それは、信じた証7
フェリシテ君を全裸にするわけにはいかんぞ!
「やはり数が多いな」
迫る魔物達を斬り伏せながらエンベルは呟く。
けして少なくない被害だが、なんとか避難した者達はリスコッチェ国内へと戻った。故に東門前にはギルド員と騎士団。
加えて、エンベル王と何故かメイドに護衛されているアミリアにカーレだけが残っていた。
「エンベル王!」
「オレイアか」
「北門、南門は援軍到着により攻勢に出ています。
各国の援軍に任せ、第一騎士団は東門に着きます」
「良くやった。
民兵が残っている。変わってやってくれ」
オレイアとエンベルは言葉を交わしながらも魔物達を斬り伏せる。
少し離れた所では、ぎこちない動きで攻撃は弾かれながらも奮闘している者達の姿が見え、オレイアは一度頷くと連れていたレミア含む第一騎士団を引き連れ、その者達の元へと駆けていく。
「ん?」
群れの奥の方から何かが凄まじい勢いで飛んでくる事に気付いたエンベルは、そのままそれを斬り伏せようとしたが
「エンベル王!ダメです!」
移動をしようとしたレミアが叫び、それに反応したエンベルは振り下ろしていた剣を無理矢理捻り、飛んできた者を剣の腹で受ける。
その勢いに自分まで吹き飛びそうになったが、咄嗟に魔力を身体に巡らせ強化して踏みとどまった。
勢いが収まり、飛んできた者を確認したエンベル。
それは、裂けた布を着て、その上からボロボロになった布を纏ったオークだった。幸い、アーナムから渡されたサイズが自動調節される服を着ていた為、素っ裸と言うことはなかったが素肌が見えている部分の方が多い。
「オークだと?」
何故レミアが止めたのかは分からないが、オークならばと思い、呼吸もおかしく既に満身創痍のオークへと剣を振り下ろそうとした。が、走って戻ってきたレミアが地面に倒れているオークの元へと駆け寄り傷の状態を確認し始めた。
「フェリシテ殿!しっかり!」
「第五騎士団!このオークに治療魔法を!」
レミアの行動が一瞬理解できなかったが、その言葉を聞いてハッとしたエンベルは剣を引き近くに居た身を白いローブで包んだ者に声を掛け急がる。
「し、しかし!」
「いいから命を繋ぐんだ!」
喉は陥没し、抉られた肉体に両鎖骨の辺りは風穴が空いている。生きている事自体が不思議な程の重症だが、エンベルは急ぎ治療をさせる。
戸惑う第五騎士団の者は、警戒しながら近付き治療魔法をかけ始めるが一向に傷が塞がる気配がない。
「どうだ」
「欠損が酷すぎます。
止血はできそうですが、部位の復元は不可能です」
「フェリシテ殿!しっかりしてください!」
第五騎士団の者の言うとおり、出血は収まったが風穴もそのままで抉られた部位も戻る気配はない。
呼吸は少し安定している様子ではあるが、潰れた喉も戻る事はなく空気が抜ける様な音だけが聞こえる。
レミアが必死に声を掛けて数回。目を開いたフェリシテは、自分の身体を見て確認するとフラつきながら立ち上がり、吹き飛ばされて尚離さなかった半分以上無くなっている大剣を持ち上げ一歩踏み出した。
「フェリシテ殿!その傷では!」
「……」
「フェリシテ殿、無理をなさるな。
食事の約束もまだあるだろう。
友人に死なれては、私も悲しいのだ」
呼び止められたが、無視をして歩き出そうとするフェリシテのボロボロの布を引っ張り止めるレミア。
それを見て、一度自分の手に視線をズラしたフェリシテはレミアの頭を軽く撫でると、そのまま押しのけ進もうとした。
だが、その先ではレミアの行動に気付き戻ってきたオレイアがフェリシテの行く手を阻む。
「…」
「フェリシテ殿。
ここからは、私等に任せ」
オレイアが言い終える前に深く一礼をしたフェリシテは、ギラギラとした目でオレイアの奥を睨み、肩に手を置きオレイアを押しのけながら進み始めた。
(団長殿…ありがとう。
レミア嬢も、ありがとう。
友人…か。
そうか、嬉しいもんだな。
守らねぇといけねぇよな)
朦朧とする意識の中で、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
それ声に引き寄せられる様に意識は覚醒し、目を開ければオーク姿の俺を心配そうに見るレミアが居た。
自分の身体を確認すれば、鈍い痛みがあるものの不思議と動く。
大剣もボロボロだが持っている。まだ、戦える。
身体を動かし進めば、レミアに止められた。オークの手を見て申し訳無さを感じながらもできるだけ優しく離した。
肩は小さいし、他の場所に振れる訳にもいかず頭を撫でるような形にはなってしまったが。
レミアを離せた事を確認すると、次はオレイアに止められた。
そこで友人と言われ、嬉しい気持ちが心を満たす。それを言葉にしようと思ったが声が出ず、頭を下げる事で伝えた。
まだ戦える。それだけで戦える。その言葉だけで戦える。
フェリシテ感じる。
オークの時には得られなかった何かが満たされていく感覚を。
一歩踏み出す度に、身体に力が満ちていく。
まだまだ戦える。と感じる。
だからこそ、今、魔物共をなぎ払い削り喰らいながら迫る触手も耐えられる。
フェリシテは、魔物の群れを食い散らしながら迫る無数の黒い触手を見据えて痛みに備え歯を食いしばった。
「あん?ウゼェ」
だが、痛みがフェリシテを襲う事はなく。フェリシテの視界には白銀の髪と漆黒の翼が割り込み、その一言と共に迫る黒い触手を消し炭に変えた。
人物紹介カット。




