あのオークになら抱かれてもいいって言われたい14
フェリシテ君、頑張る。
「つまり、何者かがオークと協力している疑いがあると」
「分からないが、オークはそれほど頭のいい種族じゃない。
待ち伏せはする事はあっても、基本的には数日掛けての事だ。
それに…オークリーダーが居ない集落は、基本的に食料の為以外の狩りをしない。
雌の狩りに行くときは、必ずオークは群れで行動するし、ウルフ共を従える為にもウルフ共の半数以上はオークの数が居るはずなんだ」
「ふむ…。
確かにオークとシルバーウルフが共闘はしていたが、オークの数が少ないのに加え、待ち伏せの場所が的確過ぎたと」
アンナが用意してくれた地図を元に、フェリシテとオレイアはこれまであった事とオークの特性を話し合い、地図に書き込んでは意見と情報を出し合いを繰り返している。
そして、オレイアもフェリシテと同じ違和感を覚え始めた。
明らかに、オークがルートを知っている様な待ち伏せのタイミング。
何より、フェリシテが話すオークの特性と今回の拉致事件には疑問点が浮かび上がった。
「そうだ。
そして、聞いた話では無理矢理拉致をしたと言うが…オークは臆病な生き物だ。
負けると分かればすぐに退く。
本能で雌には強気な所が抜けないが、それでも負けると分かっているのに正面切って行動したりはしない。
もっと姑息に、卑怯に戦い雌を拉致する。
今回の様なシルバーウルフを特攻させる事もあるが、洗脳もしていないシルバーウルフが命を投げ出してなんて事はありえない」
一人で考えている時よりも、しっかりと考えが纏まり違いが明確に分かってきたフェリシテは地図を睨みながらオレイアに情報を伝える。
聞いているオレイアも、フェリシテの話を聞けば聞くほどに違和感が大きくなっていく。
黙示が言っていたフェリシテの知っている事、それはオークの特性であり今回の襲撃との違い。
違和感を生むのには十分であり、何者かが関与されている可能性を引き出すには十分な情報であった。
しかし、それではまだ明確な敵が分からない。
少し考えていると、フェリシテはふと思った事を言った。
「アミリアとあの女騎士。
今回、リスコッチェ国で拉致されたのは二人だけか?」
「いや、他にも数名居る。
騎士団や王族ではないが、一般の農民の娘や冒険者が行方不明者になっていた。
今回、レミアが連れて帰ってきた者達以外にだ」
「護衛に着いたのはリスコッチェ国の者達だけなのか?」
「いいや、詳しい構成は言えないが、レミアが護衛に着いたのは別の国の重鎮達だ。
その護衛には、もちろん別の国の者達もいる。
アミリア王女の護衛にも、数名ギルド員達が居たはずだが?」
それがどうした?と続け聞くオレイアと後ろで聞いていたアーナムが不思議そうに首を傾げ聞いていると、同じく話しを聞いていたアンナが何を思ったのか早足でカウンターへ戻り、山積みの資料を漁り始め目的の資料を見つけ手早く捲って確認し始めた。
それに気付かない三人が地図を見ながら悩んでいると、アンナが数枚の資料を持ちアーナムの元へと戻ってきた。
「これは…確かにそうだが…。
それだけでは証拠にならないぞ?」
「どうした」
アンナが持ってきた資料に目を通したアーナムは、アンナの言いたい事を理解はしたがこれだけでは明確な証拠にならない事を言うと、その会話が聞こえたオレイアがアーナムの方を見た。
すると、アーナムは資料を差し出しながら説明する。
「今回の護衛に参加した者達をギルドは独自に纏めていたんだ。
そして、護衛状況と負傷者達もまとめていたのだが…レミアが攫われた時とアミリア嬢が攫われた時に負傷した者の国が同じなんだ。
彼等がきっかけでレミアもアミリア嬢も攫われている。
レミアが庇った兵と隙を突かれウルフの突貫を許しウルフの攻撃を食らった兵…二人とも避難国の者で、比較的安全ルートを用意して道案内係となっていた者達。
ホドロミア国の兵だ」
オレイアが資料を受け取り確認すると、確かにホドロミア国の兵が負傷者として名前が上がっている。
他に負傷者は数名居るものの、レミアやアミリアの時だけではなく他の護衛の時にもオークと出会い負傷していた。
「つまり、ホドロミア国が今回のスタンピードを起こし、自分達は安全圏からオークと協力し戦力を削っていたと。
最終的な目的は、スタンピードで我が国が堕ちた所に援助なりなんなりで内部から取り込む気だったか?
