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混世界  作者: 慧瑠
彼女が見た夢
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甘味に釣られ誘われて…

ロボっ娘が遠い。


常夜之夢とこよのゆめの中央に佇む巨大な塔'艶夢えんむ'の前にたどり着いたリュコスは、艶夢の入り口の前で待ちぼうけをくらっていた。

リュコスは、艶夢前に備え付けられている椅子に座り、天幕が張られているのにも関わらず空を覆う星空を見ながら先程の出来事を思い出す。



数十分前。


「すいません。ファミリーズの配達なんですが…」


リュコスは艶夢の入り口で警備をしている二人の女性の片方、着物を着崩し腰に刀を下げている女性と

もう片方は、色違いの着物を同じ様に着崩しているが、刀ではなく薙刀を持って立っている。


漂う雰囲気から、声を掛けやすい方を選びリュコスは夢橋の警備員ロッパチから受け取った証明書を見せバイト先の名前を伝えながら声を掛けた。


「はい?配達…ですか?」


刀の方の女性はリュコスを怪訝そうな目で見つめながらリュコスの持つ証明書のカードを受け取り、首から下げている小さな水晶のような物を通して紙を確認する。


両面を確認した女性は、証明書を確認した女性はリュコスにそれを返し薙刀を持っている女性を手招きして呼ぶと何やら耳打ちを始めた。


「――」


「なるほど…客人、すまないがこちらまで通達が来ていない。

少し、確認をしてくるから待っていて欲しいのだが…」


「わかりました」


「すぐに戻る。

すまないな」


そう言うと薙刀の女性は艶夢の中へと入っていき、刀の女性に誘導され入り口の隣にある椅子に座ってリュコスは待ち始めた……。



そして、空を見上げすぎて首が疲れた辺りで刀の女性が何かを持って近付いてきた事にリュコスは気付く。


「ごめんなさいね~。

ちょっと、手間取ってるみたいでもう少し待っててくださいね」


「あ、はい。予定も無いんで平気っす」


「これでも食べて待っててください。

待たせたお詫びって事で~」


そう言って刀の女性は持ってきた箱をリュコスに差し出すと、元居た場所へと戻っていった。

元の場所と言っても、数メートル隣なのだが…。


リュコスは、刀の女性に軽く頭を下げると箱を開けて中身を確認する。


「和菓子か…」


蓋を開ければ、嫌いじゃないむしろリュコスの好みの餡の香りがした。そして、中には白いふにっと柔らかそうな白い球体が四つ入っていた。

リュコスは少し頬を綻ばせながら同じく箱の中に入っていた黒文字を使い一つ口に入れる。


「美味い」


柔らかい皮の中に入っている普通より甘めに作られている餡がリュコスの口の中を満たしていく。

思っていた以上に美味しかった饅頭を一つ一つ味わい、時間を忘れていたリュコスは気がつけば四つとも食べ終えていた。


物足りなさを感じたリュコスがふと顔をあげると、視界の端にこちらへ向かってきている薙刀の女性の姿が入った。


「待たせてしまったな」


「いえ、饅頭美味しかったっす」


「それは良かった。艶夢でも一押しの品だ、良かったら待たせてしまった詫びとして後で持たすよ。


それより、中へ案内しよう。太夫が首を長くして待っていた」


「はいっす」


リュコスは、初めて来る場所だったせいか思っていたよりも緊張していた事に気付いたが、先程の饅頭が緊張を解してくれた様で艶夢の前に着いた時よりも軽い足取りで薙刀の女性の後に着いていった。


刀の女性に軽く頭を下げ、見送られながら中へ入ると外装同様に内装も綺羅びやかな印象を受ける。

だが、目が痛いなんて事はなく暖かな雰囲気が漂っている様に感じる。

リュコスが周りを見渡していると、薙刀の女性が少し笑いながらリュコスを先導していく。



微笑む女性に気付き、少し恥ずかしさを感じながらも着いて行く。階段を登りエレベーターを使って高層階へき、何度か曲がり進むと目的の部屋に着いた様で薙刀の女性が止まった。


「太夫がお待ちです」


薙刀の女性は、そう言うと目の前の扉をノックし返事が返ってきたことを確認してから扉を開けた。


扉が開けられ、リュコスは中の様子が見えてくる。

視界に入ってきたのは至って普通の部屋。部屋に敷き詰められた畳に木製のタンスと座椅子、大きな姿見と部屋の隅にたたまれ置いてある布団。一言で言えば和室。

そして、その部屋の中には一人の女性が座椅子に座りこちらを見ている。


艶やかな黒い長髪、幼さが残る小顔に一目で高価だろうと分かる赤と黒を基調とした着物を纏った女性はリュコスと目が合うと優しく微笑み部屋へ入る様に手招きをした。


「し、失礼します」


自分よりも年下であろう女性から発せられる気品と艶やかさに、リュコスは気後れしながらもおずおずと部屋の中へと入っていく。

薙刀の女性は、部屋の中に居る女性に一礼すると扉を閉めてしまい、部屋の中にはリュコスと女性だけになってしまった。


(部屋の中まで同伴してくれるわけじゃないんだ…な)


微笑みながらパタリと扉を閉めた薙刀の女性に、ヘルプを求めたくなるも外と内を遮断する扉がそれを許さず。なにより、部屋の中の女性が期待の眼差しを向けてきている。


リュコスは助けを求める事を諦め、部屋の様子から見習い靴を脱いで女性の前へと移動した。


「初めまして、私はこの艶夢や常夜之夢の女達を仕切っております'黒水太夫くらみたゆう'と申します。

この旅は通達が行っておらず余計な時間を取らせてしまいましたね」


「いえ、こっちも饅頭を貰ったりしましたし…」


「ふふっ、甘いものはお好き?」


「え、あ、はい」


耳の中に残り続けるような甘く蕩ける様な声に、リュコスはむず痒さを感じながら答えると黒水太夫と名乗った女性は、リュコスにもう少し近づくよう手招きをした。

-人物紹介-


黒水太夫くらみたゆう

性別:女性

備考:常夜之夢で働いている女性陣を仕切ってる人

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