えません」


「そうだね、まずは、尾形弁護士の出方を見ようか」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