それは、信じた証10
最強とか、ぶっ壊れ性能の強さを表現するのって難しいですよね。
扱いも相応に難しい。むしろ、書物だと扱いの方が難しい…。
「貴様は、あやつを知っているのか?」
「知ってるも何も、てめぇ等と喧嘩してる最中に割り込んで来やがった奴等だ。
片手間に俺をあしらって、終いにゃてめぇ等の軍を適当に壊滅させて俺の一翼まで持って行きやがった」
「なっ!あれは貴様では…」
「俺は別に自分を過剰に評価はしねぇし、てめぇ等を過小評価もしねぇ。
大魔王はまだしも、てめぇ等はよえぇ。よえぇが秒で壊滅させられるとも思ってねぇ。
てめぇもあの場に居たら知ってんだろ…瞬きをするだけで周りが朽ち果て、息をするだけで死の香りが肺を満たした。
一分と掛からずてめぇ等は壊滅。全力で殺しに行って俺は一方的に瀕死。
大魔王が俺のせいにした理由は知らねぇが、アイツは真相を知っているはずだ。
なんせ、俺と共闘して雪に遊ばれたんだぜ?」
自傷気味に笑い言うソミラは、けして嘘を言っている様子はない。
それは、ノーヴァにも近くで聞いていたフェリシテにも分かる程に悔しそうに笑い言っていた。
「チッ…もういいだろ。
いいから帰れ豚。せめて生き残ったオーク共引き連れてさっさとな」
ソミラの言うとおり、残っているオークは連れてきたオークの一割にも満たない数になっていた。
居なくなったオークやオーガは全て雪が処理し、残っているオーク達は雪に怯え敵意を削がれたオーク達だった。
ノーヴァは、荒く舌打ちをすると何も言わずに残ったオーク達を連れ森の中へと消えていった。
「おい、面倒になりたくなかったらてめぇも消えろ」
ノーヴァが去っていった森を見つめていたフェリシテはソミラに言われ、ソミラが見る方に釣られ見た。
すると、リスコッチェ国の方からぞろぞろと騎士を連れエンベル達が歩いてきているのが見える。
その中には、合流したのであろうアーナムや見慣れない甲冑を着た騎士達も居た。
「この姿では…な」
こちらに向かってきている半数以上が敵意を向けている事に気付いたフェリシテは、諦めた様子で笑いながら雪から貰った紅い飴玉を一つ口に入れた。
フェリシテからすれば慣れた光景だが、いきなり煙を吹き出し始めたフェリシテにソミラは変なものでも見るかの様な視線を向けていると、煙の中から人間スタイルのフェリシテが姿を見せた。
「後は適当に言い訳だな」
「また、なんつーもんを…」
大きな溜め息をつくフェリシテだが、その変わり様にソミラは驚愕していた。
ソミラには、その飴玉の効果が普通ではない事を理解していた。
ソミラは、自分が使えるかは別として認識を誤認させる魔法の存在も知っているし、姿を消す魔法も知っている。
加えて言えば、姿を変える魔法も実在している事も知っている。
だが、それでもフェリシテが食べた飴玉はどれにも当てはまらず、どれよりも恐ろしい効果を発揮していた。
一つは魔力を必要としていない事。
一つはソミラが対象を見分ける時に感じている匂いや魔力の質まで変わっている事。
そして、何より驚いたのはフェリシテの正体を見破ろうと魔法を使用しても人間だとしか認識出来ないこと。
完全にオークから人間に変わっている。まるで存在が書き換えられているかの様に…ソミラはそれが如何に脅威か分かっている。
どれだけ厳重な検査をしようと、今のフェリシテは屈強な人間としか結果がでない。
完全に自分を偽れると言うことは、応用すればどこにでも入り込める。
魔族であれ、魔物であれ、人間あれ…。
「それは、人間にしかなれねぇのか?」
「詳しくは俺も知らん。
今のところは人間だけだ」
それを聞いてソミラは少し安心する。
徒党を組むつもりは無いが、もし紛れられ魔族だと言い張られたら見破れる気がしないのだ。
