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エルーナ王女は…

29話目です。

 北の魔界…、


 魔王宮の広場では数多くの市民たちが集まっていた。

 毎週、週の初めに行なわれる恒例の謁見が行なわれるのだ。

 この時は普段、大衆の前には姿を見せないソフィア王女も顔を見せる予定になっている。


 魔王宮警護隊の隊員たちがラッパを吹いた。

 ラッパの音色が広場に轟くと、それまでのざわめきがスーッと止んだ。

 群集たちは一斉に魔宮殿のテラスに注目する。

「魔女王バルニラ様のご入場であーる! 皆の者ぉ! 姿勢を正して迎えよー!」

 広場に響くアナウンスの声で群集たちはサッと姿勢を正した。

 ラッパの奏でと共にテラスの奥から魔女王バルニラがゆっくりと出て来た。

 黒の正装姿で黒マントを羽織り、鉄の仮面を付けた格好で堂々と歩いて来る。

 その後ろを歩いて来る黒のロングスカートドレス姿の人形女性がソフィア王女である。

 魔女王様ー! 魔女王様ー!

 ソフィア王女様ー! ソフィア王女様ー!

 群集から魔女王様コールとソフィア王女が響く。

 バルニラとソフィア王女はテラスの塀越しから広場を見下ろした。

 ギッシリと埋め尽くされている広場では群衆たちが手を振っている。

 群集たちを見回したバルニラが片手を挙げると、コールはピタッと止んだ。

 一瞬にして広場は静寂に包まれる。


 間を置き、バルニラが口を開いた。

「国民の皆さん…、ご機嫌…、如何ですか?」

 元気でーす!

 バルニラからの問いかけに群集たちは一斉に返事をした。

「元気なのは何よりです。さて、ココで先ずは…、皆さんに嬉しいお知らせが有ります」

 嬉しい、お知らせ?

 群集たちの注目は高まる。

「7~8年前から行方不明になっていた我が娘…、二番目の王女である…エルーナが無事に…私の元へ帰って来ました」



 一瞬の沈黙の後…



「オーッ!!」と、広場は大きな歓声が轟き始めた。

 バルニラが後ろを向いて片手を挙げると、ソフィア王女と同じ衣装を着た美しい女性がゆっくりと歩いて来た。

 フリーラムランドから帰国してホッとしていたエルーナ王女である。

 テラスの塀越しから広場に顔を見せ手を降り始めると、群集から再び大きな歓声が湧いた。

 エルーナ王女様!

 エルーナ王女様!

 よくぞ、御無事でー!

 エルーナ王女の安否を気にしていた群集たち。

 本人の元気な姿を目の前に誰もが安堵し、嬉しさイッパイになっていた。

 母君であるバルニラに促されてエルーナ王女は落ち着いた口調で言葉を掛け始める。

「この場を持てる日が再び訪れようとは…、私は夢にも思いませんでした。皆の元気が姿を見て、私はとても…嬉しく思います」

 エルーナ王女様!

 エルーナ王女様!

 エルーナ王女様!

 群集の喜びようは大きいものである。


 再び静かになったところで、エルーナ王女は話しを進めた。

「私は今から…、7~8年前に、心無い一部の愚かな人間たちによって身柄を拘束されてフリーラムランドの国へ連れて行かれました」

 連れて行かれた!?

 拉致されてたんだ!?

 行方不明になっていた理由を知り、群集の誰もが驚きの表情を見せた。

 群集の反応を確かめながら、エルーナ王女は更に話しを進める。

「フリーラムランドの薄汚い施設に収容された私は奴隷として働かされ、毎日のように酷い虐待を受けていたのです。王女だと? ふざけるな! お前は愚劣極まりない能無し人形だ!

 薄気味悪い化け物だ! こう言った誹謗中傷の言葉を浴びせられた事もしばしばでした」

 な、何て事を!?

 茫然となる群集たち。

「初めの頃は…、私は絶望的になっていて辛い気持ちばかり抱いておりました。でも私は段々と気持ちを入れ換え、挫けないで生きる事を誓ったのです。だれかがきっと、助けに来てくれるまで頑張って困難を乗り越えようと…。私は聖なる王女であり、気品溢れる高級人形。

 情に満ちて、美しく正しい心を持つ素晴らしい女性です。そう言った強い自信を抱いて今日まで頑張って来たのです。魔界政府機関の諜報部と警護隊の活躍で私は無事、愛するお母様であるバルニラの元へ帰って来られたのが何よりも嬉しい気持ちです」

 おー!

