表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/32

マーレットの怒りのパワー

21話目です。

 爽快な気分で屋敷内に入って来たエリザベル。

 リビングへ通じる廊下の所で素っ裸のままのマーレットと鉢合わせになり、思わず足を止めた。

 怖い顔で自分を睨みつけているから、エリザベルは引いてしまったのだ。

「何だお前は? 邪魔だから、そこをどきなさい」

「…」

 マーレットは何も言わず、仁王立ちして動かない。

「聖なるご主人様の命令よ! 聞こえないの? そこをどきなさい!」

 マーレットはニヤリと笑みを見せて、一言つぶやいた。

「嫌だ…って言ったら?」

「お前も! スザンヌのようになりたいの!?」

 エリザベルはカッとなって、マーレットの方へ歩み寄った。


 すると、マーレットは右手を出してエリザベルの方にかざし始めた。

 どうしたのだろう?

 エリザベルの歩調が止まり、足が動かなくなった。

「ロンデリュズ、イズモンドゥル、エリメント、フィラー…」

 マーレットが呪文らしきセリフを口に出すと、エリザベルの身体が揺れ始める。

「な、何?」

 身体の自由が利かなくなって、エリザベルは恐怖で震え出す。

 何と着ている衣類がビリビリと破れ出し、エリザベルも完全に素っ裸状態となってしまった。

「…ラージスタ、アーギェル、ミストレイル、イスターン!」

 呪文らしき言葉を唱え終えると、マーレットは両手をクロスさせて一気に左右に開く動作を見せた。 するとどうだ?

 何か目に見えない力で押されたようにして、エリザベルは後ろの方へ跳ね飛ばされたではないか! 


 玄関のドアを突き破り、そのまま屋敷の外へと放り出されたエリザベル。

 家の様子を伺おうとするグロリアスと45号ローズマリーの前で路面に転げ落ちてしまう。

「ハァッ!?」

 思わぬ光景が目に飛び込んで、グロリアスは驚いて腰を抜かす。

 更に驚いたのは、マーレットも素っ裸のまま屋敷から飛び出して来た事だ。

 当のマーレットはグロリアスがいる事も気が付かず、エリザベルに対して不思議なパワーを掛け続けた。

 エリザベルは立ち上がり、その場で膝を交互に上げながらダンスを踊り始める。

「止めて! 止めて! 止めて!」

 身体が勝手に動くから、エリザベルはもうパニックに陥っていた。

 屋敷の中から小さな何かが29個、スピンしながら空中を飛んで来る。

 素っ裸の子供人形たちである。

 同じように、マーレットから不思議なパワーを掛けられているのだろう。

 キディを初め、子供人形たちが逆さま状態でスピンしながら浮かんでいるのだ。

 子供人形たちはエリザベル・ママの回りを輪になってグルグルと回り始めた。

「ウィアン! ウィアン! ウィアン! ウィアン!」

 どのコも、パニック状態で激しく泣いている。


 マーレットは怒りを込めて言う。

「今まで散々、暴力振るって来たわね!? 私は人形ヘルパーとして、責任持ってお前の面倒を怠り無く続けて来たつもりよ! なのにお前ったら! 子供たちがウチへ来てから、横柄な態度を取ってグータラな生活をして来た! 子供たちに対しては親らしくキチンとした躾もしていないし、お前はいったい何様のつもりなの!? 気品溢れる高級人形!? 私が何も出来ない下等な生き物!? なーにそれ!? 外に出て稼いでもいないで遊んでばかりいる怠け者が、エラソーに御主人様ヅラしてホザくんじゃないわよ!」

「お前が言うな! お前が言うな! 居候のお前が言うな! 私は北の魔界の聖なる王女だぞ! 下等な人間が聖なる私の面倒を見るのは、当然の事なのだ! お前は、そんな名誉な事が分からないのか!?」

「そんな勝手な理屈なんて、分からないわねー!」

「お前は何て、頭が悪いのだ!? 凶悪事件を引き起こした犯罪者だから、やはり頭が悪いのか!?」

「この馬鹿は! いつまで、昔の事ばかりグダグダ言うのかしら!? 36号事件の事は、とっくに済んだハズよ!」

「私は許さない! お前を許さない! 未来永劫に亘って、お前を恨んでやる! お姉さまの辛く悲しい分までも恨んでやるから、覚悟してなさい!」

「結構よ! 私の事、許さなくても結構! ずっと私を憎んでなさい! 私はお前をもう、許さないから! いくら私が犯罪を犯した身とは言え、お前から虐待行為を受ける筋合いは無いハズよ!」

「お前は私からイジメを受ける、名誉な立場である事を弁えるべきなのよ!」


 ため息付くマーレット。

 ダメだこりゃ。

 呆れた思いでパワーの施しを中断した。

 エリザベルは身体の動きが止まって、勢いで転倒してしまった。

 子供人形たちは一斉に、地面に落下して転げ回る!

 目を回し、痙攣を起す子供人形たち。

「お前って、完全に思考回路が狂ってるわね! 王女様ならもうちょっと、まともな事が言えないのかしら!?」

 エリザベルは声を振り絞って叫ぶ。

「ギズモォーン! ギズモォーン! 私や可愛い子供たちを助けなさい! ギズモォーン! ギズモォーン!」

 すると、例の魔獣ギズモンの大群がどこからともなく現われたではないか!

