一方その頃。
ふふふ、ブクマしてくれている方が増えているのに気付いてニヤついている私です。
評価もちょっとだけ上がっていて、うへへってなっています。
どうぞ、これからもよろしくお願いします。
-本の蟲-
「今日も平和ですねぇ」
「そうですねぇ」
ジャズが流れ、特に騒がしくもなく穏やかな店内で新しく新調したグラスを磨きつつ呟いた黙示の言葉に、アイスティーを飲んでいた雪は同意の言葉を返した。
すると、まるで黙示の言葉がフラグだった様に店の外が少し騒がしくなり始めた。
店内から外の様子を見る黙示だが、歩いていた人々が一方を見ながら話しているだけで何があったのかは分からない。
「今日、何かありましたっけ?」
「いいえ、特に催し物は無かったと思いますが…」
状況がよく分からなかった黙示は、隣に居た雪に聞いてみたが、雪も分からないようで首を傾げた。
まぁ、関係は無いだろうと仕事に戻ろうとすると、何やらガシャンガシャンと鉄がぶつかり合う様な音が聞こえ始め、その音はだんだんと大きくなっていく。
店内に居たお客達も、その音が気になり始めたのか個室から顔を出す客もではじめた。
「甲冑…?」
音を不思議そうに聞いていた黙示は、一定のテンポで聞こえる特徴的な音に覚えがあり様子を見ようとカウンターから店の入り口へと足を進めた所で、黙示が開ける前に店のドアは開かれた。
「失礼…黙示君は居るか?」
「おや、これは珍しいお客様ですね」
黙示が予想したとおりに鉄の音は甲冑だった様で、甲冑を来た人物を三人程連れた初老の男が入ってきた。
磨かれた銀の甲冑に、鞘に収められた剣を腰から下げ威圧感のある三人と、金の髪に白髪が見え隠れした少し窶れ気味の男性は、入ってくるなり驚き気味の黙示に縋り付く。
「おっと…何やら、急ぎみたいですが…
どうぞ、飲み物ぐらいは用意するのでカウンターへ」
男の突然の行為に驚きながらも、カウンターへと案内すると彼等は緊張しながらも一息ついた。
「それにしても、一体どうしたんですか?
貴方の国は、こっち方面では無かったと思いますが…」
「あ、あぁ…実は…」
黙示が聞いた話は、黙示も驚いた。
「なんとも…それで二日も掛けて来たんですか…」
黙示が、初老の男…エンベル・リスコッチェ王が縋り付いてきた理由を納得した。
彼は、親の友人であり自分が子供の時に遊んでくれた事もある黙示に助けを求めにきたのだ。
彼の話では、魔物の暴走の傾向があるとして、リスコッチェ国を中心と隣国で協力をしてスタンピードに備え準備をしていたという。
その際に、予想されるスタンピード発生地から離れた協力国に自分の娘と妻を避難させようと手配したらしい。
だが、その途中で馬車が転倒し移動が中断した日があった。その日、野宿の準備をしているとシルバーウルフの群れと遭遇した。
シルバーウルフは、狼型の魔物であり群れで行動することが多い魔物だ。
強さとしては、それほど強くはなく護衛として着いてきていた者達でも十分なはずだった。
だが、立て続けに問題は起こる。
シルバーウルフが、オークと協力をしていた。
これはスタンピードの傾向であり、予想されていたことだ。
護衛達は、予定通りに護衛対象である王妃と王女を囲み対処にあたっていた。
国の兵ともなればオークを討伐する事はできる。
たとえ、シルバーウルフと共闘していようと、余裕ではないが一日中襲われて居ても対処はできる程には問題は無かった。
そう、立て続けに起こった問題は、オークとシルバーウルフが共闘していた事ではなく、隙を突いたシルバーウルフが王女達が乗る馬車に跳びかかり、反応した護衛が斬りつけるも無理矢理突貫して王女を咥え上げ近場に控えていたオークに向け投げ飛ばした。
「姫!」
王女を咥えたシルバーウルフの首を切り落とし、即座に王女を担ぎ上げようとしたオークに斬りかかるもシルバーウルフ達が命を顧みず邪魔をして傭兵達はオークに近づけずにいた。
その間に、王女を担いだオークは森の中に消えていったという。
その後、少し時間を掛けシルバーウルフとオークを処理し終えると、王妃に護衛を数人残し即座に王女を探した。だが、森で見つけたのは王女に護身用で持っていた王家の紋章入りのナイフと眼球から脳を突かれたオークが居た。
「つまりは、貴方の娘さんは自分の担ぐオークを殺した後に移動したと?」
「聞いた話では、アミリアが攫われてから数十分は経っていたらしい…」
「それで、見つからず今日で三日目と…」
「あの子は、無自覚だが極度方向音痴なのだ…」
相当慌て、疲れているのだろう。
窶れきった顔を自傷気味に笑いながら言うエンベルの姿は、見ている方にも影響が出そうな程に痛々しい。
「僕に頼みたいと言うのは、そのアミリアちゃんの捜索ですか?」
