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愛する人形パートナー

2話目です。

 そして…、あれから11年…、


 フリーラムランド…


 寒い北の某・地方に位置する自然豊かな国であり、色んな種族がそれぞれの地域で平和に暮らしている国でもある。

 この国では、一部の者たちが人形たちをパートナーとして養っている。

「人形のパートナーって?」

 恐らく、こんな疑問を持つに違いない。


 フリーラムランドでは自ら生命や意思を持ち、動いたり喋ったり食べたり排泄したりする生きた人形たち…人形生物が人間社会の中で同じように平和に暮らしているのだ。

 人形生物と言っても大小様々である。

 姿形は人間に近いけれど、上は等身大から下は15㌢前後の小人までと色んな背丈の人形たちが存在するのだ。

 人形たちは法律上、自立生活が許されていないから必然的に人間たちと暮らす形を取っている。


 エリザベルもその1体で、女性資産家マーレット・ブラウンの屋敷で暮らしていた。

 等身大であり、小柄なマーレットよりも背が高くてスラリとした体格の美しい人形生物エリザベル。

 小さな顔…

 髪はカールがかった金髪のロングヘヤー…

 パッチリした目…

 キリリと引き締まった口元…

 人間の女性にも負けない美しさを誇るのだ。

 実際に、数多くの人形愛好者たちを魅了しているのだから大いに自慢出来る事であろう。


 1人ぼっちのマーレットにとってエリザベルは唯一の家族。

 マーレットはエリザベルを愛し、大切にしていた。

 世話に必要な金銭を惜しみなく使い、夢のような贅沢な生活環境を与えているのもエリザベルを愛するが故の施しである。

 エリザベルにとって、人形冥利に尽きるとは正に今の状況を指すのだ。

 しかしである。

 これだけ裕福に暮らすエリザベルも、心の隙間を満たす事が出来ないでいた。

 いつも、1人ぼっちだからだろう。

 人形仲間がいなくて寂しい思いをしていたのだ。


 夕食の後片付けを済ませたマーレットは人形部屋エリザベルのプライベートルームに入り、ゆっくりと語り合った。

「寂しい?」

「エ?」

 安楽椅子で1人、雑誌を読んでいたエリザベルが顔を上げマーレットに振り向く。

「前から気になっていたんだけど、エリザベルはずっと1人ぼっちでしょう? 彼氏どころか、友達もいない。そんなアナタだから、寂しい思いをしているんじゃないかって私は思うの」

 エリザベルは笑みを見せて答える。

「私ハ、平気。マーレット様ト一緒ダカラ、寂シクハ、アリマセン」

 マーレットを心底から慕うエリザベルらしい返事である。

 でもマーレットには、それが本心で有るとは思ってはいなかった。

「無理しなくてもイイのよ。エリザベルが孤独で寂しい思いをしている事ぐらい、私には分かっているの。自分の気持ちぐらい正直に打ち明けなさい」

「マーレット…様」

 自らの心の中に熱い思いがひしひしと沸き上がってくるのをエリザベルは感じた。


 マーレットはエリザベルに対し、こんな提案を示した。

「人形のボーイフレンドでも、探してあげるわ」

 マーレットの提案に、エリザベルは反応を見せた。


 が…


「男ナンテ…、イラナイ」

「え? いらない?」

「イラナイ。必要ナイ」

 意外な返事である。

 エリザベルは人間で言えば、二十歳前後の娘。

 人間と同じように、ボーイフレンドの1人や2人欲しいハズだが…

「どうして、いらないの?」

「興味ナイ、カラ」

「珍しいわね? アナタみたいな女性だったら、異性に対して特別な感情を持つハズよ」

「デモ、私ニハ、ソンナ気持チハ、湧カナイノ」

「じゃあ、何が欲しいのかしら?」

 エリザベルは自分が読んでいた雑誌のページの開きをマーレットに見せた。

「コレデス」

 ページに目を通し始めるマーレット。写真を見て、思わず納得する。

「子供のお人形さんが欲しいのね?」

マーレットの問いに、エリザベルはウットリした表情で答える。

「私ニ、ヨク似タ、可愛イ女ノ子、沢山欲シイ」

「そう、分かったわ」


 人形生物には人間を含む他の生き物と違って、異性同士が性的関係を行なって子孫を残すと言う能力を持っていない。

 人工的に体を作って命を吹き込む事で初めて新しい人形が出来上がると言う構図だ。

 単独の身でも子供が欲しくなったら、人工的にいつでも作られるのだ。

 新しい人形は政府直営の人形工房で作られる事になるだろう。

 先ずは政府・厚生庁内の人形管理局へ提出する申請書(子供人形を新規に世話する為に許可申請書)を用意する事から始まる。

 部屋を出て行ったマーレット。

 エリザベルの方は希望が叶えられて、とても満足気である。

 ふと足元を見ると、1枚の写真が落ちているのが目に止まった。

 拾い上げて見てみる。

 それは、マーレットが仕事上の付き合いで接している人間たちと楽しそうに写っている写真である。 ジッと写真を見つめるエリザベル。

 怪訝な顔で写真をクシャクシャにしてしまった。

「マーレット…、愚カデ、単純ナ、人間ダワ」

 エリザベルの心の奥底から、マーレットに対する思いの変化が徐々に起きつつあった。


 続きます。

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