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紅の挽歌 ~佐久間警部への遺書~(2024年編集)  作者: 佐久間元三
九条大河の思惑
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弁護士の訪問(2024年編集)

 ~ 一月八日、十五時三十分。 警視庁 ~


 捜査一課長の安藤から、連絡を受けた佐久間たちは、慌ただしく、放火捜査から引き上げてきた。


「警部、一体、何事でしょうか?」


「さあ、珍しく、用件を言わなかったな。捜査から戻すくらいだ。緊急案件かもしれないね」


 奥の応接室に来るように、伝言を預かっていたので、直ぐに応接室に入った。


「お待たせして、すみません。ただいま、戻りました」


 安藤の隣には、品のある男が立っており、胸元を一目見て、弁護士だと理解した。


「弁護士の方が、捜査一課におられるとは、何か事件でも?」


「まあ、座りたまえ、佐久間警部」


 安藤は、静かに対応する。


「初めまして。私は、尾形弁護士事務所代表の、尾形和成と申します」


「どうも、ご丁寧に。警視庁捜査一課の、佐久間です。ご用件を伺います」


 ソファーに腰掛けると、少し大きめの封筒が、佐久間の前に差し出された。


(……これは?)


「中身は、見ておりません。()()()との、契約ですから」


「ある方との、契約ですか?この封筒がですか?」


「はい。この封筒を、佐久間警部に届け、佐久間警部(あなた)が、その中身を確認するよう、依頼されました」


(………?)


「弁護士の、あなたがですか?ある方とは一体、どなたでしょうか?」


「……九条大河です」


(------!)

(------!)


九条大河(先生)が、私に?」


 虚を突かれるとは、この事であろう。動じる事が少ない佐久間も、これには驚いた。全く、身に覚えがないのだ。安藤も、事前に何も聞いておらず、驚きを隠せない。


「佐久間警部、九条大河と、知り合いなのかね?」


「……いえ、全く。先日も、テレビで、訃報を知ったくらいです。尾形弁護士は、何か聞いてますか?」


「いえ。依頼人より、書類を渡されただけですが、一言だけ、言われております」


「何でしょうか?」


「この封筒を、佐久間警部に届けたら、封筒を開ける前に、その場から、立ち去れとの事でした」


(------!)

(------!)


「どういうことだ?不審物でも、運んだのか?」


(………?)


 応接室の外で、中の様子を窺う山川が、不審を察し、入室しそうになった為、安藤が、手振りで、それを阻止する。


 『誤解を与えた』と、尾形は、その場で、補足説明を入れた。


「いえいえ、とんでもない。この封筒の中身について、『警視庁の者以外は、関わるな』という事だと、解釈をしていますので、これで失礼します」


 尾形は、去り際に、一言だけ言い残した。


「佐久間警部、あなたの噂は、私も、九条大河(先生)も、よく存じておりました。とても有能な警部で、日本随一であるとね。封筒の中身については、聞かれても、お答え出来かねます。何も見ていないし、聞かされても、おりませんので。その点を、ご理解ください」


(………)

(………)


「高級貴族のように、いけ好かない弁護士でしたな?」


 山川が、最も嫌いなタイプである。


「山川、もう入って良いぞ」


 九条大河の依頼で、訪れた弁護士と、託された封筒。


 ミステリー作家からの封筒である為、嫌な予感しかしない。

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