喫茶店2
遥か昔、人間は神を崇めた。
先の未来では科学と言う分野が進み、神の御業と呼ばれる様な現象を手軽に実現できるようになる。
その御業を発見し実現させ人物を称賛し人類の為ながばと神の使いと崇めた時代もあり、人間と共に科学も発展していった。
しかし、神は人間の進化の前に衰退する。
生まれ進化した人間が崇め創り上げた神
そして、人間はさらに進化し科学を生みだす。
結果、神は衰退し崇め縋る対象と言うだけで、それらを無きモノと認識する者達も現れ
神の業は、科学の前で証明され続けた。
それらを繰り返し、時を進み科学は、また一つ人の想像したモノを実現させた。
'テレポート'
それは、ワープや瞬間移動など様々な言い方があり、移動手段の一つとして想像され夢かと思われた…
だが、幾度の実験を繰り返し科学はそれを実現させるまでに至った。
だが、人は忘れていた。
自分達が縋り崇めた神は、認められない現象や確率を認識などを保留する為のモノであり
数値化できないモノを押し付ける為の言葉だと…
世界は科学では証明しきれていない。
宇宙の誕生しかり、生物の進化しかり
不確定要素も、その要素にすら確認されない未発見があることを技術の完成と共に忘れていた。
だからこそ事件は起こった。
テレポート装置の公開発表の時に…世界は混ざった。
君たちは、知っているだろうか…パラレルワールドと言う存在を
それは、同じ時間で別の時空で起こっている体感している事とは別の結果を歩んできた時間の世界
いうなれば可能性の世界だ。
何かをすれば、それとは違った結果で分岐してく世界
仮に、同じ結果でもそれまでの過程が違う世界
そんな様々な過程と結果が分岐し続けている現象。
それがパラレルワールドと称されている。
もちろん、無限に分岐していくパラレルの世界でもソレは行われた。
画期的な技術の誕生に、どの世界でも注目され賑わっていた。
同じ時間、同じ場所で幾つモノ世界で行われたテレポートの発表会。
テレポートは機械を使い、その範囲内を別の場所へと移動させるものだった。
新しく画期的な移動方法と言うのは、その労力削減として大いに喜ばれる。
だからこそ、結果が出た時にすっかり忘れてしまったのだ。
範囲内と言う指定があり、その範囲が移動するならば当然の様に移動する人物や物だけではなく
その周囲にある空気や目には見えない何かまで移動すると言う事を。
だから、世界はポッカリ空いたその空間を埋めようと空気は流れ
ソコへ密集するように寄せられる
そして、本来そこに無いモノが現れればソコにあったモノは押し出される。
世界にとっては微量なもの、些細なことだ…だが、誰かが言った'塵も積もれば山となる'
それを何回も何回も実験の段階で繰り返され
様々な時間でもそれは変わらず
ついに、些細な事は大きな歪みを生んだ。
人間は忘れていた。
証明できないから無いのではなく、それは可能性として残っている事を
まるで浴槽の水を抜いた時の様に全てが一箇所に集められ
流され混ざり
結果、世界は混ざった。
混ざった世界は、それまでとは明らかに変わっていた。
科学があった世界はもちろん
魔法のある世界
その段階より進んだ科学があった世界
科学も魔法もまだ無く発展途上の世界
獣だけの世界
それ以外の様々な世界
そして、世界だけではなく人の想像までもが混ざっていた。
幽霊や神などオカルトと称されるモノ
獣人や魚人など人と何かが交わったモノ
根本的に人とは違うが知性を得たモノ
到底実現はありえないであろうモノ
それらが混ざり
それ以外も混ざり
世界は拡張され形を成した。
高層ビルが並ぶが、窓から屋根が伸びベランダが隣接する隣のビルと繋がっていたり
中世ヨーロッパの様な建造物の上にある天守閣
森の中の繁華街
水の中の遊園地
空を飛ぶ車や杖に乗る人に地を駆ける馬車に手を繋ぎ歩く人
ファンタジーと呼ぶには幻想的ではなく科学的で
SFと呼ぶには非科学的で幻想的な
それほどまでに混ざった世界の風景は見ただけ大量の情報が視界を埋め尽くした。
そしてそれは、時間の流れと共に日常へと昇華し降格する。
この世界は混ざっている。
過去も未来も時間も時空も
それでも生きるモノは生きながらに生を謳歌し、死ぬ際それを振り返り、死んでから死を謳歌する。
創造も理想も幻想も
過去も未来も現在も
科学も魔法もオカルトも
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「黙示さん…前置きが長いですし、くっさいです」
「そうかな?僕的には、中々いい感じに語れたつもりなんだけどな」
私は、呼びなれたマスターの名前と共に感想と言う名のダメだしを呟きながら、長々似たような事が書かれた本を閉じミルクティーで喉を潤した。
「これって、この世界の始まりですか?」
「そうだよ」
本を読んでいて思ったことをマスターこと黙示さんに聞けば、黙示さんは肯定した。
世界が私が生まれるずっと前に混ざったと学校の授業で習ったけど…
それは、本当にずっと昔の事で不思議とこの本の内容は事実だと説得力があって、これを書いた人は、その時を見てきた様な印象を受けた。
そうなると黙示さんは…
「そう思わせるのも書き手の技術かな」
「!
今、私が考えてる事分かったんですか!」
「顔に書いてあったよ」
タイミングが良すぎ、思考を読まれたのかと思っちゃった。
私は、残り少なくなったミルクティーを一口飲み
本の内容とはまったく関係なく、ふと気になったことを聞いてみた。
「そういえば黙示さん」
「何かな?」
「どうして、私が本の内容を覚えてないと思ったんですか?」
「だって、いつもこうして本を閉じて僕とお話をしているじゃないか」
「…なるほど」
それは盲点だった。
文章作成能力が私には無いと分かっているけど、書くのが思ったより楽しくてやめられない。