 群集から大きな拍手が湧いた。


 今度はエルーナ王女。怒りを込めた言葉を発した。

「悪いのは全て…、人間たちです。その中でも最も憎むべき人間はマーレット=ブラウン。

 お姉さまであるソフィア王女の可愛い子供たちを殺しておきながら、この私を拉致して…ずっと苦しめて来た許すまじき超極悪犯罪者です。マーレットは、私の元側近だったスザンヌ=ボレロを脅迫して私の拉致に協力させました。そして目的が達成すると、口封じの為にスザンヌを殺してしまったと聞いております。マーレットは更に、同じように口封じの為に拉致の実行に加担した人間たちをも殺してしまったようです」

「…」

 バルニラとソフィア王女はジッとエルーナ王女の横顔を見ていた。

 2人共、ソフィア王女を語る事を、あまり信じてはいないのだ。

 エルーナ王女が今まで、何をしていたのか?

 どんな状況だったのか、全て報告が上がっているから疑念を抱いていた。

 だた、キチンとした証拠が出ていないから…まだエルーナ王女本人を問い詰める事は避けたままである。

 裏での状況進行にエルーナ王女は気付く由も無い。

「マーレットは更に…、残酷な事をしております」

 残酷な事を!?

 再び群集の注目が集まる。

「私が奴隷として過ごしていた施設に、数多くのとても可愛い子供たちが暮らしていました。ソフィアお姉さまの今は亡き、子供たちよりも数倍可愛い女の子たちです。でも可哀相に…」

 ここでエルーナ王女は嗚咽し始めた。

「子供たちは私以上に奴隷扱いされ、激しい虐待行為を受けていました! 毎日毎日、苛められて泣いてばかりいたのです! 小さな可愛い子供たちを、マーレットを始め愚かな人間どもは事もあろうに…! 面白がって虐待していました。! バラバラに引きちぎられて殺された子もいます! 泣きながら逃げ惑っている所を掴まえられて、煮えたぎる熱湯の中へ放り込まれている子供たちもいます。私は虐待を止めるよう強く訴えたのですが、人間どもは聞く耳さえも持っておりませんでした!」

 何だって!?

 ひっどーい!

 群集たちがどよめく。

「優しいママに抱かれて…、気持ち良くオッパイを吸っていた…とても可愛い子がいました。

名前はキディと言い、まるで赤ちゃんみたいで…とても純粋な美しい心を持った世界一可愛い可愛い女の子です。キディはステキなママの懐の中で嬉しそうな顔をしてオッパイを吸っていました。そんな時でした。マーレットは氷のような冷たい笑い顔を見せながら、キディを母親から強引に引き離し…、優しいママの目の前で激しく叩きまくり…、そして挙げ句の果てに八つ裂きにして殺してしまいました。ママは狂ったように泣き叫び、自ら命を絶っております!」

 げー!? 

 群集のどよめきが高まる。

「キディ…、キディは!」

 声を詰まらせるエルーナ王女。

「王女様―! 気を強く持ってー!」

 群集の1人が声援を送った。

「キディは激しく泣きじゃくり、ママの前で苦しみながら死んで行くのを! 私は為す術も無く、指を見ている事しか出来ませんでした! マーレット、許せない!!」

 泣き出すエルーナ王女。


 ここで群集たちの怒りが弾けた。

 マーレット=ブラウン!

 許せなーい!

 群集の1人…髭面のジジイが怒りを込めて叫んだ。

「あの女を殺せー! 捕まえて死刑にしろー!」

 更に…

「だから言わんこっちゃないんだ! あの時の裁判で思い切って死刑判決にしていれば、エルーナ王女様が苦しまなくてすんだんだ!」

「マーレットとか言う女! たった11年の服役じゃ、反省の色が足りなかったんだねー!」

 文句たらたらの女2人。以前の裁判で傍聴していたコンビである。

 マーレットへの怒りがますます強める2人。 


 群集からの抗議の声で広場は緊迫した雰囲気に包まれた。

 多くの市民たちが声を大にして、マーレットの死刑執行を訴えるのだった。

 暴動に発展するのではないかと思われるぐらい、かなりの緊迫状況にバルニラもソフィアも緊張した思いになっていた。

 バルニラは警護の隊員たちに騒ぎの沈静化を指示する。

 だが群集たちの騒ぎは納まりそうもないようだ。

 死刑!


 死刑!


 死刑!


 死刑!


 死刑!


 死刑!

 怒号と抗議の嵐が広場を覆い尽くす。


 エルーナ王女は何の動揺も見せず、落ち着いた表情で群集の騒ぎを見ている。

 ニヤッと微笑むエルーナ王女。



 心の中で叫ぶ。

 何もかも、上手く行きそうだわ!


 後は…!



 マーレットを死刑台に誘えば!

 



急遽、物語を追加する事になりました。

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