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王女は北の魔界へ! そして子供たちは…!

 24話目です。

 何も言いません…、

 読んでみましょう。

 そして後日…、

 

 夕方近くになって、北の魔界から魔王室の警護隊本隊がやって来た。

 エルーナ王女が7年ぶりに母国へ帰るのだ。

 王女は既にホテル側が用意した特別仕立ての衣装を着て帰国の準備をしていた。

 既に荷物や沢山のお土産類は貨物用の飛行馬車に積んである。


 そこへ、帰国手続きの為に昨夜から某所に出かけていたビュルトが顔を見せた。

「王女様、帰国の御準備は如何でしょうか?」

「準備は万端よ。いつでも出発出来るわ」

 ビュルトはふと、部屋内が静かなのが気になった。王女1人だけしかいないのだ。

 辺りを見回すビュルト。

「王女様だけですか?」

「そうよ」

「お嬢様たちは?」

「子供たちは引き取ってもらったわ」

「引き取った? 誰にですか?」

「或る、人たちにね」

「どのような人たちでしょうか?」

「ウルサイわねー! 誰でもイイでしょう!?」

 不機嫌な態度で返答されて、ビュルトは呆気に取られた。

「あ、ハァ!」

「何か問題でも有るのかしら?」

「王女様が大切になさっておられたお嬢様たちが他人に引き取られて行ったのでしょう? ちゃんと身元を仰って頂かないとダメです」

「子供人形をとても欲しがっていた街の人間の女性たちよ。その人たちは大切にしていた子供人形を失って、ずっと寂しい思いをしていたらしいのよ。だから私、その人たちに子供たちを引き取ってもらったの」

「何故、お嬢様たちを連れて帰らないのですか?」

「みーんな、フリーラムランドからは絶対に離れたくはないって駄々をこねていたの。

 色々と説得して、北の魔界での生活を理解させようとしたけれどダメだったわ。

 だから希望通り置いて行く事にしたってワケ」

「ではもう、お別れなのですね? お嬢様たちとは」

「仕方がないわ」と王女は寂し気な表情を見せた。

「あれだけ仲良しだったから、寂しいですよね?」

 悲しさをこらえる王女。

「いつかはこの時が来ると、覚悟はしていたわ。女性たちが連れて行く際、私は子供たちをシッカリと抱き締めてサヨナラを言ったけどね」

「お嬢様たちは何て、仰っていましたか?」

「ママと離れ離れになっちゃうのは寂しいけど、私たちは一生懸命頑張るから。ママも頑張って幸せになってね…って言ってたわ」

「母親である王女様思いの素晴らしいお嬢様たちですねぇ」

 王女と子供たちとの別れの状況を知って、ビュルトはチョッピリ感動した。

 同時に寂しさも込み上げて来る。

 せっかく出会った可愛い子供たちだから、国へ帰れば小さな王女様たちとして迎えられる。

 そして北の魔界の新たなるシンボルとなるし、多くの国民たちが再び癒される事になるのだ。

 他人に譲渡したなんて勿体無い話しだが、王女は王女なりに子供たちの純粋な気持ちを受け止めたのだろう。

 これ以上は何も追求しない事をビュルトは決めた。

 離れ離れになる寂しさをグッと我慢して、子供たちを送り出したのだから親として勇気ある行動と言えよう。

 そんな心ある王女をビュルトは褒め称えるのだった。


 王女はホテルのスタッフたちに見送られる中、迎えの馬車に乗り込んだ。

 馬車が動き出すと、大勢のスタッフたちが手を振り始める。

 王女は窓を開けて手を振り返すと思いきや、ツンとした表情で車内のカーテンを閉めてしまった。

 それでもスタッフたちは健気に手を振るのだった。

 王女を乗せた馬車を初め、数台の馬車はホテルを後にした。

 街の郊外を出ると、夕焼けに染まる空を飛び始めて北の方へと去って行く。


 王女を無事、送り届けると言う一仕事を済ませたビュルトは安堵の表情でため息を付いた。

 まさか王女に騙されているなんて、気付かないままにだ。


 実際の状況はだ。

 子供たち…アリル、チュチュ、ニュニュ、ミュミュ、ルル、ララ、レレ、モモ、モク、フラワー、アン、ピッチ、ピピ、ローラ、ポポ、ピュピュ、スィーツ、プリン、ココ、ビノ、シー、ミルク、メイ、リーズル、ユーシィ、マガモ、ロコ、メイベル、キディたち29体は、市内から数十キロ離れたジゼル山の麓に広がる、ロベリア峡谷の深い谷底の岩場でバラバラの状態で変わり果てた姿になっているのだから。



