夏と言えば怪談5
毎日投稿したいと思っているのに、中々できないもどかしさ。
「気にしないで林檎ちゃん
大人になったと自覚しただけよ。
それで、何か聞きたい事があるのかしら?」
「?
はい、そのさっきのマスクは何なのかなぁって思って」
遠い目をしていた呂呂は、一度大きなため息を吐き、林檎の視線に気付いたが気にせずに、そのまま苦笑いをしつつ林檎と話を続けた。
同じく雪は、ため息を小さく漏らし飲み干されている緑茶の追加を作っている。
その様子を不思議に思いながらも、林檎は自分の気になったことの方が優先の様で、呂呂に質問をした。
「メイクマスクの事?
アレは、マスターしか作ってる人を知らないけれど
なんて言えばいいのかしら…特殊メイクと言うのかしら?
私達の様な外見に特徴のある怪異、オカルト、神話、都市伝説…
んー…まぁ、そこら辺の類の外見を人間に見せるマスクよ。
世界が混ざって、私達みたいな存在が確立されたと言っても結局は人間っていう種が世界の覇権を握っているから異質な私達には普通には生きづらいのよ。
なんせ、私もそうだけど
そういう類にはそれなりに本能で悪戯したりするの。
昔は、それが生命線の役割でもあってね。
私達はそういう認識をしてもらって初めて存在が確立できてたのよ。
まぁ、世界が混ざる前はネットとかで情報が掲載され続けて、その必要も無くなってはいたんだけどねぇ」
雪が作っている緑茶を待ちながら、呂呂は林檎の質問に答えた。
林檎は、呂呂の話を聞きなるほどーと頷いている。
そして、雪が淹れた緑茶を一口飲み昔を思い出しているのか、林檎の相槌に合わせつつも最後の方は染み染みと語っていた。
「多分、私以外にも利用してる奴は居ると思うわ。
マスターの謎の技術が高すぎて、人間と見分けがつかないから誰がそうなのかなんて分からないけどね」
その言葉と聞いた林檎は、店内を見渡した。
今、本を読んでいたり食事をしていたり、何かノートを開き勉強に励んでいる者やパソコンを使い仕事をしている者達を見て、もしかしたらこの中にも…と少しの疑心暗鬼と恐怖心に苛まれる。
「ま、安心して良いとは思うわ
マスターも無闇矢鱈にばら撒く様に配ってるわけじゃないし…
何より、高いのよ…あれ…」
「幾らぐらいなんですか?」
「…」
呂呂は林檎の質問に、そっと三本指を立てる。
「さ、三十万ですか!?」
「三百万よ…」
林檎は、高い!と思って口にした金額より高額な値段を言われ目を丸くし
それを定期的に破く呂呂に、口を開き間抜けな顔を晒し唖然としてしまった。
ハハハと苦笑いを見せる呂呂を見つつ呂呂の金の出処を考えていたが、そんなことより!と近くに寄ってきた呂呂が林檎の恋愛話を引きずり出し始めた。
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「終わりましたよー」
林檎が呂呂の話術により話すものか!と頑張っていたのにも関わらず根掘り葉掘り引き出されていると、奥の方から黙示がペラペラと顔の下半分だけのマスクを靡かせながら出てくる。
それを確認した雪は、入れ替わりで奥の方へと入っていった。
「はい、支払いはどうしますか?」
「確認をお願い」
黙示がマスクをカウンターへ置くと、呂呂も厚みのある茶封筒を2つ出すと
慣れた手つきで互いの置いたものを手に取り、呂呂はマスクをスッと着け馴染ませるために口を開いたりイーと広げたりしている。
対する黙示も、茶封筒の中身を軽く見つめ
「はい、確かに」
「もう、破かないように気をつけなきゃ」
「何度目でしょうねぇ、その言葉」
150枚ずつ入っている万札を確認し終えると、雪が緑茶と一緒に淹れていたコーヒーを飲み
呂呂のボヤキに、笑みを見せながら言葉を投げ
それを聞いた呂呂は恨めしそうに黙示を睨んでいる。
マスクをつけた呂呂は、入店してきた時のように口は裂けておらず、人間でも綺麗な分類に入る見たい目になっていた。
それを、ジーと林檎は見る。
「すごいです…マスクつけてるって分からない」
「そういうマスクを作ってるからね」
キョロキョロと顔を舐め回す様に林檎は呂呂を見るが、どれだけ見ても切れ目なんてものは見当たらずマスクを着けてるなんて知らなければ分からない。
どれだけ見ても分からないそのマスクの精度にカウンターで洗い物を始めた黙示へとズイッと身を乗り出した。
「どういう技術なんですか!」
「企業秘密だよ」
「ぶ~」
林檎が聞いてくると分かっていたのか、黙示は林檎の質問を軽く流す。
そして、林檎の前に置いてあった空になったパフェの容器を洗っていく。
流された林檎は、頬を膨らませ黙示に抗議をしている。
その林檎を後ろから抱きついた呂呂が、林檎を同じように頬をふくらませながら林檎とは違う要求をした。
「ねぇー、マスタぁー
いい人紹介してよぉ」
「それで、お気に召さなくてとばっちりを受けたくないんで、お断りします。
あぁ…でも…そうですねぇ…
今日の夜辺りに、この辺に居れば牛乳好きの男には会えますよ?」
黙示は、ぶーぶーと抗議をしている二人を他所に笑顔だけを返し淡々を洗い物をしていたが、何を思ったのか腰に着けているエプロンで軽く手を拭くと、カウンター下から取り出した小さな店の周辺の地図を取り出しそんな事を言った。
「牛乳好き?
いい男なの?」
「さぁ?いい子ではありますよ」
呂呂が聞くも、それ以上に詳しい事は話してくれない黙示。
何度か聞いたが、まともに相手をしてくれない黙示に飽きたのか、二人はカウンターに座り直し、黙示が新しく淹れてくれた飲み物を飲みながら楽しそうに乙女の恋話に花を咲かせている。
二人が話をしている中、時間は過ぎ、お客もまばらに入れ替わっていく。
日が傾き、気がつけば混沌とした街に夕日が差し込み幻想的な町並みを演出しはじめていた。
「あら、もうこんな時間。
林檎ちゃんが可愛くて時間が過ぎるのが早く感じるわ。」
「何か、呂呂さんは用事があるんですか?」
腕時計を確認した呂呂は、そう言いながらテキパキと帰る準備を始めた。
それに黙示は、緑茶のおかわりを用意しようとしていた手を止め聞いた。
-自己紹介-
喫茶店-本の蟲-のマスター
明示 黙示
性別:男
喫茶店-本の蟲-の店員(厨房担当)
雪
性別:女
いつもの:アイスティー
店の料理は彼女が作っている
常連客
橋本 林檎
性別:女
いつもの:ミルクティー
高校生
初心JK
朽木 呂呂
性別:女
いつもの:緑茶
口裂け女