前夜祭武闘会2
最後の方は、こう…黙示と雪の間には何かあった!みたいな雰囲気が出せてれば嬉しいです。
後、前もって言いますと…
この物語は、一応黙示が主人公で雪がヒロインではありますが、別のキャラにスポットが移る事が多々ある可能性が高いです。
全く黙示や雪が出ない事がある予定です。
その日の夜、黙示達は族長宅…ではなく別宅の方に泊まることとなった。
本宅の方は、既に明日あるパーティー仕様と飾り付けなどを終えている為、別宅の方に案内された。
別宅と言っても、仕様は人間サイズだが外観は豪邸の様である。しかし、龍族は人型で生活する事もあれば龍型で生活する事もあるため、一軒家でもビル五階建てが普通だ。
そこから考えると、この豪邸も龍型にとってはミニチュアハウス感覚だと龍族の者達は言う。
「それにしても、リドルさんが低反発素材なんて物を用意しているとは思いませんでした」
「まぁ、雪ちゃんが低反発好きなの知っていたからな!わざわざ用意した」
「……」
別宅にて、晩餐を終えた黙示達は食後のティータイムと洒落こんでいた。
そこで、食事中に思ったことを口にすると、リドルが当たり前の様に言い返してくる内容に黙示は言葉を失う。
元より、黙示を武闘会に参戦させる為だけに用意した景品であり、どうせ説得できないのであれば黙示が断りづらい状況を作り上げる。と沈黙する黙示にいけしゃあしゃあとリドルは語った。
「なんと言いますか…リド「も、く、し、さ~~~ん」グフォッ」
呆れつつも、文句が言ってやろうとした黙示の後ろから可愛らしい声が聞こえたかと思うと、何かが猛スピードで抱きつき、突然の衝撃に黙示は鳩尾をテーブルの角にぶつけ、鈍い音と共に頭をテーブルへと叩きつけられた。
「やっぱり黙示さんだ!就任パーティーに来てくれたんですね!」
「……え、えぇ。
もう、結構会っていませんでしたし顔も見ておこうかと思いまして…
お元気そうで何よりです。レリーアさん」
勢いよく後ろから抱きついて、黙示の背中に乗る形で嬉しそうに笑っている少女に対し、首だけを動かし痛みに耐えながら黙示は笑顔で言葉を返した。
「ハハハハ!黙示が辛そうだ!
族長になるんだ!少しは落ち着いきなさいレリーア!」
「はーい!」
木製のジョッキで酒を飲む父リドルに言われて、レリーアは黙示からいそいそと降りると黙示の隣に座る雪とは逆側に座り、ニコニコと黙示に何かを期待する様に見つめている。
背中に掛かっていた重さから開放され、椅子に座り直した黙示はレリーアの視線に気付き改めて人型のレリーアを見た。
父親似の活発で元気そうな雰囲気に、龍型の時に見た時と同じ紅色に染まる長い髪を肩辺りで纏めており、可愛らしい笑みを浮かべている。
「前に見た時より、大きくなって綺麗になりましたね」
「ふふん!そうでしょうそうでしょう!
雪さんには劣るけど、もう立派な魅力溢れるレディなんです!」
お世辞にも大きいとは言えない申し訳程度に膨らみがある胸をムンッ!と張って得意気なレリーア。
それを見て、黙示は何と言えばいいのか分からず愛想笑いで逃げた。
「劣ってなんかいませんよ。
レリーアちゃんは、とても綺麗です」
「ぐぬぬ…
褒められているはずなのに、雪さんが言うと嫌味に聞こえてしまいます…」
黙示の反応を見た雪が代わりに答えると、レリーアは恨めしそうに雪の胸に目線を固定してぷくっと頬を膨らませた。
「あっ!そういえば、黙示さんも武闘会にでるんですか?
さっき、ゴードが言っていました!」
「えぇ、貴女のお父さんに嵌められましてね…」
「そうだぞー!パパの完璧な作戦で晴れて黙示は武闘会に自主的に参加したんだ!」
「おぉ!パパさすが!」
リドルの言う事に間違いは無い。だが、納得がいかない!と言う気持ちを黙示は抑えつつ盛り上がっている親子を横目にため息を吐く。
「あ、でも黙示さん大丈夫?
