エリザベル、怒り爆発!
16話目です。
3号独居室でくつろぐ人形たち。
エリザベル・ママは椅子に座って悶々と過ごし、足元では28体の子供人形たちがワイワイ楽しそうに遊んでいる。
ママの懐では、遊び終えたキディがオッパイをしゃぶっていた。
「イナイ…」
エリザベルは我が子が1体、足りない事に気が付いた。
ルラがいないのだ。
部屋のドアは開いているから、恐らくどこかへ行ったのだろう。
キディ程ではないが、ルラも赤ちゃんみたいな性格をしている。
オッパイをしゃぶる事はしないけど、泣き虫で怖がり屋さんなのだ。
もし遠くへ行ったなら、絶対に迷って泣き出すかもしれない。
エリザベル・ママは少し不安になって来た。この施設に住む他の愚かな人形たちや、ゲスな人間どもに捕まってイジメられるのではないかと思うのだ。
突然、1人の人間の男が入って来るなり野太く大きな声で怒鳴り始めた。
「オーイ! 極悪人形め!」
「ルラ!?」
エリザベル・ママは我が子ルラの姿を目にして、表情を固くした。
男に足を掴まれたまま逆さ吊り状態になっているのだ。
しかも素っ裸にされたまま、男に振り回されたりして激しく泣いている。
「ミャーミャー! ミャーミャー! オロチチェー(下ろして)! オロチチェー!
ウィアン! ウィアン!」とパニック状態になりながら大泣きするルラ。
「ルラヲ、返シテ、下サイ!」
エリザベル・ママは両手を出して、男からルラを受け取ろうとした。
すかさず、男はルラをヒョイッとエリザベル・ママから遠ざけた。
エリザベル・ママは足にリード付きの足輪を填められているから、あまり行動出来ないのだ。
怒りに満ちた表情でエリザベル・ママを睨む男。
「テメェのガキかよ!?」
エリザベル・ママは目を潤ませながら答える。
「私ノ、大事ナ、宝物デス。返シテ、下サイ」
「そうはゆかねーよ! この糞ガキゃ! 俺がせっかく掃除してキレイになった廊下で、ウンチしていやがったんだぜ! オメーいったい、どんな教育してんだー!?」
「私ノ、可愛イ、子供タチ、トッテモ、優秀。教育ハ、必要ナイ」
「優秀だぁ? ケッ! 廊下でウンチ垂れ流してるガキが、優秀って言うのか? 笑わせるんじゃねーよ!」
「返シテ! 返シテ!」と泣き出すエリザベル・ママ。
「そうは、ゆかねーって言ってんだろうが! この糞ガキをちょっと、お仕置きしなくちゃならねーからなッ!」
男は人形保護施設で設備メンテや清掃とかの業務を請け負う業者の社員ドルバである。
ドルバは62歳。白髪交じりのボサボサ頭の痩せた初老の男で、ハッキリ言って口も性格も悪いのが特徴なのだ。
ルラを振り回すドルバ。
「ウィギャ! ウィギャ! ウィギャ!」
ルラは悲鳴に近い声で泣いている。
激しく振り回されたからだろう。
ルラは口からゲロを吐き出し、同時にオシッコを漏らした。
「うぃえ! きったねー!」
衣類にゲロやオシッコか掛かってドルバは大慌て!
勢い余ってルラを傍のテーブルに叩き付けた!
回りにいる他の子供人形たちは怯えて部屋の外へと避難する。
「ウィアン! ウィアン! ウィアーンアーンアーン! ウィアン!」
激しく身体を打ち付けて、ルラはテーブルの上で七転八倒した。
「可愛イ子供、イジメ、ナイデ! イジメ、ナイデ!」と泣きながら訴えるエリザベル・ママ。
「ガタガタうっせーな! この、能無し人形が!」
「!?」
能無し人形?
ドルバの言葉にエリザベルは鋭く反応した。
怖い目でドルバを睨むエリザベル。
「何だぁ? なーに、俺を睨む?」
「王女エルーナとして命令する。すぐに、ルラを返しなさい」
エリザベルの威張ったような態度にドルバは苦笑いする。
「なーに気取ってんだバーカ? お前、どこかの王女様って言うのか?」
「王女の命令です。返しなさい」
「返しなさいってか? よう、聖なる王女様よぉ、返して欲しけりゃ…その場で跪いてお願いするのが礼儀ってモンじゃねーのか? どうか、お願いします。馬鹿で可愛い可愛い我が子を返して下さいってな」
「返しなさい」
エリザベルが、男が言った事を素直に実行するワケがない。
「オメェー、俺様の話しを聞いてねーのかよ?」
「返しなさい」と、厳しい表情のエリザベル。
「だーかーらーよぉ!」
「返しなさい」
ココまで強い態度で言われると、さすがのドルバも黙ってはいない。
「テメェ、イイ加減にしろよなー?」
「返して! 返して! 返して!」
しつこく迫るエリザベル・ママに、さすがのドルバもお手上げである。
「あー、あー、分かったよ。分かった。返せばイイんだろう返せば」
「素直ニ、返ス」
ドルバはニヤッと笑みを浮かべて言う。
「悪かったな、返してやるよ」
こう言ってドルバはルラを掴み上げた。
エリザベル・ママはルラを受け取ろうと両手を出した時だった。
ドルバはそのままルラを床に激しく叩き付けた!
そして自分の左足で一気に踏ん付けたのである。
「ブギィア!」
ルラにとっては一瞬だけの断末魔の叫び声だった。
もう二度と起き上がる事はないだろう。
原型を留めないぐらいペシャンコに潰れてしまったのだから。
信じれない状況にエリザベル・ママはカッと目を見開き声を失った。
左足を上げ下を見ながらドルバは苦笑いした。
「ヘヘヘ、悪いなママさん人形よ。ついウッカリ、踏んじまった」
茫然となるエリザベル。
身体を震わし怒りの表情を見せ始めた。
「お前…! ゲスな人間の分際で、私の大事な宝物を!」
エリザベルは声を張り上げ、ドルバに飛び掛った。
左腕を掴むなり、力を込めて捻り上げる。
「うがぁー! な、なーにしやがる!?」
もがくドルバ。
抵抗しようとするが、エリザベルの腕力が予想外に強いから動きが取れなかった。
腕に激痛が走る!
ドルバは悲鳴に近いような声を上げた。
バキバキバキ!
鈍い音と共に腕が折れ、エリザベルは力を込めてドルバの左腕を引きちぎってしまう。
引きちぎった左腕を辺りに放り投げたエリザベル。
ドルバの口の中に両手を突っ込むと、力を込めて上下に引き裂いた!
ドルバの首の上半分が宙に舞って床にボトッと落ちる。
「オーホホホホ!」
返り血を浴びたまま悪魔のような高笑いをするエリザベル。
口から上の部分が欠けたドルバの身体は崩れるようにして床に倒れ込んだ。
「ミャハハハハハ-!」
懐でキディが面白く笑う。
凄まじい殺戮の状況…
エリザベル…231号の動きを監視している45号…ローズマリー人形は終始、映像に捉えていた。
再び凶暴さを見せるエリザベル。
果たしてどう、行動する?
続きます。




