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混世界  作者: 慧瑠
景品は闘技場で、昔話は夜会で
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前夜祭武闘会1

雪と黙示の過去を書くタイミングはいつにしよう。

食事の後、ミーニャは暴走ぎみの船員達に会いに行くと言い別れ黙示達も移動を再開した。

そこからは、特に何も無く移動二日目の夜には龍族の街へと着いていた。


「あんまり変わりませんね」


「ここ数年は、闘技場が拡張されたぐらいだ」


「あの人は何をやっているんですか…」


雪が周りを見渡すと、五階建てのビル程度のサイズの一軒家が並び、人型の龍族やドラゴンそのものが飛び交い賑わっている。

他にも、商人や冒険者の様な風格の者達が各々買い物や情報交換をする様子も見えた。


黙示もゴードの言葉に呆れながら、その様子から本当に武闘会があるのだと諦めていた。


そんな黙示達の前に無数の大きな古傷が目立つ龍が降り立つ。


「おぉ!黙示!間に合ったか!」


「何が間に合ったか!ですか。

僕は聞いてませんよ武闘会があるんなんて」


「そりゃそうだ!教えるつもりは無かったからな!」


その老龍は、ガハハと大口を開け笑い徐々に人型へと変わっていく。

筋骨たくましいその姿は、人型でも2mを越える身長に無精髭が様になっている。


「リドル族長、ゴードただいま戻りました」


「うむ、ご苦労だった。

貴様の部隊の者達がゴードが居ないとソワソワしていたぞ。顔を見せに行ってやれ」


「なんと…それは喝を入れに行かねばなりません。

黙示殿、雪殿、申し訳ないが私はここで失礼する。


また、後で顔を合わすであろう。

我等が街を楽しんでくれ」


「ここまでありがとうございました。

ゴードさんも、ご無理をなさらぬよう」


「ありがとうございました」


リドルの言葉に、顔をしかめたゴードは黙示達に頭を一度さげ返事を聞くと、そのまま街の中へと走り去ってしまった。

黙示は、ゴードの姿が見えなくなるとリドルへと向き直り不機嫌そうな顔をする。


「なんだ黙示、怒っているのか?」


「別に怒っていませんよ。

まさか、'探求者'まで呼んでいたとしても怒っていません。

僕は、新しい族長就任のパーティーに足を運んだだけなので武闘会には出ませんし」


「何を言っている。

武闘会はパーティーの前夜祭の様なもので、もちろんお前の名前も登録してあるぞ!黙示!」


いい笑顔で力強くサムズアップをするリドル。対する黙示は額に青筋が浮き上がり暑苦しいリドルの横をすり抜け街の中へと入っていった。

もちろん、雪も黙示の後を追いリドルには目もくれず街の中へと歩き出す。


目を閉じる程の素晴らしい笑顔のリドルは、それに気付かず気付いた時には既に黙示達の姿を見失っていた。


---


「はぁ…」


「どうするんですか?」


ここ二日で、何度目か分からないため息をつく黙示の横を歩く雪が聞いた。


「棄権しますよ。

別に、僕は戦いに来ている訳じゃないですし」


「私は、黙示さんの戦う所…久々に見てみたい気もします」


「雪さんは、リドルさんの味方ですか…」


「龍族が黙示さんの敵になるのであれば敵です。

殺るなら殺ります。でも、その敵と戦う黙示さんを見るのは好きですよ?」


「やめてください、戦いません。

武闘会にもでません。

観戦しましょう観戦」


変わらないと言ったものの、お祭りムードの龍族の街は騒がしく二人の会話はすぐにかき消されていく。


大きな一軒家の玄関には、巨大な玄関のせいでやたら小さく見える龍族や商人達が露天を開いていた。

巨大な玄関の扉をよくよく見れば下の方に人間サイズの扉があるのが分かる。

それらを眺めながら街を歩いていると、周りの人々が空を見上げ何かを話し始めた。


黙示達もそれに釣られる様に上を見ると、数体のドラゴンが大きな籠を持ち上げながら飛行していた。

その籠の中には、紅蓮の鱗を纏い鱗よりも紅く、黒い、深紅の翼を持つドラゴンが街を見下ろしている。


「あの子も大きくなりましたねぇ」


「えぇ、とても綺麗にもなっていますねぇ」


そのドラゴンを見た黙示と雪が呟くと、そのドラゴンと目が合った気がした。

いや、合ったのだ。金色の綺麗な虹彩を縦に割いている黒い瞳孔が細くジッと黙示達を見ていた。


「何やら、驚いた様子でしたがまさか…」


「えぇきっと、あの老龍が内緒にでもしていたのでしょう」


相手の様子に雪はまさかと思ったが、黙示がそれを肯定し無表情に言い返した。


「いやぁ、我が娘は可愛いな!」


「親バカさん。娘さんが驚いているみたいなのですが」


「そりゃ、内緒にしてたからな!ハハハ」


大きな声で笑うリドルは、いつの間にか黙示達の後ろで一緒に空を見上げている。

いつの間にかと言っても気づかなかったわけじゃない。

族長である彼は、龍族でなくとも有名である。

彼が近づいてくる時に、黙示達の周りは少し開けていた。気づかないわけじゃないが…気づきたくないフリをして敢えて触れなかった黙示だが、後ろからバンバンと肩を叩かれながら大声で笑われれば無視も限界だった。


「さて、武闘会は明日だ!

今日は家に泊まるといい!」


「だから僕は「でましょう。黙示さん」…雪さん?」


どんどん話を勝手に進めていくリドルに、ちょっと強めに断ろうとした黙示を遮って今度は雪が武闘会に参加する様に黙示に言ってきた。

黙示もそれに驚き、バッと雪の方を見ると…その手には一枚の紙が、明らかにリドルから受け取った体勢でその紙を見つめていた。


「黙示さん…そろそろボーナスですよね?」


「え、えぇ…来月辺りにでもボーナスを出すつもりでしたが…」


「私は、これが欲しいです!」


珍しく雪が強めに紙の一番上を指さし黙示に詰め寄った。

そこには…


一位景品 ぷりちーどらごん低反発クッション


と、書かれていた。


ここで、一つ説明をすると

黙示が経営する-本の蟲-の正式雇用者は雪のみである。

今回の様に、臨時で友人にアルバイト代わりに頼む事もあるが、基本は雪と黙示の二人で経営している。

給料はアルバイトには時給で払っているが、雪に関しては固定給に年に二回のボーナスがある。


そして、ボーナスは固定給が基準ではあるが、もし欲しいものがあれば黙示が許可する限り物品でも可能であった。


雪は、今回それを使った。


「あぁ…雪さんって、低反発素材好きでしたね…」


黙示は、雪の好みを知っている。

科学の進化により、低反発も進化していった。

体に負担を極力掛けず、包まれ沈む様な感覚が特徴的な低反発は進化を重ね'雲の海'と人気が出る程に気持ち良い物になっていた。


お手軽の低反発素材は昔から変わらないが、高価になればなるほどに優しくふわりと体を包みゆっくりと沈んでいく感覚に虜になる者達が後を絶たない。

雪も、その一人であった。


「はぁ…」


「ダメですか?」


「雪さんには、お世話になっていますし…前回の特別仕様最高級低反発ベッド'アヴァロン'に比べれば、まだ入手簡単な物ですね。

えぇ、本当…どこにあるかが既に分かっているわけですし」


そう言う黙示は、前回の苦労を思い出し遠い目をする。

だが、黙示とは真逆で黙示の言葉を聞いた雪は幸せそうな顔で黙示を見つめ始めた。


それを横目に見た黙示は、諦めた様にリドルを見て言った。


「参加させてもらいます…」


それはそれは、小さな声だった。

-自己紹介-


-喫茶店-本の蟲-のマスター-

明示みょうし 黙示もくし

性別:男


喫茶店-本の蟲-の店員(厨房担当)

せつ

性別:女

いつもの:アイスティー


-その他-

ゴード・バリオン

性別:男

補足:龍族


リドル・ドラゴニア

性別:男

補足:龍族族長

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