閑話 黙示の居ない-本の蟲-2
も、もちっとだけ続くんじゃ(震え声)
「へー、って事はヨトさんってアルーテちゃんのお兄さんになるんですか?」
「あぁ」
「…その顔の皹っぽいのはファッションですか?」
「…あぁ」
林檎の質問にコップを拭きながら答えるヨト。
ヨトは、林檎の言う通りに顔に首から頬にかけて皹の様な模様が入っている。
まるで本物かのように…
「なるほど!これが昔に流行ったというビジュアル系!」
(いや、本物だろうアレ…)
リュコスは知っていた。ヨトのソレが本物だと。
いや、誰が見ても本物に見える。なんせ少し脈動しているのだ。
「最近のタトゥーは光るんですねぇ~」
「技術の進歩だな」
(ヨトさん…あしらい方適当過ぎじゃなかっすか?)
関心する林檎と同じように頷きながら息をするかの様に嘘をつくヨトに、リュコスの目がだんだん冷めたものへと変わっていく。
少し賑やかになっているカウンター席に先程からBGMをかき消す様に流れていたドリル音が大きくなる。
「あ、あの…アルーテちゃんってパフェを作ってるんですよね?」
「そのはずだな」
「なんでドリルみたいな音が聞こえるんですか…」
「パフェを作ってるからじゃないか?」
「あぁ~…え?」
「ん?」
時折聞こえる肉を叩く様な音とドリル音に林檎の不安は高まり、意味の分からないヨトの返しに納得しそうになったりしていると来店の音がドリル音に被せる様に聞こえた。
「いら…いらっしゃい」
入店してきた客をひと目見てヨトは一瞬固まったが、すぐに挨拶を返し鍋に火をつけ始める。
「おぉおぉ、やっぱりてめぇが居るって事はアイツもいるな」
荒い口調でその客が入ってくると同時に、店の中に熱風が吹き込み店の温度を上げる。
夏の風にしても暑すぎる風に林檎が振り向くと、そこには赤い女性が立っていた。
伸ばしっぱなしで手入れなどせずにボサボサの紅蓮の様な髪を持つ女性。赤い特攻服に身を包み赤いロングスカートと髪が熱風に靡いている。
その女性の両サイドには、頭から足先まで灰色で染まっている瓜二つの小さな男の子二人が無表情のままヨトと林檎を見ていた。
「それで、アイツはどこに居る」
「おい、ここでやる気か?」
「アイツが居るなら、どこでだってだ」
鍋に牛乳を注ぎ入れ温めるヨトが女性に聞くと、当然だろうと言わんばかりに胸を張る女性。
その女性に周囲を軽く見渡した灰色の男の子の一人が耳打ちをして何かを話している。
耳の良いリュコスには、その耳打ちの内容が聞こえてきた。
《クトゥグア様、おそらくあの暖簾の奥かと》
(クトゥグアって…あぁ、マジか…ラトさんを探して来たって事は、黙示さんの店大丈夫か?)
聞こえてきた名前にリュコスは、これから起こるかもしれないことを察した。
コンビニ店員のリュコスは、休憩時間の時に本を読む事がある。黙示から借りた物も多く、以前ラトにあった時に借りた本からラトとクトゥグアの関係を知り記憶していた。
だからこそ、クトゥグアとの相性が壊滅的に悪いラトが同じ空間に存在するとどうなるか…リュコスは分かってしまった。
「おいヨグ「今は、ヨトだ。ヨト・ネクロ」あ?あぁ…アタシはナフルル・ハウトで通してる。
あっちの時は、ナフル・ルハウトだ」
「ナフルル、帰る気は?」
「ねぇよ。わかってんだろ」
二人の会話の内容が分からない林檎を分かっているリュコスが少し席を移動しようかと声を出した瞬間、元気な声がリュコスの声をかき消した。
「でっきたー!林檎ちゃんできたよー!
ラト特性シャンパ…ふぇ?…なんでお」
パフェを持っていたラトは、最後まで言葉を続ける事はできず業火に包まれ数秒と掛からず灰になった。
「あ、あれ?アルーテちゃん?あれ?燃えて…ふぇ…」
「おっと…」
目の前で燃え尽きたラトに脳の処理が追いつかず、林檎は意識を失ってしまい慌ててリュコスが支える。
その流れを見ていたヨトは、気にもとめる事なくホットミルクをカップへと注ぎカウンター前に居るナフルルの前へと差し出した。
「お?気が利くじゃねぇか。だがぬりぃよ」
ナフルルがカップを持つと、中のミルクが沸騰し始めるがナフルルはそれを気にする事無く飲んでいく。
「熱くないのか?」
「こんなもんで熱い訳がないだろ?
舐めてんのか?てめぇ…」
「いや、そういうわけじゃないんだがな」
「アタシを焦がせるのは、黙示ぐらいさ」
少し頬を染めてホットミルクを飲むナフルルに、ひとつ頷きヨトは言った。
「なら、雪と黙示に怒られる前に片付けしとけよ」
ヨトは、床と天井に出来た焦げ跡を指差しながら、ナフルルと瓜二つの男の子を表情変えずに見下ろす。
そのヨトの言葉に、ナフルルは顔を顰めた。
「なんで、あの女と黙示の名前が出てくんだよ」
「だって、ここ黙示の店だよー」
ナフルルの質問に答えたのは、暖簾の奥から現れたラトだった。
ナフルルは、出てきたラトではなくラトの言った言葉に驚き持っていたカップを震わせ、両サイドの男の子達もビクッと反応を見せる。
「あれれー?知らなかったの?
もう一度言ってあげようか?ここ、黙示のお店」
ラトの追加で言われた言葉に、ナフルルはカップを音が響く程に強く置きナフルルの髪先から炎が揺らぎ髪も合わせるように揺れ始めた。
(ラトさん…頼むから煽らないでくれ…)
一番近くに居たリュコスは、林檎を少しナフルルから離しながらニヤニヤ笑っているラトを睨んでいた。
-人物紹介-
ヨト・ネクロ
性別:男 (本来:性別無し)
備考:神話生物ヨグ・ソトース
ラト・アルーテ
性別:女 (本来:性別無し)
備考:神話生物ナイアーラトテップ
ナフルル・ハウト/ナフル・ルハウト
性別:女/男 (本来:性別無し)
備考:神話生物クトゥグア
月無 リュコス
性別:男
備考:狼男 コンビニ店員 苦労人
橋本 林檎
性別:女
備考:JK 今回は被害者
お気付きの方も居たと思いますが、やっとラト達が何かを説明する事ができました。
なんでも出せる世界観を作って、やりたいように行き当たりばったりで書いているんですが…
次は、どんなのを出そうかと思ったりもしています。
黙示がメイン主人公ではありますが、パート毎にメインキャラが変わる事も多いです。むしろ、黙示がメインの方が少なかったりしないように気をつけるつもりです。
何か、いい感じのオカルト、科学、神話、などはありますかねぇ…
予定では、近々アンドロイドなりロボットなりを出そうと思考中。




