それは、信じた証5
重い。
フェリシテは、両手で握り水平に掲げながら持つ身の丈程の大剣の重さに笑いが零れそうになる。
オークの時ならば、枝と変わらない様に振れるだろう鉄の塊。
人の身体の限界と貧弱さを感じる。
「ウォーーーーン!」
「おぉぉぉおぉ!!!」
雄叫びを上げ走ってくるフェリシテに気付いたシルバーウルフが、威嚇する様に喉を鳴らし遠吠えを上げると周りのシルバーウルフ達が一斉にフェリシテへと襲いかか始めた。
「フンッ!」
気合を入れ、それを払う様に一閃。
そこに技術などは無く、力任せにただただ横に大剣を滑らせる。
その大剣が誇る切れ味と、力任せに振られた速度が重なり抵抗無くフェリシテを囲んだシルバーウルフ達は断ち切られた。
「まだまだぁ!」
大剣に引っ張られる身体を、無理矢理足の力と腰で止め飛び掛ってきたシルバーウルフを下から斬り上げる。
すると、斬り裂かれたシルバーウルフの向こうから無数の紅い眼が見えたと思ったら白い糸が周囲から迫ってくる。
「フォレストスパイダー如きが舐めるなよ!」
身体に纏わりつき動きを制限してくる糸を力任せに引きちぎろうとするが、人間の身体であるフェリシテはオークの時の様に引きちぎれず糸に包まれてしまう。
視界が真っ白に埋め尽くされていく中、不思議と耳にその音と声は届いた。
「人間の身体は良く出来ています。力任せではなく、動作に力を添わせ流れを意識しなさい」
優しく囁かれた様な言葉が終わると、染まったはずの視界が晴れていく。
「加勢致します」
フェリシテの周囲には、軽装を纏った者達が立っていた。
その者達に助けられ、糸が切られたのだろうと理解したフェリシテは一礼すると頭の中に残っている声の主を見る。
迫るシルバーウルフ達を、その場から一歩を動かずに処理をしていくメイド。
的確に眉間を撃ち抜き、警戒したシルバーウルフが大回りをしてメイドの後ろで守られているアミリア達を狙えば、何かに引き寄せられる様に上空に高く舞い上がり身動きが取れないままメイドの前に叩き落とされ、メイドは落ちてきたシルバーウルフの眉間に銃口を添えるを澄ました顔のままノータイムで引き金を引く。
既に、メイドとアミリア達の周りにはシルバーウルフだけならず様々な魔物の屍が積み上げられ壁の様にすらなっていた。
「流れ…」
その言葉を考えていたフェリシテは、背後に迫るフォレストスパイダーに気付かない。
変わりに、周りに居た軽装の者達が処理しようとしたが、その前に何かがフェリシテの両頬ギリギリを抜けフォレストスパイダーの眼を全て潰れた。
その現象に驚き、振り返ったフェリシテは周りのフォレストスパイダー達を確認すると、同じように撃ちぬかれている。
その時に、糸から助けてくれたのは軽装の者だろうが、フォレストスパイダーを狩った者が誰か理解する。
もう一度、同じようにメイドを見ると、目が合い澄ました顔が呆れた様に笑った気がした。
「流れは分からないが…確かにあのまま死んではカッコもつかないな」
周りの者達は、それぞれ魔物を狩りに動き始めている。
その中で、フェリシテは一度深呼吸をして大剣を片手で握る。
重い。
その重さを感じながら、フェリシテは大剣を引きずり一歩踏み出す。
今度は、その硬さと暴力的な数を誇るコーアントが隊列を組んでフェリシテの行く手を阻む。
背後にはシルバーウルフとフォレストスパイダー達も隙を伺っていた。
「キチッッ」
一体のコーアントが鳴くと、周囲のコーアント達も鳴き始め耳障りな音が響き渡る。
それを木にする事なく、一歩また一歩とフェリシテは大剣を引きずり脱力しながら近付いていく。
「力の流動…やっぱり分からん。
だが、理解してみせる」
一歩大きく踏み出したフェリシテは、身体をしならせ地面を削りながらも大剣を大きく振るった。
その一振りは、硬いはずのコーアントをスルリと抜ける様に斬りていていく。
フェリシテは、それを確認する事無く動作を繋げる。
大剣の重さに腕が引っ張られるが、それに抗う事無く任せ剣先が地面に弾かれ力の流れが変わった瞬間に大剣を逆の手に持ち替え反動を利用して大剣を目の前に叩きつけた。
「おぉぉぉぉ!!!」
その衝撃で目の前に居たコーアントは叩き割れ、血飛沫を周囲にばら撒く。
それを気にかけずフェリシテは大剣を自分の胸の前に掲げ、剣先を正面に水平に保つとそのままコーアントの群れを駆け抜け始めた。
切れ味にモノを言わせ、突貫するフェリシテ。
その進行方向に居たコーアント達は易易と裂かれ身を二つにしてく。
だが、腕の力が一瞬抜け剣先が下がった瞬間にコーアントの足が大剣の腹を踏みつけた。
ふわりと浮遊感がフェリシテを襲う。
しかし、フェリシテは慌てる事無く両手でしっかりと大剣の柄を握ると空中を一回転して目の前のコーアントに大剣を振り下ろした。
抵抗なく斬り裂かれたコーアントは、これまでのコーアントと同じように縦に裂ける。
フェリシテは、それだけでは止まらず、着地時に足に力をこれでもかと入れ身を翻し後ろから迫っていたコーアントも斬り裂く。
そこから流れる様に大剣を片手に持ち替え、身を回転させ周囲を斬り裂き。踊るように舞うように前へ前へと進んでいった。
巨体が回り、空を舞い、地を踊る。
やはりそこに技術は存在せず、力にと大剣の性能にモノを言わせているが不格好ながらも様にはなっていた。
どれほどウルフとスパイダーをアントをトレントを斬り裂き進んだだろう。
フェリシテは時間の感覚が無くなり、不思議を身体が軽く感じ思うがままに身体を動かして進んでいた。
高揚感が身を満たし、何者でも斬り裂けると錯覚しはじめていたフェリシテは忘れていた。
この場に何が来ていたのかを。
「ふむ。
良き武器だ」
骨に響く様な低音のガラガラ声がハイになっていたフェリシテの耳に届くと同時に、今まで聞かなかった打ち合う金属の音が聞こえ、大剣は止まった。
フェリシテは目を見開いた。
生半可な剣では傷すら付かぬコーアントの外殻すら簡単に斬り裂いていたはずの大剣が、手で止められていた。
大剣の刃に添えられた手の腹に。
「これならば、アント然りオーク然り斬り裂けるな。
だが、それまでよ。
振る者の技量の無さが武器を殺している。
それでは、我に掠り傷一つ負わせる事は叶わんぞ」
大剣を止めた者は、教える様に言いながら大剣握るフェリシテごと持ち上げた。
「ッ!」
フェリシテは慌てて大剣を離そうするが、それよりも早く地面に叩きつけられた。
身体中に凄まじい衝撃と痛みが走り、点滅する視界の中フェリシテは見た。
自分を囲むオークとオーガの群れ。
そして、神輿から降り未だ大剣の刃を握るオークキングの姿を。
フェリシテ
性別:雄
備考(人型)
イケメン…ではない。ダンディでも無かった。
声のイメージはバリトンヴォイス。 濃い顔に茶髪 鋭い眼光 緑色の瞳 二メートルはあるムキムキ巨漢
おじさんとお兄さんの間ぐらいの見た目 紅茶の味に驚きを感じた
踊る巨漢




