殺人鬼エリザベル!
18話目です。
「み、ミッシェル…!」
身体を震わせながらゆっくりと床を這う47号。
目の前に横たわる41号…恋人のミッシェルの名前を何度も呼ぶけれど、相手の方はピクリとも動かない。
47号自身、エリザベルに何度も床に投げつけられて両足を失っているから腕だけで何とか移動している状態である。
だが流石に動きに限界が有り、途中で気力が尽きてしまった。
激痛が全身を襲う。
41号は同じようにエリザベルに投げ飛ばされた上に、首をへし折られて一瞬で息絶えてしまったのだった。
いくら気が強い男人形とは言え、身長80㌢の身体では身長167㌢の231号相手には勝ち目はなかったのだ。
生身の人間でさえも歯が立たないぐらいのパワーを持つ231号なのだから尚更で有ろう。
再び動き出した47号。息絶えたかもしれない恋人の元へと力を振り絞って這って行く。
だがその途中、頭に何かが乗っかって動けなくなった。
エリザベルの足である。
そのままグイグイと頭を踏みにじられる41号。
次の瞬間、物凄い衝撃が走って41号も動かなくなった。首から上は完全に原型を留めていない。
「オーホホホホホホ! 聖なる私を侮辱した報いよ!」
41号の頭を踏み潰し、仁王立ちのまま高笑いするエリザベル。
「ミャミャ、チュッゴォーイ(すっごーい)!」
子供人形たちは目をキラキラさせながらエリザベル・ママに拍手を送った。
近くで散歩していたキディが41号の所にやって来ると、ペシャンコに潰れた頭の所にしゃがみ込んでオシッコをする。
その様子をエリザベル・ママは大笑いしながら見つめる。
そこへ、スザンヌ主任がやって来た。
エリザベルは後ろを振り返り、鋭い眼差しでスザンヌ主任を見る。
スザンヌ主任も鋭い眼差しでエリザベルを見つめた。
そして、その場でひざまずき頭を垂れるスザンヌ主任。
「エルーナ王女様」
「私の可愛い子供が1人、愚かで野蛮な人間に殺されたわ。可愛いルラ、私にとって大切な宝物の1つだった」
「施設の人間や人形たちを殺したのは、ルラ様の復讐の為なのでしょうか?」
「それも1つだけど」
「他に何か?」
「人間どもの、今までの私に対する無礼の数々。タップリと礼をさせてもらったのよ」
「だからと言って、無差別に殺戮を行なうのは如何なものでしょうか?」
エルーナ王女の元側近の1人であり、王女を今でも敬愛するスザンヌ主任。
保護施設内での無差別大量殺戮を行なってしまった事に関しては、さすがに疑問を隠しきれない。
理性を失わず、常に冷静さを保って欲しかったと悔やまれて仕方がないのだ。
「自業自得ってヤツよ。私に歯向かった報いよ」
側近の切なる思いなんて、エルーナ王女には知る由も無かった。
「エルーナ王女様」
「ところでスザンヌ! 何で私が、こんなむさ苦しい場所に連れて来られたの!? しかも、狭い部屋に監禁して恥ずかしい思いをさせるとは! 言語道断だわ!」
「…」
「私は北の魔界の聖なる王女エルーナよ! 美しく正しい心を持つこの私を犯罪者扱いするとは! 魔王家への反逆的行為に等しいわね!」
「申し訳ございません! 私がお傍にいながら、王女様を擁護出来なくて! こちらの不徳の致すところであります!」
「これも全て、マーレットのせいね! 居候の分際で、主である私を追い出して家を乗っ取るとは! 世紀の極悪犯罪者で有る事を自ら示したようなものね!」
「極悪犯罪者って、どう言う事でしょうか?」
「お前がまだ魔宮殿で働いていた頃、マーレットは小間使いの1人で働いていたのよ」
「ブラウンさんが、北の魔界にいたとは…初耳です」
「あの者は身分が奴隷に近いって言うから、私やお前が目にする機会が殆ど無かったと思うわ。
そのマーレットは低身分の分際で、私のお姉さまであるソフィア王女の可愛い子供たちを無残に殺してしまった稀に見る極悪犯罪者でも有るのよ」
「36号事件の事ですね? 犯人はブラウンさんだったのですか!?」
今まで知らなかったマーレットの秘密を知って、スザンヌ主任は唖然となった。
エリザベルは悔し涙を流しながら言う。
「酒に酔っての犯行だったらしいけど、あの女のせいで国の宝物である可愛い子供たちは虫けらみたいに殺されたわ」
「可哀相に。小さな王女様の御冥福を祈るだけですわ」
「クルマを出しなさい」
「え? おクルマを?」
「子供たちを連れてウチへ帰るわ。いつまでも、こんな所に居られないでしょう? 早く帰って、ゆっくりとしたいわ。すぐにお風呂と食事の準備をするよう、お前からマーレットに連絡して」
「あー、はぁ…」
「ウチへ帰ったら、マーレットを徹底的にイジメまくってやるわ!」
ますます、強気のエリザベルである。
そんなエリザベルの傍若無人ぶりを遠巻きに見ている者がいる。
45号ローズマリーだ。
「全く…、狂ってるとしか言いようがないわね」と呆れ顔のローズマリー。
エリザベルが施設で暴れて大量殺戮をやった事は全て撮影済みである。
この時だった。
外からサイレンがけたたましく鳴り響いて来た。
スザンヌ主任は窓越しから外を眺めた。
急に慌しくなった外の状況を見て、スザンヌ主任は表情を固くする。
「どうしたの?」とエリザベル。
「警察です!」
「警察?」
「誰かが通報して、警察が来たのです!」
エリザベルも窓越しから外を見てみた。
なるほど。
確かに警察である。
武装した警官たちが施設の建物を包囲しているのだ。
続きます。




