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混世界  作者: 慧瑠
なんてことは無い所詮は顔よな
55/140

同時刻 2

読んでいただきありがとうございます。


そろそろ時間稼ぎのオーク編の話しは一旦終わりそうです。

次は、学園七不思議にしようと思います。

まだ、登場キャラの名前を考えついていませんが…。



どうぞ、これからもよろしくお願いします。

入り口から降りている間は、途方も無く終わりの無い階段に思えたが。数分もすれば明らかに場違いな白い扉の前に着いた。


「さて…魔王にご対面と行こうか…」


進むに連れ、強くなっていったプレッシャーは、扉の前に着けば呼吸も苦しい程の重圧になっていた。

先頭に立つアーナムでも悪寒と冷や汗が流れ、後ろに居るアンナ達は息が上がっている。


扉に触れ、開けようとするアーナムは考えていた。その先で封印されている魔王の事を…


魔王、この世界には一体ではなく複数の魔王がいる。

魔界と呼ばれる地にて数百年を掛けて争い競いあった魔王達は、今では一体の大魔王と呼ばれる存在とその下に順位が存在し八体の魔王が居る。

一つの軍となった魔王。

各魔王達も軍を所持していた。魔族、悪魔、魔物、人類に敵対するモノを統括し派閥に置く事で各魔王達は大魔王の監視下の元競い合っている。


だが、本来彼等は個で王と存在する者達。

様々な特性を持ち、我儘で我が道を往く者である彼等は、時に別の魔王と戦い大魔王に牙を剥く魔王も居た。

それを討伐し、新しい魔王が誕生する。そして、力を見せつけ魔王としての格を上げていく。

大魔王は、他の魔王と別格の強さを誇っていると言われている。


それが今の世界のサイクルであり、明確に敵として存在する者達の情報であった。


「…そして、記された魔王の中で唯一反逆し生き残った魔王が居た」


誰に言うでもなく、一人記憶を整理しながら呟くアーナムには予想が立っていた。

この先に居るであろう魔王の事。

当たって欲しくない予想。


その魔王は孤高であり、軍を持たずして序列二位まで上り詰めたと言う。

個としての力は大魔王に並び立つ可能性さえあったその魔王は、ある日姿を消した。

大魔王に牙を剥いたその魔王は、大魔王と別の魔王達の軍勢と戦い多大なる被害を大魔王軍に与えた末に負傷し大魔王の手によって討たれた。初めはその情報が真実だと思われ、ギルドでもそうだと思われていた。


