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エリザベルを釈放?

22話目です。

 マーレットの自宅では警察による現場検証が行なわれ、マーレットとグロリアスは捜査担当者から色々と聴取を受けた。

 次の日も警察へ出向いて色々と聴取されるから、ゆっくりと休むヒマもなかった。


 しばらくして時間が空いたので、2人は市内郊外の教会に足を運んだ。

 スザンヌ主任を初め、犠牲となった人々や人形たちの遺体が安置されている場所である。

 教会内の特別礼拝室が臨時の遺体安置場として使われていた。

 広い部屋内に遺体が収容された棺がズラリと並び、警官隊や一般市民、人形保護施設関係者、そして人形生物たち…と、各グループ事に分けられている。

 犠牲者の中にはディック=ハミルやミミナ=ステラ、そして41号ミッシェルや47号イメルダたちも含まれていた。

 親しかった者たちの変わり果てた姿を見て、グロリアスは無念の思いで心が張り裂けそうになる。

 エリザベルへの怒りが余計に込み上げて来るのだ。

 ディックとミミナは職場の優秀な後輩だった。

 亡きスザンヌ主任も絶対の信頼を寄せていたぐらい、2人の働きぶりには定評が有ったのだ。

 プライベートでは2人は恋人同士。

 結婚を半年後に控え、共に将来への希望を持って前向きに頑張っていたものだった。

 その仲良しの2人も変わり果てた姿で棺の中。

 帰らぬカップルとなってしまった。

 隣には同じように結婚を控えていた41号と47号が、変わり果てた姿で小さな棺に納められている。

 マーレットは遺体の数々を目の当たりにして悔しい思いを見せた。

「エリザベルったら! 派手にやってくれたわね!」

 エリザベルに対する怒りを強めるマーレット。グロリアスは言う。

「殺人鬼って言うのは、エリザベルみたいな凶暴人形を言うのね。マーレットが犯罪者だって言うなら、エリザベルはそれ以上かな?」

「犯罪者って言うより、テロリストって言ったらイイんじゃなーい?」

「エリザベルの場合は、それを上回っているって」

 テロリスト…

 エリザベルの凶暴ぶりに対して2人は同じ認識をするのだった。


 スーツ姿の1人の中年男が2人の所へやって来た。

 マーレットは男の顔を見るなり、凛とした表情で頭を下げた。男の方も凛とした表情でマーレットに注目し、固い握手を交わした。

「お久しぶりです、ブラウンさん」

「局長もお元気のようで」

 マーレットと、人形管理局のアースル=バーソロン局長が互いに顔を合わせるのも久しぶりである。

 マーレットが231号エリザベルを我が家に迎え入れた時以来、局長とも親交を深めている。

 その後は、局長自身が公私共に忙しくなってマーレットと連絡さえ取らなくなっていた。

 せいぜい、年に二回ぐらいの割合で電話とか便りを交換するだけの状態が続いていたのだった。

 もっとも、マーレットの自宅に子供人形が来てエリザベル自身の態度が変わってからは便りの交換させ困難な状態になっていたのも然りである。

「貴女も色々と、231号の事で大変でしたね?」

 局長もマーレットのこの1年間の悲惨さをグロリアスから知らされて、ずっと心配してくれていたようだ。

 人形たちを管理する立場として、状況を把握出来ていなかった事とアフターフォローを怠っていた事を悔やむばかりである。

「今度こそは死ぬんだって何度も思っていましたけど、何とか生き永らえる事が出来ました」

「何よりも、貴女が無事である事が嬉しい限りです」

 局長の今の一番の心境である。


 マーレットは棺の数々を見渡しながら話しを続けた。

「私はどうでもイイとして、大切な職員の方々や人形たちが犠牲になったのが残念ですわ」

 同じように局長やグロリアスも棺の数々を見渡す。

「同感です。スザンヌ主任を初め、殉職した者たちは優秀な部下たちばかり。保護施設で暮らしている人形たちも頭が良く、純粋で素直な人形ばかりでしたから犠牲になった事は大きな痛手です」

 グロリアスが局長に尋ねた。

「保護施設は、どうなりますか? 代わりの職員を選出するのは大変だと思いますし…」

「あの施設は、当分の間は閉鎖するつもりだよ」

「閉鎖…ですか?」

「約30体いた人形たちの半数が犠牲になったんだ。惨劇の場所をそのままにしておくのも、どうかと思ってね。無事だった人形たちは隣町の施設に移ってもらう事にして、施設そのものは完全閉鎖したい」

「閉鎖はいつ?」

「明後日の緊急役員会議で決定次第、実施する事にしよう」


 3人は外へ出て、温かい日差しを浴び始めた。

「231号は早急に、解体処分すべきだと思います」

 グロリアスの強い希望である。局長も同じ気持ちだと思いきや、意外な返答が出て来た。

「残念ながら、それは無理のようだ」

「え? 無理?」

 局長に注目するグロリアスとマーレット。

「政府機関からの指示で、231号は釈放されるみたいなんだ」

「ええー!?」

 釈放と聞いて、グロリアスは目の前が真っ暗になった。

 せっかく逮捕出来たと言うのに釈放とは、どう言う事!? 理解出来ない!

 動揺するグロリアスの代わりに、マーレットが理由を伺う。

「何か、特別な事情でも?」

「231号の身分が高すぎるからです」

「身分が高いって事は…、エリザベルは北の魔界から来た王女エルーナって事をご存知なのですね?」

「最初は231号自ら本当の身分を名乗っていたようです。警察の方では最初、冗談を言ってると思って気にしなかったみたいですが、本国の政府機関からの連絡で本物のエルーナ王女である事が分かったと言うワケです。何故、フリーラムランドに来ているかは不明ですけど」

 グロリアスが横から口を挟む。

「231号が北の魔界の王女だからと言って釈放されるなんて、理解出来ませんけど?」

 マーレットが説明した。

「外国の政府関係者とか王族の人たちを逮捕したり裁いたりする事は出来ないのよ。特に、北の魔界の魔王族の人間や人形はね」

「あれだけの大きな犯罪を犯しても?」

 局長が補足説明をする。

「北の魔界の魔王族関係者がフリーラムランド国内で犯罪を犯しても、我が国の警察の介入は厳禁なんだ。逮捕拘束、法による裁きの権限は全て北の魔界に有ると言ってもイイ。そう言った決まり事を守らなければ、北の魔界を敵に回す事になる。当然、フリーラムランドは一夜にして焦土と化すだろう」

 オーバーに言っているのではない。

 世界的に圧倒的な軍事力を持つ北の魔界は、フリーラムランドにとっては親密な友好国で有ると同時に脅威的な存在。

 相手を怒らせれば、攻撃を受けて国土自体が焦土と化すか占領されてしまうのだ。

 実際に、或る小さな国が攻撃を受けて壊滅している。

 魔力をも駆使した強大な力を持つ国だから、周辺国は当たり障りのないよう穏やかに国交を続けているのが現状である。

「じゃあ私たちは、黙って見る事だけしか出来ないってワケですね?」

「犠牲になった者たちにとっては無念な事だが、そうするしかない」

 国の今の立場を知って、グロリアスは余計に暗い気分になってしまった。


続きます。

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