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1年後…

 6話目です。

 子供人形たちはウチに来てから1年経ちました。

 マーレットにとっての地獄の日々は続きます。

 そして、それから1年…。


 30体の子供人形たち(アリル、チュチュ、ニュニュ、ミュミュ、ルル、ララ、レレ、モモ、モク、フラワー、アン、ピッチ、ルラ、ピピ、ローラ、ポポ、ピュピュ、スィーツ、プリン、ココ、ビノ、シー、ミルク、メイ、リーズル、ユーシィ、マガモ、ロコ、メイベル、キディ)も、すっかりハーレス邸宅での生活に馴染んでいた。

 毎日、優しいエリザベル・ママの愛に包まれながら、豊かな暮らしをしているのだ。

 広く素敵な部屋で、美味しい物をお腹イッパイ食べ、思いっきり遊ぶ。

 夜は温かいお風呂に入って気持ち良く。ママ特製のフワフワのベッドでグッスリ眠る。

 毎日が幸せ気分である。


 ママとの語らいの中で子供人形たちは互いに、ママに対する思いを語った。

 人形幼児独特の拙い言葉なので、フツーの言葉に訳してみると…

「私たち、とっても幸せねー」

「幸せ?」

「こんなに広い豪華なお部屋で、ステキなお洋服を着て、美味しいご馳走をお腹イッパイ食べて、思いっきり遊べるじゃなーい」

「そうネェ。私たちって幸せだわ」

「ママのお陰だわ」

「ママのお陰ね」

「サイコーだわ」

 子供人形たちの会話にエリザベル・ママは終始、笑顔笑顔である。


 レレがママに質問する。

「ミャミャー、コレキャラモ(これからも)、ワタチチャキ(私たち)、チアワチェ(幸せ)?」

 エリザベル・ママは当然のような顔をして答える。

「勿論。コレカラモ、ズット、幸セョ」

「ウワーッ!!」

 子供人形たちは皆、大喜びである。

 エリザベルは今、充実した気分に浸っていた。


 この私を誰だと思ってるの?

 私はエリザベル。国一番のステキなレディ人形よ。

 美しく気品満ちて、とても優秀だわ。

 私のような高級な人形は他にいないわね!

 このコたちは皆、本当に可愛いくて凄く優秀だわ!

 この国の馬鹿な人間どもが考えた教育とかを教えるなんて、愚の骨頂ね。


 私はこの屋敷の主。屋敷の物は全てがわ自分の物なのだから。

 弱虫で愚かなマーレット=ブラウンは奴隷として一生、私の下で働くのよ。

 これからも、タップリとイジメてあげるわ。

 マーレット、お前はとてもイジメがいが有るわ。

 私の傍で仕え、イジメられる事を誇りに思いなさい。


「ミャミャー! 抱ッコー! 抱ッコー!」

 足元でボールで遊んでいた素っ裸のキディが顔を上げ、抱っこをねだった。

 エリザベル・ママはキディを抱き上げ、優しく頬ずりした。

「私ノ可愛イ、キディ。世界一ノ、ステキナ、赤チャンダワ」

「キャハハハハ!」

 今日も優しいママの温かさに触れて、キディはいつもニコニコ顔である。

 その様子を人形部屋の外から見ているのはマーレットである。

 エリザベルから些細な理由だけで、椅子で何度もボコボコにされて相変わらず顔中血だらけである。 子供人形たちは皆、そんな哀れなマーレットを見て大笑いしたのは言うまでも無い。

 マーレットが気になったのは、キディの様子である。

 ベビー人形用のおしゃぶりを口にしているその様は、殆ど赤ん坊と変わらない。

 赤ちゃんみたいな性格が特徴の子供人形として作られたキディだが、今では殆ど赤ん坊化しまっていた。

 エリザベル・ママ自身がキディを赤ちゃん扱いしているのだから、これは益々変だと言えよう。

 食事も排泄も、入浴もママがいないと1人では出来ない。

 仲間と一緒にワイワイ遊ぶ事以外は殆どエリザベル・ママに抱かれていて、1日中懐の中でオッパイをしゃぶり続ける事もしばしば。 

 喋り具合は他の子供人形たちと変わらないけど、知能が退化してしまっていると言っても過言ではないのだ。

 色々と教えてあげると知識を素早くストレートに吸収するよう子供人形の脳は上手く出来ているけど、何も教えてあげないと知能はそのまま。

 マイナス面な事をすると逆に退化してしまう恐れも有るぐらい、子供人形の脳はデリケートだと言う事が子供人形養育教本には書かれていたハズである。

 まあエリザベルは、教本そのものを殆ど読んでいないからそんな大切な事柄なんて知る由もないだろう。


「可愛イ、キディ」と言って、エリザベル・ママはキディを床に下ろした。

 キディはママの傍で軽く散歩を始める。

「ミャミャチョ(と)、オチャンポ(お散歩)♪ タニョチィ(楽しい)♪ タニョチィ♪」

 気持ち良さそうに散歩するキディ。

 歩くのはフツーに歩くのだ。

「キディハ、世界一ノ、赤チャンダワ」

 エリザベル・ママはニコニコしながらしゃがみ込み、キディとじゃれ合った。

 再びボール転がしを楽しむキディ。ボ

 ールを転がし過ぎたからか、前に出て来て身体で止めようとした。

 だが転がる勢いが強すぎて、キディは転倒してボールの下敷きになってしまった。

「ウー! ウィアン! ウィアン! ウィアン! ウィアン!」

 人間でもヨチヨチ歩きの子供が転んで泣き出すように、キディも泣いちゃった。

 慌ててエリザベル・ママはキディを抱いて上げる。

「マァ、転ンジャッタノネ! 痛クナイ! 痛クナイ! 大丈夫! 大丈夫!」と、必死にキディを優しくあやす。

「ウィアン! ミャミャー! ウィアン! ウィアーンアーン!」

 狂ったように泣き出すキディ。

 エリザベル・ママも泣き始める。

「可哀相二! マーレットノ、セイダワ!」

 キディが勝手に転んだだけで、エリザベルはマーレットのせいにするとはこれ如何に?


 子供たちにはとても優しいエリザベルなのですが…

 続きます。

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