常夜之夢
お久しぶりな気がします。
そうでも無いでしょうがお久しぶりです。
新章開始です。
この章は、恋だのなんだの系と言いますか、ちょっとしっとりな感じで行こうと思っています。
どうぞ、これからもよろしくお願いします。
「あぁ…降ってきたな」
原付きを走らせていたリュコスは、信号待ちの途中でヘルメットから伝わる僅かな衝撃に気付くと空を見上げた。
曇天だった空からは、ポツリポツリと雨が降り始めていた。
既に日は落ち零時前、だんだんと本降りになる雨の中、青になった信号を確認するとハンドルを回し目的地へと移動を再開する。
「しかし…時給が上がるってたって、コンビニで配達は無いと思うわ。サービス増えすぎてダルい。
そして、慣れていってしまう自分がダルい…。
まぁ、代金は前払いされてるらしいし、試験期間とかで配達し終えたら直帰していいみたいだし、さっさと終わらせるか」
誰に言うでもなく思っていた事が口から漏れている事にリュコスは気付かないまま、原付きに備え付けされているナビを頼りに配達先へと進んでいた。
それから暫く、ナビに従い細い道を避けつつ走っていると、リュコスはドーム状の黒い膜が一帯を包み、その内側へと入る為の巨大な観音扉の前で止まる。
四メートル以上はあるであろう巨大な扉は両方とも開かれ、扉の奥からは人を誘う様に甘い香りが漂い、暖色を基調とした建物と拍車を掛ける様に暖色の明かりが夜にも関わらず照らしている。
「ここの…うわぁ、最奥かよ…
俺、この甘い匂い嫌いなんだよな」
リュコスの目的地であり、夜にしか扉が開かれないその場所は、遊郭もカジノもバーも飲み屋もなんでもかんでも遊ぶ場所が所狭しと並び個人個人が好きなように夢を持ち発散していくアダルトな夜の街。
通称『常夜之夢』
巨大な扉には警備員が数人待機しており、中に入る前には必ず年齢確認をされる。
無理に入ろうとすれば、本人は絶対に口外したくないような処罰を受けるともっぱらの噂。
リュコスは、原付きから降りて押しながら常夜之夢の正門、昼間は待ち合わせ場所にも使われる'夢橋'へと近付いていった。
「年齢確認できる物は持ってるかな?」
「はい」
夢橋へと近付いていくと、着物を着崩した屈強な男がリュコスを呼び止めた。
ここに来るのは初めてではあるが、前もって入る時に年齢確認がある事を聞いていたリュコスは驚く事も無くバイト先から渡されていた通行証を男に見せると、男はリュコスの顔を覗き込んでくる。
「あぁ…配達か。
店員さんも大変だな」
「あ、ロッパチさん」
通行証を受け取りながら覗き込んできた男を見ると、男と同様リュコスも男の事を知っていた。
「ロッパ…?あ、タバコの番号か。
そんなあだ名が付けられていたんだな」
「え、あ、すいませんッス」
「いやいや、気にしなくていい」
その男が常連だと気付き無意識にリュコスの口から漏れた言葉に、男は少し困惑するが何のことを言っているのか理解した男は大きく笑いながらリュコスが押していた原付きを確認し始める。
言葉が漏れていた事に気付いたリュコスは少し焦った様に謝るが、男は怒る様子も無く手際よく原付きを調べ上げると首から下げる様になっているカードを一枚リュコスに渡す。
「よし、原付きの方も問題はない。
これは証明書だ。
店員さんは初めてみたいだから説明するが、常夜之夢では原付きなどの地を高速で走る物は禁止されている。
破れば罰金、事故などが発生しても罰則に加えて制裁があると覚えておいてくれ。
次に、常夜之夜での紛失などの問題に対しては、こちらは一切の責任を負わない。ただ、届けを出してくれれば探すなどの手伝いはするから気軽に警備隊などに声を掛けてくれ。
基本的にソレを下げていれば面倒事には巻き込まれないとは思うが、たまに問題を起こす輩も居るから気をつける様に」
説明を受けならがヘルメットを外し、男から受け取ったカードを首から下げるとリュコスは一言礼を言い夢橋を越え常夜之夢の中へと入って行こうとすると
「迷ったら近くの警備隊に聞けばいい!
まぁ、真っ直ぐ行けば太夫の所まで着く!真っ直ぐだぞー!」
(ありがたいが、子供扱いされている気分だな)
大きな声で後ろから教えてくれる男に、一礼をしながらそんな事を思うリュコスは、今度こそ夢橋を渡りきり甘い匂いに包まれながら常夜之夢を奥へ奥へと進んで行った。
かなりの広さを誇る常夜之夢の大通りを歩いていると、少し先ではあるが常夜之夢の中央に位置する場所に聳え立つ和風の塔が見えてきた。
それは、常夜之夢を管理、統治する者が居る場所であり、常夜之夢の名物にもなっている『艶夢』と呼ばれる塔。
リュコスは、艶夢が見えてくると大きな溜め息を漏らし、甘い匂いに気力を削られながらもお客の元へと足を運んだ。
-人物紹介-
月無 リュコス
性別:男
補足:コンビニ店員 狼男
屈強な男の警備員
性別:男
補足:赤ラークLongを愛煙 2m超えの身長でムキムキ




