同時刻 3
眠さがヤバイ。
「ほ、ほん…らいならば…ま、だ…解けないと…は?」
「あ?苦しそうに喋りすぎだろ。
あぁ…てめぇにはつれぇのか。ったく、だりぃな」
呼吸もままならないアーナムが必死に喋ると、あまりにも聞き取りづらく眉間にシワを寄せて耳を傾けたソミラは、アーナムが喋り辛い原因が分かり、部屋に充満する魔力を制し体内へと抑えこみ。
そして、一応聞き取れたアーナムの質問に答える事にした。
「んで?封印の事だっけ?
んなの簡単だ。解けるわけねぇんだよ、正解の手順は黙示がその瞬間に決めるんだぜ?
黙示が決めていなければ、正解なんて存在しねぇ。
どのタイミングで、どの手順で、どの瞬間でやっても解けはしねぇ。
つまり、てめぇが黙示の知り合いで、封印の解除を黙示が決めなけりゃ俺はこうして起きてねぇんだ。
理解できたか?」
ソミラは、自分の頭を指先で軽く小突きながらアーナムを煽ってみるが、やっと呼吸が落ち着いたようでソミラの行動に反応はしない。
その様子に呆れ飽きたソミラは、椅子の背もたれに寄りかかり、肘置きを使って頬杖をつくと入り口辺りの方に視線を向ける。
だが、扉の前で待機していたアンナ達も息苦しそうに座り込み話せる状況では無さそうだ。
「どいつもこいつも貧弱かよ…
おい、てめぇ。俺を起こした理由はなんだ。
どういう理由で黙示は俺を起こす事を許可したんだ?」
カツカツと頬杖をついている手とは逆の手で、肘置きを鳴らして煽り急かすソミラの態度に、大きく深呼吸をして落ち着きを取り戻したアーナムは黙示から伝える様に言われた言葉を伝える。
「黙示さんからの言葉だ。
'約束を果たせ'」
「…チッ。
おい、名は」
「え?」
「名前を聞いてんだよ!さっさと答えろ」
明らかに苛つき始めたソミラの空気に当てられアーナムは慌てて答えた。
「ア、アーナム・ヘイリスカだ」
「そうか。
アーナム・ヘイリスカ…黙示との約束として、このソミラ・ロンベルハートがリスコッチェ王国の危機を救ってやる。
だから答えろ。俺は何からてめぇらを守ればいい」
アーナムの名前を聞いたソミラは、ピリピリした空気を無理矢理抑えて椅子に深く座り目を閉じて問う。
それにアーナムは、しっかりとソミラを見据えて力強く答えた。
「スタンピードから我々を救ってくれ」
「…その程度か。
いいぜ、救ってやるよ。この魔王ソミラがてめぇらを」
アーナムの答えに一瞬つまらなそうな顔をしたが、すぐに笑みを浮かべたソミラは、三枚の黒い黒い翼を広げた。
「そこに居る奴等も部屋に入れ」
ソミラが睨みつけながら言うと、アンナ達は抵抗する気力も無く従い部屋の中へと入ってくる。
それを確認したソミラは天井に目線を移し睨みつけ呟く。
「俺に来るはずだった魔素が減っていた理由はスタンピードの誘発のせいか…
上等じゃねぇか…久々に暴れるんだ、楽しませろよ」
部屋は、またソミラの魔力で埋まりはじめたが、最初の様に息苦しくなる事はなかった。
だが、洞窟内が大きく揺れ始め立っている事が難しくなったアーナム達がソミラの言葉に釣られる様に天井を見ると、星空に皹が入り崩れ落ち始めた。
しかし、落ちてくる岩がアーナム達に当たる事は無く、何かに弾かれ粉々になりなが天井が高く高くなっていく。
そしてアーナム達は気付く。
高くなったはずの天井に近付いている事に。
「初めに説明しといてやる。
一度しか言わねぇから聞き返すなよ。
今、始まってるスタンピードは、俺に流れるはずだった魔素を掠め取ってどっかに溜め込んでいたのが、俺の封印が解かれた事で黙示の封印がかき集めて俺に流す予定だった魔素が一気に流れた。
そのせいで規模がでかくなってやがる。
アーナム・ヘイリスカ。てめぇが死んだら契約不成立としてリスコッチェ国は見捨てる。
死に物狂いで生き抜けよ」
ソミラが話し終えると、天井は既に地上まで突き抜け、上がっていた封印の部屋の床が空に登っていく。
アーナム達は、上空から見てしまった。
自分達が通ってきた荒野が、魔物で埋まっているところを。
アーナム達があまりの数に目を見開いて声も出ずに驚いていると、座っていたソミラが立ち上がり両手を大きく広げ天を仰ぐ。
「これからまだまだ増える。
てめぇらも楽しめ。
殲滅開始だ」
ソミラが掌を返すと――天が落ちる。
そう錯覚してしまう程に巨大な紅蓮の業火が雲を裂き荒野に降り注いだ。
-人物紹介-
アーナム・ヘイリスカ
性別:女
備考 ギルド長 獣人狐族
得意属性:なし
ソミラ・ロンベルハート
性別:男
備考 孤高の魔王と呼ばれた魔族