遅れを取る事は無いだろうが、少しでも警戒をするべきか…とフェリシテにではなく飴玉を渡した雪を思い浮かべ封印明けで緩んでいた気を引き締め直した。
「んで?これはどういう要件だ?」
ソミラは一旦そこで飴玉に対する思考を切り、目の前に立っているエンベルとアーナムに聞く。
フェリシテはフェリシテで予想できて居たのか、ソミラの様に敵意を向けず静かに相手の言葉を待った…自分達の周囲を囲み、武器を向けてきている騎士達を警戒しながら。
「武器を降ろせ」
「しかし!相手は魔族とオーク!」
「いいから降ろせと言っている」
エンベルの言葉に、別国の兵が声を荒げ抗議するが、エンベルが再度強めに言うと囲んでいた兵や騎士達は渋々武器を下ろす。
だが、敵意は向けているし何時でも斬りかかれる様に剣を鞘に収めたりはしていない。
「フェリシテ殿、ソミラ魔王、この度は力添え感謝する」
「感謝する相手に武器を向けるのは、てめぇ等の習慣か?」
「事情も知らぬ者も居る故、その事は見逃して欲しいものだな」
エンベルの言葉にソミラが嫌味で返すと、エンベル自身も悪びれた様子もなく返した。
自国の民に加え、他国の騎士達も居る中でエンベルは下手にでる事はしない。
アーナムもエンベルも内心はヒヤヒヤしているが、それを表に出すことはしない。
「…チッ。
それで、アーナム・ヘイリスカ。契約はこれで終わりでいいな?」
気丈に振舞っている事に気付いたソミラは、少しイラついた様にエンベルの横に立つアーナムに聞く。
それを聞いたアーナムは、一度頷き答えた。
「あぁ、私達の問題に巻き込んでしまった事は申し訳ないと思っている。
もちろん、フェリシテにも感謝している。君が居なければもっと被害が出ていただろう」
「それで?」
「君達に褒美を…と言いたいが、君等は我々の敵でもある。
それに、魔族やオークの姿を持つ君が我が国の金銭を受け取っても利用価値はないだろう。
何か品を贈ろうにも魔族やオークの価値のあるものなど分からない。
雌を渡せなどは論外だ。
故に、我が国が君達に出せるのは、一年…いや二年は君達に手を出す事はしない。
魔族にしろオークにしろだ」
礼を言うアーナムにソミラが続きを聞くと、答えたのはエンベルだった。
しかも、その内容は横暴なもの。
「つまりは、褒美に二年間は見逃してやる。そういうことか?」
「あぁ」
「殺されてぇのか?てめぇ」
ソミラが確認すれば、エンベルは即答する。
途端にソミラから殺気が吹き出し、空気が張り詰める。
エンベル達でも認識できる程度の殺意。
相手を威嚇するために、そのレベルまで抑えつけた殺気がエンベル達の意識に浸透し恐怖を刺激し重圧となり首を絞めていく。
「弱者が強者に提示するしてはおかしいな。
あぁ、おかしいよな。
見逃してくださいと言うなら考えものだが、見逃してやるとは…図に乗ってんのか?
今、たったこれだけで動けなくなるてめぇ等が、どういう要件でそんな条件を出せるんだ?」
今にも飛び掛かりそうなソミラだったが、自分の横に立っているフェリシテを見た。
堂々と立ち、エンベルが提示してきた内容に文句すら言わず黙って目を閉じ話しを聞いていた。
「……あああああああ!!ったく。
いいぜ…そのクソみてぇな提示を飲んでやる」
怒りを口から吐き出すように叫んだソミラは、少し落ち着いた様子でエンベルが出した条件を飲むと答えた。
「…ならば、我が城へ案内しよう。
相手が魔族やオークとは言え、正式に書面にて契約を結び直す。
付き合ってくれるな?」
「さっさとしろ」
重苦しい空気が散り、一度深呼吸をしたエンベルはソミラ達を連れて城へと移動し始めた。
その後ろを着いてきていた者達が追うが、他国の騎士達はソミラがエンベルが出した条件を受け入れた事に驚きザワつきながら移動していた。
もう少しだけカットするんじゃ。