武闘会には、結構強い人とか龍族も人型限定で腕試しに参加するって話だけど」
ワーワーと騒いでいたレリーアは、聞いた話を思い出し心配そうに黙示を見つめた。
それに対し、黙示は優しい笑顔を見せ
「レリーアさん、前に僕が言ったことは覚えていますか?」
そう言うと、レリーアは少し悩みハッ!と顔を上げて答える。
「'"人間"であることを諦めて尚、"人間"である事を辞めきれない。僕はそう言う"人間"です'」
「はい。正解です。
だから、ちょっと強い相手ぐらいなら問題は無いですよ」
「うーん、私達はちょっと強いぐらいなの?」
「僕にとっては…そうですね」
「ハハッ、よく言いおるわ」
「えぇ、本当に」
正解して嬉しそうなレリーアの頭を撫でる黙示にリドルと雪が茶々を入れ様に言ってくるが、黙示は聞こえないフリをしてレリーアの頭を撫で続ける。
レリーアは、黙示に頭を撫でられ嬉しいらしくリドルと雪の言葉は聞こえていなかった。
「あら?仲がいいわね」
「お久しぶりです。メニアさん。
お邪魔しています」
黙示が手を止めると、まだ撫でろとばかりにレリーアが乗っている手に頭をこすりつけているとダイニングのドアが開き一人の女性が入ってくる。
黙示とレリーアを見て、微笑んでいるメニアと呼ばれたその女性は、黒い髪に赤い着物を着た淡い雰囲気を持つ女性だった。
「本当に久しいね。
黙示も雪も相変わらず変わらないな」
雰囲気とは違い、男の様な口調で話すメニアはリドルの横に座りテーブルに置かれていたジョッキを一気に飲み干した。
「あっ…俺の酒…」
「ママ!」
「おーおーレリーア、凱旋は楽しかったか?」
「自分で飛べなかったから、ちょっと窮屈だった!」
「ククッ、基本的に族長には移動の時は護衛が付くからな。
自分で飛ぶ機会は少なくなるだろうよ。
なんせ、リドルはそれが嫌になって時期早々に族長を降りたんだからな」
レリーアが呼んだ様に、母メニアはリドルの事など気にもとめず追加で酒を注ぎ一気に飲みレリーアに今日の事を聞いた。
返ってきたレリーアの言葉に、メニアは噛み締めた様に笑い酒を飲む。
「メニアさんも変わりませんね」
「嫌味か?黙示。
最近、肌ツヤが無くなってきてるよ」
「そんな事は無いとは思うんですが…ねぇ雪さん」
「えぇ、今も昔と変わらずお美しいと思います」
「お前や雪と一緒にするな」
別に怒っている様子も無く、メニアは黙示と雪を見てへらっと笑い注ぐのが面倒くさくなったのか酒の瓶ごと飲み始める。
それからメニアも会話に混ざり、明日ある武闘会の話になれば黙示が話題を変えようとしたり、リドルとメニアが親バカっぷりを発揮しはじめレリーアが恥ずかしそうに止めたりとあり、レリーアがうとうとし始めた頃に黙示と雪は客間へと案内され解散となった。
「気にしていたんですか…」
「何をですか?」
一部屋に用意された二つのベッドに、黙示と雪が別々に横になっていた。
静かな部屋で、雪の呟きは黙示に聞こえていた。
「昔の事です」
「……僕の黒歴史ですからね。
気にしていないと言えば嘘になりますが、後悔をしているつもりもありません」
「黙示、貴方は「雪さん、もう寝ましょう。僕、明日は雪さんの為に低反発クッションを入手しなければいけないのです」…はい」
雪が何かを言おうとしたが、黙示がそれにわざと被せて無理矢理会話を終わらす。
それに、雪は何も言うことができなくなり重たい空気と沈黙が部屋を支配する。
「………愚問です。
僕に対しても、貴女に対しても、その問いは失礼だと僕は思っています」
「…ありがとう」
その震えた小さな言葉を最後に、どちらも言葉を発する事は無く眠りについた。
だが、部屋の空気は先程の様に重くは無い。
-自己紹介-
-喫茶店-本の蟲-のマスター-
明示 黙示
性別:男
喫茶店-本の蟲-の店員(厨房担当)
雪
性別:女
いつもの:アイスティー
-その他-
ゴード・バリオン
性別:男
補足:龍族
リドル・ドラゴニア
性別:男
補足:龍族族長 メニアの夫 レリーアの父
レリーア・ドラゴニア
性別:女
補足:リドルの娘
メニア・ドラゴニア
性別:女
補足:リドルの妻 レリーアの母