「ギャギャギャギャギャギャ!」

「聖なる小魔獣たちよ! そこにいる人間を思う存分、噛み殺すとイイわ!」

「ギャー!」

 ギズモンたちはマーレットの顔を見るなり、一斉に取り囲んだ。

 マーレットの緊張して息を呑み、その場に立ち尽くす。

 グロリアスと45号は身の安全を考えて場所を変え、少し離れた所から様子を伺い始めた。

「又、あの怪物たちだ! マーレットも噛み殺されてしまうってワケ!?」

 良き友を助ける術も無く、グロリアスは歯がゆい気持ちで見るだけである。

「心配ないわよグロリアス。マーレットなら、この危険な状況を切り抜けられると思うから」

「ええー?」

 意外な事を耳にして、グロリアスは45号の方を見やった。

 とても不安気になっているグロリアスと違って、45号の方は冷静になっているのだ。

 この状況がどんな風に展開されるのか?

 分かっているのだろうか?


 小魔獣たちのギラリと光る鋭い視線が一斉に集中している。

 牙をむき出し、鋭い爪を立てて態勢を整えているギズモンたち。

 マーレットは辺りを見回しながら相手方の様子を注視した。

 更に視線を周囲の方向に向ける。

 そこで或る場所に目を止めた。

 その方向を思いを寄せ始めるマーレット。

 近くの工事現場に重ねて置いてある材木に注目したのだ。

 材木の1本が宙に浮き、マーレットの所へフワリと飛んで来た。

 材木を手にしたマーレット。

 長さが1メートルぐらい有る、その材料を手にすると自らの視線辺りで突き出して水平に構えた。

 材木はCG映像の如くゆっくりと形が変化して、1本の杖に変身する。


 そして杖を手に構えの態勢に入った。

「サァ、来るなら掛かって来なさい!」

「ギャギャー!」

 ギズモンたちは一斉にマーレットに飛び掛った。

 マーレットは怯む事無く、素早い杖さばきでギズモンたちを次々と打ち倒して行く!

 杖を巧みに振り回しながら打ち倒して行くのだ。

 打ち飛ばされるギズモンたち。

 マーレットは杖の振り回しを止め、もう片方の手をサッとかざす。

 ギズモンたちが一斉に後方へと跳ね飛ばされた!

 他のギズモンたちが次々と襲い掛かって来るものの、マーレットのハンドパワーによって木の葉のように宙を舞うのだった。

 次々とやって来るギズモンの大群。

 拉致が明かないと悟ったマーレットは叫ぶ。

「小魔獣たちよ! この地から、すぐに去れー!」

 杖の根元を足元の路面に強く突いたマーレット。

 そこから黄金の光の輪が現われて周囲に大きく広がって行く!

 光の輪に削られようにしてギズモンたちはあっと言う間に消滅した。

「ま…、マーレット…」

 この時、グロリアスは不思議な光景を目の当たりにした。

 杖を使ってギズモンたちを追い払ったマーレットが、特別な姿に見えたのだ。

 自分と同じ背丈で、気品が溢れる美しい婦人の姿にである。

 マーレット=ブラウンの本来の姿に違いないとグロリアスは思った。


 騒動は終わった。エリザベルは座り込んだまま茫然となり、子供人形たちは気を失ったまま。

 辺りはシーンと静まり返ったのだ。

「マーレット!」

 グロリアスが声を掛けて来た。振り返るマーレット。

「あらグロリアス! 来てたの!?」

「どうしたのマーレット!? 何だか不思議なパワーを使ったみたいだけど…」

「何だか分からないけどね。エリザベルがウチに帰って来て又、暴力振るっちゃうもんだから頭に来たの。そしたら身体がカーッと熱くなってね。不思議とパワーが使えたってワケ」

 45号がヒョコッと顔を見せた。

「それは魔法ね? 魔法が使えたのね?」

「あーら! ローズマリーも来てたのぉ?」

 45号を抱き上げギュウッと抱き締めたマーレット。

 45号も嬉しそうだ。

「そ、それよりも! アンタ、裸! 裸!」

 グロリアスの方は顔を真っ赤にしてハラハラしている。

「あ、そうだったわ! 忘れてた!」

 グロリアスに言われて、マーレットは自分が素っ裸である事に気付いた。

 くしゅん! クシャミをしちゃたマーレット。

「早く服を着なさいよ! 風邪引いちゃうわよ!」とグロリアスが急かす。

「そ、そうね!」

 マーレットは急いで屋敷内に戻り、大慌てで衣類を着た。



 しばらくして警察がやって来た。

 エリザベルは素っ裸のまま逮捕されて身柄を拘束され、子供人形たちは檻箱に入れられて一緒にクルマに乗せられた。

 マーレットやグロリアス、45号が見送る中を警察の護送飛行車は屋敷を後にした。

 護送飛行車に乗せられる寸前、エリザベルは悔し泣きしながら捨て台詞を吐いた。

「よくも! この私をイジメてくれたわねー!? お母様に言い付けてやるッ! お母様に言い付けてやるッ!」

「お母様に言い付けて、私をどうするのかしら?」

 マーレットの方は落ち着いていて、エリザベルを冷ややかに見ていた。

「お前は北の魔界に連行されて死刑になるのよッ! 凶悪事件を起しておきながら、王女である私を苦しめた罪は重いって事を分からせてやるわッ! 私の大切な宝物である可愛い子供たちをも苦しめた事もね! お前は、死を持って私たちに許しを乞うのは避けられない事を覚悟しなさい!」

 何だか随分と深刻な事に思えるが、マーレットの方は不安になる事も無く言葉を返す。

「上等じゃなーい? 死刑だって何だって結構。私は逃げも隠れもしないから! 国へ帰る事になったら、王女様の偉大なお母様にお伝え下さい。どうぞ煮るなり焼くなり、お好きなようにってね」

「お前はホント、情けない人間ね!」

「お互い様でしょう?」

 エリザベルは泣きながら護送飛行車に乗せられた。


 


続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