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子供たちは!?

26話目です。

 エリザベル…エルーナ王女が国へ帰った。

 当然、あの子供人形たちも一緒のハズ。

 そう頭に思い浮かべたマーレットは、ビュルトに確認してみた。

「王女は子供たちを一緒に連れて帰ったのかしら?」

「え? 子供たち?」

「あのコには、小さな子供人形たちがいるの。王女自身を幼くしたような可愛い女の子たちだけどね。ずっとママの傍にいたから一緒に連れて帰っているハズだけど」

「王女は、お1人で本国へ戻られましたよ」

「子供たちは?」

「どこかの、人間の女性に譲り渡しています」

「他所にやったって事?」

「はい」

「ちょ、ちょっと待って! それってホント!?」

 いきなり大きな声で会話に分け入ったのはグロリアスである。

 ビュルトはグロリアスの方に向いて答える。

「王女御自身が、そう仰られていましたから間違いないと思います」

 グロリアスは、茫然となり頭を抱えた。

「あの凶暴人形ったら、何て事を!?」

「何か、不都合な事でも…」

「大有りよ。子供人形を他人に譲ったり、売買したりするのは法律で禁止されているの」

 法律と聞いて、マーレットはハッと思い出した。

「人形生物保護法に書かれて有ったわねぇ? 子供人形の保護と闇取引防止の為に禁止されてるって」

「あの親人形が行なった行為は法律違反だわ! マーレット、あの人形に法律の事を教えていなかったの!?」

 さえない顔でマーレットは答える。

「教えられる環境じゃなかった事ぐらい、グロリアスには分かっているハズよ。子供人形が来てから私への態度が手のひらを返したように変わっちゃったし、マニュアル本なんか全く読まずに、あのコは自分で破いて捨ててしまったんだから」

「そうだったわね」

 王女の思いがけない行動にグロリアスは憤りを感じている。

「ブラウン先輩はずっと、王女と暮らしていたみたいですね?」

 ビュルトから尋ねられ、マーレットは暗い顔をして語る。

「しかも、王女とは知らずにね。最初は穏やかな生活だったんだけど、子供人形たちがウチへ来てから地獄と化しちゃったわ」

「地獄と化したとは?」

「毎日毎日、酷い虐待を受けていたの」

「先輩が?」

「そう。主人で有るハズのこの私がね」


「…」

 ビュルトは頭の中が混乱しそうになった。

 エルーナ王女から聞いた事と話しが違うからだ。

 どっちの言い分が正しいのか?

 マーレットの言い分が正しいのかもしれないとビュルトは思った。

 エルーナ王女は嘘ばっかり付く事は前々から分かっている。 

 Gホテルで語った事も、きっと嘘なのだろう。

 グロリアスがビュルトに質問する。

「どうしてあの親人形は、子供人形を手放したのか? 理由聞いてる?」

「王女の話しでは、お嬢様たちの方がフリーラムランドから離れたくないって駄々をこねていたから…、素直にその気持ちを受け入れてあげたとの事でした。王女御自身は何とか一緒に連れて行きたいと説得されていたようですが、お嬢様たちの意志が強くて気持ちを変える事が出来なかったようです」

 マーレットはズバッと言う。

「それは…、嘘ね」

「嘘?」

「殆ど家の中で生活してて母親の方ばかり向いている子供たちが、外の世界の事なんて知るハズがないわ。必要な事も教えられていなくて、物事の判別が出来ないしね。何も知らないあのチビちゃん人形たちがフリーラムランドから離れたくないって言うなんて、ハッキリ言って有り得ない」

「では何故、王女はお嬢様たちを手放したのでしょうか?」

 グロリアスが推理する。

「あの身勝手な凶暴人形の事だからねぇ、どうせ又…、良からぬ事でも考えていたんじゃないの?」

 マーレットがビュルトに質問する。

「北の魔界へ出発する前、あの母親人形に何か変わった事は無かった?」

「そう言えば…、王女は前の日の夜中に…、私と一緒に来た警護人2人と一緒にどこかへ出かけていたのを、王女が一時宿泊したGホテルの従業員が目撃しております」

「そんな夜中にどこへ?」

「細かい行き先は不明ですが…、ジゼル山がどうのこうの言ってたみたいですよ。3人は丸カゴを3つ持ち出してコッソリとホテルの裏口から出ていった模様です」

「丸カゴって何かしら?」

「その中に子供たちを入れたんじゃないの?」とグロリアス。

「丸カゴはいずれも…、お嬢様たちのベッドだそうですよ。毛布が被せて有ったみたいで、しばらくしてホテルへお戻りになられた時は全て空になっていたとの事です」

「ジゼル山って殆ど、人は住んでいない所よね?」

 グロリアスの話しかけにマーレットは返事する。

「あそこはロベリア峡谷を中心に森が広がっているし、とても人は住めるような所じゃないわ」

「凶暴人形たちがそこへ行ったって事は、子供たちをロベリア峡谷のどこかへ捨てた…」

「目的はそれだけしか無いわね」

 子供たちを捨てた? まさか! ビュルトは2人の会話を聞いて自分の耳を疑う。

「とても大事そうにされているお嬢様たちを、王女はお捨てになられたと言うのですか?」

「そうよ」とグロリアスはハッキリと言う。

「まさか、信じられない」

 マーレットがクールな表情で言う。

「確かにエルーナ王女は子供たちを大切にしていたわよ。親らしい事は何もしていなかったけどね」

「何も、していないとは?」

「躾もしていなかったし、勉強らしい事も何一つさせて来なかった。ずっと甘やかして来て、その上贅沢三昧の生活をさせて来たから…、子供人形たちは何も知らない怠け者の集まりになってしまったのよ。子供人形としての最低限の知識も生活態度もダメ。読み書きも全くダメ。

 毎日、食べて遊んでばかりの生活だったしね。自分の子供たちは世界一優秀な宝物だって、王女様はいつも自慢していたけど…、実際はね…」

「正反対だった…」

「っそ」

 王女の生活ぶりを聞かされてビュルトは呆気に取られ、ただただ苦笑いするだけである。

「し、信じられません」

 こう疑いの顔を見せつつも、ビュルトは内心では納得していた。


 グロリアスが言う。

「だったら、ずっと前に撮った隠し映像を見せて上げてもイイわよ? 王女様のマーレットへの虐待行為が映っているし、子供人形たちの日頃の生活の様子も記録されているから」

 ビュルトは何も言わず、頭の中を整理した。

「機会が有れば、映像をジックリと拝見させて頂きましょう」

 マーレットが立ち上がった。

「どうするグロリアス? 子供たちを捜す?」

「もっちろん。無断放棄となれば、人形管理局の人間として黙って見過ごすワケに行かないもんね」

「じゃあ、2人で捜しましょう。アンタのクルマに便乗させてよね?」

「オッケー」

 2人はバンドンやビュルトに出かける旨を伝えた。バンドンが隣の部屋から少し大きな松葉ほうきを持って来た。

「これを使え」と言って、マーレットにほうきを投げ渡す。

 ほうきをキャッチしたマーレット。

「これは?」

「魔法のほうきに決っとるじゃろ。これで空から捜すとイイ」と言ってマーレットに手渡す。

「ありがとうございます。借りて行きます」

 ほうきを手にしたマーレットはやる気満々である。

「マーレット、それで空を飛べるの?」

「空を飛ぶ魔法のほうきだからね」

「アンタも出来るんだ?」

「魔導師として、基本中の基本よ」とマーレットはお茶目にウィンクした。

 急ぎ足で店を出て行ったマーレットとグロリアス。



 続きます。

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