 昨夜の事だった。

 キディを初め、可愛い子供人形たちはお風呂に入ってサッパリした後、豪華な夕食をお腹イッパイ堪能した。

 子供人形たちにとっては、いつもと変わらぬママとのくつろぎの時である。

 ただ違うのは、この夜の食事はママとの最後の晩餐会。

 死出の旅立ち前の別れのパーティだって事だ。

 子供人形たちは誰もそんな状況になるなんて気付く事もなく、エルーナ・ママとの楽しいひと時を楽しんでいたのだった。

 食事の後は子供人形たちは、エルーナ・ママと遊んだりして楽しんだ。


 可愛いパジャマに着替えた子供人形たち。

 3つの真新しい丸カゴ形の子供人形用ベッドにそれぞれ、もぐり込んだ。

中は温かくてフカフカのクッション布団が敷き詰められ、柔らかい子供人形用枕が並べられている。

 エルーナ・ママは優しい笑顔で1体1体に声を掛けながら、ゆっくりと毛布を掛けた。

 オルゴールを鳴らし始めるエリザベル・ママ。

 可愛い音楽を聴きながら、子供人形たちは段々と夢の世界へと入って行く。

 明日の夜はママと一緒に新しい国へ出発!

 ママが作った新しい国って、どんな所かしら?

 王女様として大きなお城に住めちゃう。

 ステキなドレスを着て、美味しい物をお腹イッパイ食べて、思いっきり遊ぶの。

 何だか楽しそう!

 ママ大好き!

 私たちを幸せにしてくれるママって、とても凄いわ!

 皆、ワクワクした気分で夢の世界へと入って行く。


 遊び疲れたのか、子供たちは直ぐに寝入った。

 キディも懐でママのオッパイをしゃぶっていたが、いつの間にか寝入っていた。

 クゥー、クゥー…、子供たちの安らかな寝息が聞こえる。



 そして真夜中…、


 ビュルトと一緒にフリーラムランドへ来た警護人…、ジャークとズルツァーの中年男がソッと部屋に入って来た。

 王女の方は外出着に着替え終え、出かける準備を済ませていた。

「すぐに、乗せなさい」と2人に指示を出す王女。

 ジャークが心配した表情に尋ねた。

「大丈夫ですかい王女様? ガキどもが途中で目を覚まして騒ぎ出すって事は、ねーでしょうね?」

「騒ぎ出したら、手に負えねーって言う心配は?」とズルツァー。

「大丈夫、心配ないわ。このコたちは一旦寝入ったら簡単には目を覚まさないから」

「だったら安心だ」と、ズルツァーは納得した。

 2人は3つの丸カゴとオルゴールを持って王女と共にホテルを抜け出した。

 駐車場に止めていたクルマに乗り込み、すぐに走り出す。

 今夜は月明かりがキレイな空だが、時折吹く風がとても冷たい。



 街を抜け、向かった先はジゼル山である。

 殆どクルマが通らない深夜の国道を登って行き、ロベリア峡谷に差し掛かる橋に到着。

 クルマを下りて辺りを見回す王女。

 ビュウッと吹く風に身を震わせ、羽織っているコートで寒さを凌いだ。

 橋を欄干の方へ歩いて行き、下の方に目をやってみる。

 自分たちがいる橋の上は月明かりで照らされて明るいが、下の方は真っ暗闇状態。

 目も眩むような高さだから、下の様子は分からない。

「カゴとオルゴールを持って来なさい!」と2人に指示を出した王女。

 2人はすぐにクルマから3つのカゴを下ろして、王女の元へ持って来た。

「どうぞ」

 カゴを王女に足元辺りに置いた2人。

 王女はカゴの1つの手に取って、橋の欄干に置いた。

 毛布を取り、子供たちを見入る王女。

 可愛い寝顔でスヤスヤと寝ている姿が愛らしいが、今の王女にはそんな思いはなかった。

 我が子たちへの愛情が殆ど失せてしまったのだ。

 飽き飽きしているし、面倒見るのがバカバカしくなっちゃった。

 それに、国へ帰るにはハッキリ言って邪魔な存在。

「子供たちはね、国のシンボルだし。みんなの心を癒してくれる可愛い存在なのよ」

 ずっと以前、姉のソフィアがこう言っていたが、エルーナには理解し難いセリフなのだ。


 さーてっと…、

「オルゴールを鳴らしてちょーだい」

「へーい」

 ズルツァーはオルゴールを持って来ると、ハンドルをグルグル回して蓋を開けた。

 いつも寝る時に掛けている子守唄のメロディーが流れ始める。

 王女は先ず、ミュミュを手にした。

 衣類を全て剥ぎ取り素っ裸にして、オデコに軽くキス。

「さよなら、私だけの可愛い宝物。元気でねー♪」と言って、そのままポイッと放り投げた。

 眼下の谷底へと落ちて行くミュミュ。

 王女は次々と子供たちを手に取って衣類を剥ぎ取り、そのまま放り投げ続ける。


 嗚呼…



 子供たちが…



 小さな可愛い女の子人形たちが…



 次々と木の葉のように舞いながら深い谷底へと落ちて行く。


 丸カゴは3つとも空になってしまった。

 残ったのはキディだけだ。

 衣類の胸元を開け、懐でスヤスヤと眠っているキディを強引に掴み出す。

 するとどうだ! 