「あぁ…生死が分からない上に、広大な森を無闇に探すため兵を動かすなんて隣国達も納得はしない。
そこで、父が日頃話していた黙示君を思い出したのだ。
店の位置も父の日記を頼りに探させて貰った」
「確かに、国王が僕の店を知っていたのには驚きました」
黙示は、エンベル達に出す時に用意した自分用の冷水を一口飲むと少し目を閉じ考え始める。
「エンベル王の国は、確か魔国のこの辺でしたよね?」
ふと思い出した様に、黙示はテーブルの下から二本で一つの棒を取り出し、それを広げると地図が浮かび上がった。
半分程は黒くなっているが、黙示の店がある混沌国を中心に大陸が続き、赤いラインで表示されている国境を何本か越えた辺りを指差した。
「あぁ、その辺は我がリスコッチェ国だが…」
「でしたら、聞いた情報から推測するに…リスコッチェ国が中心となっている辺りから隣国が無いこの地域がスタンピード発生予定地だと思いますが、どうでしょう?」
「そうだ。
ギルド員達が依頼の途中で、魔物達がおかしな群れを組んでいたり異常に発生していたりと報告してきて、調査の結果でその辺り一帯で魔物急増が見られた。
特異型の魔物も見られ、おそらく一ヶ月程度でスタンピードが発生すると予想している」
エンベルの言葉を聞いて、それはそれは…と何度か頷く黙示をエンベルが不思議そうに見ていると黙示はリスコッチェ国の周囲にある国のマークを三箇所に印を付けた。
「そして、そこから遠い国に避難するとして森を通るルートがある国はこの辺りですが…」
「あ、あぁ!そうだ、このルートを通って…」
自国であるリスコッチェ国から、黙示が付けた印に向け使う予定だったルートを引くと地図上にもエンベルがなぞった後を追いラインが浮かび上がる。
「そして、ここがアミリアちゃんが居なくなった森で間違ってませんか?」
黙示が地図上の緑色部分をこすると、森の範囲であろう領域が薄く赤色に染められる。
「あぁ…兵達の話では…」
自国の領地の半分程の広さのある森に驚きながらも、エンベルは落ち込み悲しそうに呟く。
今にも死にそうな雰囲気を漂わせるエンベルを見つつ、黙示はカウンターの下から一冊の古びた本を取り出しカウンターテーブルに置いた。
「これは?」
「その森なら運が良ければ、見つかるかもしれません」
黙示の言葉に、エンベルは驚き目を見開いた。
-人物紹介-
喫茶店-本の蟲-のマスター
明示 黙示
性別:男
備考:色んな人脈がある
喫茶店-本の蟲-の店員(厨房担当)
雪
性別:女
いつもの:アイスティー
備考:アイスティーは砂糖二個入れ派
エンベル・リスコッチェ
性別:男
備考:リスコッチェ国の王 小さいころにリスコッチェ国に来た黙示と会っている
アミリア・リスコッチェ
性別:女
備考:自称王女様は本当に王女様
ここで世界の補足
今回、黙示が地図を出しましたが、黒い部分は黙示が行ったことのない場所です。
本人が行かなくても、公共機関などで更新すれば表示されますが、黙示はマップ埋め感覚で同期はしていません。
もちろん、個人同士での同期も可能ですが、公共機関であれど個人同士であれど行ったことが無いデータがなければ、黒いままです。
ついでに、黙示が居る国は『混沌国』です。
その中の中央区と言う地域で店を構えています。
前回の龍族の村は混沌国の国境ギリギリの端の方になります。国境を越えれば『集落国』と呼ばれる集落が無数に存在している地域になります。
そして、今回出てきたリスコッチェ国は、『魔国』と呼ばれる魔法を主流に生活などをしている地域に存在しています。
魔国は複数の国の地域の総称であり、それ自体が国ではありません。
魔国の中にリスコッチェ国がある。そういう考えで大丈夫です。
ちょっと分かりづらいかもしれませんが、地図が書けない私なので…申し訳ありません。
ちなみに、エンベル王と護衛の騎士達は魔力で動く飛行船に交代で魔力を流し続け、本来休憩無しで四日程掛かる道のりを、船が痛むのを気にせずノンストップ全速力で移動し二日半で着いています。
『混沌国』を中心として、西の方に龍族街があり海上国境を越えれば『集落国』、北の方の海上国境を越えれば『魔国』で魔国の南側国境付近に数国挟み、リスコッチェ国ですかね…
中央区だけで、地球大陸分の広さがあるとか言ってるのに移動速くね?とか思うでしょうが…魔法も科学も進歩しているんですよ。
その辺りも、書ければいいのですが、いつになるか分からないので、今は進歩してんなー程度で今後もそんな認識でお願いします。
後、私の書き方がおかしく分かりづらかったと思うので補足を。
始めの方で黙示が中央区の広さの説明の際に言った地球分の広さに海は含まれていません。
あとがき、長くなってすいませんでした。




