私じゃない!
12話目です。
ディックとミミナがやって来た。
今からエリザベルを尋問するのだ。
エリザベルは手錠を掛けられたまま、面談室のテーブル席に座らされていた。
3人は面談室に入ると、エリザベルは悲しげな表情をしてグロリアスに話しかけて来た。
「主任様ハ、ドコデスカ?」
グロリアスは厳しい表情で答えた。
「主任なら、もう帰ったわ」
「ダッタラ、私モ、オ家ヘ、帰ラセテ、下サイ」
「帰りたいってワケ?」
「勿論デス。私ノ家ハ、ココデハ、有リマセン。早ク帰ラナイト、マーレット様ガ、待ッテ、オリマス。可愛イ可愛イ、子供タチガ、オ腹ヲ、空カシテ、待ッテ、オリマス」
「別に、帰る必要はないでしょう?」
「ソウハ、ユキマセン。早ク、帰ラナイト、可愛イ、キディガ、オッパイヲ、吸イタガッテ、泣イテ、シマイマス」
ため息付くグロリアス。
「相変わらず、あのキディにオッパイをしゃぶらせているんだ? いつまで、あのコを赤ちゃん扱いしているの?」
「キディハ、世界一可愛クテ、優秀ナ、赤チャン。オッパイヲ、吸イタク、ナルノハ、優秀デアル、素晴ラシイ証」
「いつまで、キディを赤ちゃん扱いしているのかって聞いてるの!」
「キディハ、ズット、赤チャン。ソレデ、良イ、ノデス」
「あっそう」
エリザベルの説明を聞いて、子育ての進歩の無さをグロリアスは改めて実感するのだった。
エリザベルが訴える。
「早ク、帰シテ、下サイ!」
「どうして、アンタがココへ連れ戻されたのかは分かってるの?」とグロリアス。
グロリアスの質問に、エリザベルは弱々しい口調で返答する。
「ココハ、人形保護収容施設デスネ? 何故、私ヲ、コンナ所二、連レテ、来タノデスカ? 家ヘ、帰ラセテ」
エリザベルは今にも泣きそうな表情を見せ始めた。エ
リザベルをクールな眼差しで見るグロリアス。
「バーッカ、そうはゆかないわよ。アンタはもう、ブラウンさんの家に住まわせる事は出来ないの」
「ドウシテ? ドウシテ、駄目、ナノデスカ?」
「どうして駄目かって?」
グロリアスはカッとなり、思わずテーブルを手でバーンと叩いた!
「!」
エリザベルは驚いて、泣き出した。
「アンタは今まで、マーレットに対して何をやったのか分かっているのッ!? 何も知らないなんて、言わせないからねッ!」
エリザベルは泣きながら惚けたフリをしているって事を、グロリアスは分かっているから余計に怒りが込み上げていた。
弱々しい声で、自分を正当化しているから無茶苦茶頭に来るのだ。
今まで何回も、こんな調子で騙された事か…。
「分カリマセン! 私ハ、マーレット様ヲ、心カラ愛シ、トテモ、慕ッテ、オリマス!」
「アンタがァ!? マーレットを心から慕ってるって!?」
「私ハ、ズット、マーレット様ト、共二、楽シク、暮ラシテ、来マシタ。今ハ、トテモ、可愛クテ、私二トッテ、大切ナ、宝物デアル、子供タチト、一緒二、幸セナ、日々ヲ、過ゴシテ、イル」
「アンタがママとして、あの可愛い子供たちを凄く大事にしている事は分かってる。
なのにどうして、屋敷の主であるマーレットに対して、無茶苦茶暴力を振るってるの? 全く持って、理解出来ないんだけど!」
「暴力? 私ガ、暴力ヲ、振ルウナンテ。私タチ人形ハ、暴力ハ、好ミマセン」
「他の人形たちならね。でもエリザベル、アンタの場合は別。大切なパートナーに対して暴力を振るい、子供たちはそれを面白がって見物している」
「酷イ! 私モ、可愛イ可愛イ、子供タチモ、ソンナ、酷イ事シナイ」
そこでグロリアスはローズマリー人形を呼び出して、例の隠し撮り映像をエリザベルに見せた。
携帯用のスクリーンに映された映像をエリザベルは最初は見入ったが、グロリアスが目を離した隙に視線を別の方向に向けた。
映像を観ようとしなかったのだ。
グロリアスがテーブルをバーンと叩くと、エリザベルは驚いてグロリアスの方に向いた。
「どこを見ているの!? ちゃんと、映像を観なさい!」
「マーレット様ニ、暴力ヲ、振ルッテイル。誰ナノ、デスカ? コノ酷イ、人形ハ」
「アンタに決まってるでしょう? アンタが毎日のように、マーレットに暴力を振るっているのよ」
「ソレハ、誰カノ、間違イデス。私デハ、有リマセン」
「よーく観なさいよ! アンタじゃなきゃ、誰だって言うのよ!?」
「私ジャナイ! 私ジャナイ! 私ハ、気品溢レル、平和的デ、心優シイ、高級人形…」
バシーン!
いきなり、グロリアスの激しいビンタが炸裂!
勢いでエリザベルは椅子から転げ落ちてしまった。
尚もグロリアスは手を出そうとしたが、ディックに制止されてしまう。
床に倒れ込んだまま大泣きするエリザベル。
「酷イ! 酷イ! 私ヲ、悪者人形扱イ、スルナンテ、酷イ!」
このまま尋問し続けても時間の無駄だとグロリアスたちは悟った。
自分は何もしていないとか、映像の中の暴力人形は自分ではないとエリザベルは言い張るばかり。
非を認めようとしないのだから、もうお手上げである。
白なのか黒なのかは兎も角、もうエリザベルは施設から出る事は出来ない身なのだ。
この後、エリザベルは3号独居室に入れられた。
子供人形たちも一緒である。
本当なら、子供人形たちは人形工房へ返却される予定だった。
だがスザンヌ主任の特別な計らいにより子供人形たちは全員、エリザベル・ママの傍へ置いておく事になったのだ。
グロリアスは人形たちの様子を監視窓から観察した。
相変わらず、エリザベルはキディをしっかりと抱いてオッパイをしゃぶらせている。
人間の幼子が指をしゃぶるのと似たような感覚だろうか?
キディはニコニコしながらエリザベル・ママと会話し、その間にオッパイを吸い続けていた。
エリザベルはキディの屈託の無い笑顔を見て思った。
キディは私の可愛い宝物。
甘えっ子で、寂しがり屋で、とても泣き虫さん。
でも笑顔がとても可愛い。
いつもいつも、私の傍に付いて来る。
私の大好きなキディ。
世界一可愛い赤ちゃん。
優しいママの笑顔で、エリザベルはキディに話しかける。
「キディ、幸セ?」
「ミャミャチョ(と)、ジュッチョ(ずっと)、イッチョ(一緒)。チアワチェ、チアワチェ」
キディはキャッキャと笑いながら、エリザベル・ママとスキンシップを取るのだった。
小さな愛らしい笑顔にエリザベルは大感激して涙を流した。
「私ノ、可愛イ、赤チャン。世界一ノ、宝物」
「チャキャラミョニョ(宝物)! チャキャリャミョニョ!」
チラッとドアの方を見やったエリザベル。
鬼のような表情になり、呟き始めた。
「私ヲ、コンナ所ニ、閉ジ込メルトハ! マーレットノ、セイダワ! 許セナイ! 許セナイ!
私ヲ、誰ダト、思ッテイルノ!? 人間ドモ! 私ノ、恐ロシサヲ、見セテヤル! 覚悟ナサイ!」
エリザベルがこう言った事を呟いてるなんてグロリアスには気付く由は無かった。
続きます。