 「ウィアン! ウィアン! ウィアン! オッピャイ! オッピャイ! チュッチュー! チュッチュー!」

 何と、キディが目を覚ました。

 両手両足をバタバタさせながら泣き出す。

 ずっと赤ちゃん状態で育てて来たからだろう。

 キディは今では、エリザベル・ママ…エルーナ・ママのオッパイをしゃぶっていないと寝付けられない状態になっているのだった。

 キディらしくて可愛い。

 

 冗談じゃない!

 王女にとっては苦痛この上無いぐらい気持ち悪い気分なのだ。

「キディ! いつまで馬鹿ヅラして、オッパイばっかり吸ってんのぉッ!?」

 キディを睨み付ける王女。

 キディの方は涙目をパチクリさせ、ジッとママの目を見つめる。

 指をくわえてキディは甘える。

「ミャミャー、オッピャーイ、オッピャーイ。チュッチュー、チュッチュー」

 バシーン!

 初めて我が子にビンタを浴びせたエルーナ・ママ。

 キディは更に泣き出す!

「ウィアン! ウィアン! ウィアン!」

 そんな泣き虫キディに対し、ママは言った。

「お前はホント、オッパイの事しか考えないのねー?」とまあ、冷たい言い草。

「オッピャイ! オッピャイ! チュッチュー! チュッチュー!」

「イイ加減にしろぉッ!!」

 王女はキディを橋の欄干に何度も叩き付ける。

 更にビンタの嵐である。

「ゴメンニャチャイ(ごめんなさい)! ゴメンニャチャイ! ゴメンニャチャイ!」

 狂ったように泣きじゃくるキディ。


 王女はキディを自分の顔に近づけて…



「お前ももう、私の子供じゃないわ。コレでサヨナラね」

「みゃ、ミャミャー!?」

 サヨナラと言う言葉にキディは衝撃の反応を示した。

 目をカッと見開き、身体を振るわせる。

 呆れた顔をして王女は更に言う。

「お前って…、何にも出来ない…、オッパイの事しか考えないガキなのね? こーの、役立たずの能無し人形!」

 言った!

 絶対に口にしてはならない、子供人形を誹謗中傷する酷い言葉!

 マニュアルにも重要禁止事項の1つとして書かれてあるぐらい、やってはイケない行為なのだ。

 暴力虐待行為はもってのほかだし、寒い屋外で素っ裸にする事(子供人形たちは特に寒さに弱い)もNGである。

 育児教本とか、マニュアルや説明書類には全く目を通してなくて捨ててしまっているエルーナ・ママだから、そんな決まり事なんて知るハズがない。

 ママからの禁句を言われて茫然となるキディ。

「ううー…、ウィアーン! ウィアーン! ウィアーン!」

 一際大きな声で泣き出した。王女は優しいママの顔をして別れを告げた。

「サヨナラ…、世界一の赤ちゃん」

 こう言って、キディのオデコにキス。

 衣装を全て剥ぎ取ると、そのまま空中に抱えた。

「チャムイ(寒い)! チャムイ! チャムイ! ミャミャー! ミャミャー!」

 寒さに震えるキディ。

 手が離され、そのまま谷底へと落下して行く。


 ミャミャー!



 ミャミャー!



 ミャミャー!




 ミャミャー…!



 我が子の声がやがて聞こえなくなった。



 シーン…



 辺りが再び静寂に包まれる。

 強く吹く冷たい風。

 王女は谷底をしばし見つめた。

 そして高笑い。

「オーホホホホホ! オーホホホホホ!」

「…」

 そんな王女を近くの木々から見ている四足の動物がいる。

 夜でもキラリと光る目で回りの様子を見る事が出来るソイツは、厳しい眼差しで王女の一挙一足を注視していたのだ。



 王女たちが再び馬車に乗り込んで立ち去ると、ソイツは橋の所へと出て来た。

 橋の欄干の路面辺りにビリビリに破れた小さな衣装が散らばっている。

 ソイツは衣装類を鼻で嗅ぐと、欄干の隙間から下の方に目をやった。

 飛び降りる気なのだろう。

 身体を屈め、一気にジャンプ!

 背中に生えている翼をバタバタと羽ばたかせて、空を飛んだ!

 そしてそのまま、眼下の暗い谷底へと急降下して行く。


 谷底はゴツゴツした岩場が広がり、小さな川が流れていた。

 辺りは真っ暗だが、ソイツの目は辺りを視る事は可能なのだ。

 比較的大きな岩の上に着地したソイツの目に映ったのは、バラバラに砕け散って辺りに広く散乱している小さな人形死体の数々である。



 とうとう、子供たちまでも手を掛けてしまったエリザベル…エルーナ王女。

 果たして、今後は如何に?

 続きます。

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