今回、避難国として率先して避難者を受け入れていたが…目的は避難国として各国から支払われる援助金。
それを足がかりに戦力と備蓄でも揃えるつもりだったか」
「ホドロミア国が今回の黒幕だとして考えれば、そう結びつける事はできるが。
やはり、証拠が足りない。
攻める理由としては不十分だ。
兵の負傷は事故でたまたまだと言えばいいし、援助金は避難を受け入れる身としては当然の要求でもある」
「スタンピードの件は?」
「お前も分かっているだろオレイア。元々自然災害だぞ?
黙示さんが違うと言っているだけで、私達には信じるに値しても国としては不十分。
この件は、国王に話しはするが…おそらくは、追求はせずにスタンピードの処理だけで終わるだろう。
仮にこれだけでホドロミア国が認めたとしても、ホドロミアの国民達が路頭に迷うだけだ。
黙認される悪事として終わる。
黙示さんも分かっていて、明確にホドロミア国の名を出さなかったのだろう。
」
「やはりそうなるか…。
分かっているが、納得はしづらいものだ」
資料を受け取ったオレイアはあくまで可能性として考えを話し、アーナムから返ってくる言葉は分かっては居たが納得がいかない様子だ。
アーナムも、オレイアの言葉に返してはいるが納得がいかない気持ちは同じ様で、不満気な顔をしている。
そのやり取りを聞いていたフェリシテは、決意した様子で言った。
「今回は、オーク達が関与しているのも問題だ。
人間と共存するのは願ってもない事だろうが、もう少しやり方もあるだろう。
今回の件は、俺もオークキングに直談判して止めさせる。
だがオークは、元々群れで一つの意思があるからオークキングの言うことを聞くとは限らない。
今後、同じことが無いと言える保証は無いが…少しの間ならばオークも大人しくするだろう」
「また化けてオークの集落に行くと言うことか?」
「あぁ。
オークキングに会いに、もっと森の深くまで行くことになるがな」
オークキングとは、オークの中でも別格の知能と戦闘力を持ち。支配力すらも絶対的なモノである。
それに意見するなど、近くに居るオークであれば自殺行為にも等しい。
だが、笑いながら言うフェリシテは思う。
僅かに数時間しか関わっていないが、人間と言うモノも悪く無いと思い始めている。
オークよりは知性的だが、醜い部分もあるだろう。
それでも、こうして考え話し合い意見すると言う行動が楽しかった。
そう、楽しかったのだ。
本能のままに雌を攫い、種を繁栄させる生き方に飽いていたフェリシテは楽しかった。
オークである自分でも人間と同じように話し考え行動できる。
ならば、オークでも人間や他種族と狩り狩られる間ではなく共存できるのでは?とすら思う。
(いや、違うな…)
できるのだ。
現に自分の父親はしていた。
オークでありながら、他種族と恋して愛して共存して自分を産み育てた。
元々群れを作るが、自分勝手なオーク。
(だったら、オークでも夢ぐらい見てもいいだろう。
恋が何か分からないし、何かを愛する事も知らない。
だが、そうだな…。
あのオークになら抱かれてもいいってぐらいには、想い合ってみたいものだ)
フェリシテは思う。
オークでも、これぐらいは許されるだろうと。
目指すモノぐらいは、自分で決めてもいいだろうと。
醜いと言われ、そう思う自分だが…ちょっとぐらいカッコつけてもいいだろうと。
その為に、こんな考えをする前の自分と決別し一歩先へと進むためなら、リスコッチェ国の為にオークキングに喧嘩を売るぐらいが丁度いいと。
少し震える手を見て、フェリシテは自身に対して挑発的な笑みを浮かべた。
-人物紹介-
フェリシテ
性別:雄
備考(人型)
イケメン…ではない。ダンディでも無かった。
声のイメージはバリトンヴォイス。 濃い顔に茶髪 鋭い眼光 緑色の瞳 二メートルはあるムキムキ巨漢
おじさんとお兄さんの間ぐらいの見た目
オレイア・ホンベルド
性別:男
備考 リスコッチェ国第一騎士団長 本当に歴戦の猛者です。 おじ様っ!って言われそうな雰囲気。
正義感の固まりだが自制心はある。
状況把握もできる人。
アーナム・ヘイリスカ
性別:女
備考 獣人 狐族 ギルド長 雪嫌い 黙示好き ギルド員からは、姉御やお姉様と呼ばれている。
戦闘では脳筋だが、しっかり考える時は考える。
アンナ・イガール
性別:女
備考 ギルド受付 ギルド職員古参 気の利く人 喋るの面倒なタイプの人