だが、あるギルドで集落を襲った魔族の討伐依頼を受けた冒険者が、討伐対象の魔族から無視できない情報を持ち帰ってきた。


『大魔王が、反逆の魔王を探している』


その情報が流れるまで、魔王同士の表面上での争いは無く、反逆した魔王も居ない。

つまり、該当する魔王は一体だけ。

元序列二位の大魔王に討たれたとされた魔王、個で軍を相手取る化物であり、'孤高'と大魔王を含めた魔王達から称された―ソミラ・ロンベルハート


「ギルド長、どうかされましたか?」


どれほどの時間そうしていたかアーナムには分からないが、扉に触れ止まっていたアーナムを心配して後ろに居たアンナが声を掛けた。

その声にハッとしたアーナムは、心配そうに近寄ってくるアンナに、なんでもないと答えると考えを振り払い扉を開けた。


その扉の先を見たアーナム達が、一番初めに思い浮かべた事。

それは――幻想。

混ざり合ったこの世界では、そう表現される場所など多く存在する。

だが、目にすればそう思ってしまう。


その部屋も、その一つだった。


洞窟の中の一箇所であるはずなのに、天井には星空が広がり雪が振り続けるその部屋の中央にソレは居た。

水晶の様に透き通った氷の中で手足に枷を付け、首輪から伸びる太い鎖で全て繋がれている魔王。


「嫌な予想と言うモノは当たるな…」


一人呟くアーナム。

彼女が目にした氷の中で眠る魔王は、予想通りであり記された情報と一致していた。


整った顔に少し長い白銀の髪、本来は二対四枚であったであろう三枚の黒い羽。

細身の身体から封印されて尚漏れだす、場を支配するような威圧と魔力。

晒されている胸元には、彼を象徴する紋様…間違いなくその魔王はソミラ・ロンベルハート本人であった。


一歩部屋に踏み入ると、身体に掛かる重圧が増していく。

それほど広くないが、天井のせいで広大な空間に思えるその部屋は、中央に佇む魔王の眠る巨大な氷と、その周囲に六つの半分程の大きさの氷柱。

その氷柱には、無数の札が貼っており、存在を主張するかの様に禍々しい光を放っている。


「手順は、先程教えたとおりだ。

もしもの場合に備え、いつでも動けるようにしておけよ。

絶対に交戦しようと考えるな。時間は私が稼いでやるから逃げ切れ」


後ろで息が上がり、冷や汗を流し続けているアンナ達にアーナムが言うと、彼等は一度頷き封印の解除を始めた。

特定の順番で特定の枚数ずつ氷柱から札を全て剥がす。

一つでも間違えば、封印は解除できずに数年を掛けて札が再生するのを待たなければならない。


ギルド員達は慎重に、情報をまとめた紙を見つつ封印と解いていった。


段階が進むにつれ、中央から溢れ出す魔力と重圧が増し続ける。


「これが、魔王達からも化物と呼ばれたモノのプレッシャーか…」


魔王の眠る氷の前に立ち、いつでも攻撃ができるように魔力を循環させ準備しているアーナムは、それだけで感じる圧倒的力量の差に笑う事しかできない。


封印解除を開始して一時間ちょっとが過ぎた辺りで、札は最後の一枚になった。


「ギルド長」


「ご苦労。

その一枚は私が剥がそう。

お前等は、部屋から出て扉の前で待機」


立っている事すら辛そうなアンナ達を見て、アーナムは最後の一枚の札が貼ってある氷柱の前に立ちアンナ達が移動したのを確認すると、一度深呼吸をした後に札を剥がした。


皹が入り一つずつ割れる氷柱。

それに合わせ、中央の氷にも皹が入っていき…最後の氷柱が割れた後、中央の氷も砕け散った。


部屋の中に視認できる程の漏れ出た魔力が渦巻き、眠っていたソレが白銀の髪を靡かせながらゆっくりと目を開けた。


拘束されている魔王は、辺りと一通り見回しアーナムを見る。


人間であれば、白い部分が黒く紅が混じった様な金の瞳で見つめられたアーナムは息が止まりそうになった。

見惚れた訳ではない。首を握られた様な錯覚と重圧に脳が停止しそうになったのだ。


「てめぇ…誰だ」


アーナムを見た後に再度部屋を見渡し、その視線をアーナムに戻した魔王ソミラが言った。

それに対して答えようとするアーナムだが、声が出ず息だけが漏れていく。

アーナムの答えを待つように黙って見ていたソミラは、アーナムが腰から下げていた袋に目が止まった。


「あ?…あー…てめぇあれか、黙示の知り合いか」


アーナムが下げている袋から何かを感じ取ったソミラは、凄まじく嫌な顔をしてアーナムに聞いた。

それでも答えられないアーナムを見て、呆れた様に一人喋る。


「まぁ、そりゃそうだわな。

あいつの知り合いじゃなきゃ俺の封印は解けねぇ」


未だ拘束されている手足に付いている枷、動く度に音を立てる鎖を忌々しそうに見つめ溜め息をついたソミラが、一度指を鳴らすと枷同士を繋いでいた鎖が砕けた。


「で?本来なら後数百年は解けない俺の封印と解いたってこたぁ何か用があるんだろ?」


動くようになった手を確認しつつ、頭を軽く掻き、いつの間にかそこにあった椅子に座ったソミラは未だ喋らないアーナムをじっと見つめ返答を待つ。

-人物紹介-


アーナム・ヘイリスカ

性別:女

備考 ギルド長 獣人狐族 

得意属性:なし


アンナ・イガール

性別:女

備考 ギルド受付 古株

得意属性:風 水 氷


ソミラ・ロンベルハート

性別:男

備考 孤高の魔王と呼ばれた魔族

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