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二節 妖刀 憐奈

村から一里ほど離れた山の中に、その祠はひっそりと存在する。

祠の入口付近は、崖になっていて、そこから村一面が見渡せるようになっていた。


相変わらずいい眺めだな…。


俺はそんな悠長なことを考えながら、祠の中へと入っていく。


中は薄暗く、肌寒い空気が俺の周囲を包み込んだ。


先が暗闇で見えないので、俺はすぐさま持ってきたろうそくに火を灯す。すると、ほのかな灯りが幾寸先まで辺りを照らしていった。


「もうそろそろ見えてくる頃だが…」


足下に気を付けながら、ゆっくりと祠の奥へと進んで行く。

しばらく足を進めると、堅く閉ざされた扉が俺の目に入ってきた。


鍵は親父殿から預かっている。


俺はすぐさま鍵穴に鍵を差し込んだ。


がちゃり、と鈍い

音が静かな祠の中に響きわたる。


「開いたな…」


扉が開いたことを確認した俺は、ゆっくりと扉に手を掛けて押し開いた。


「相変わらず気味が悪いな…。ここは…」


扉の先には、何本もの頑丈な鉄の鎖に繋がれ、鞘から抜けないように完璧に固定された一振の太刀が祭壇の上に掛けられていた。


部屋の中を見渡して見ると、陰陽師が施した術符があちらこちらへと張られている。


勿論、太刀自体にも所々に術符が張られていた。


この場所にくるのは初めてではないが、やはりこの、不穏な空気には慣れることができない…。


俺は、さっさと太刀の反応を見て帰ることにした。


「うむ…特に異常はないな」


しばらく、太刀の様子を確認していたが、特に異常も見られない。


強力な妖が里に近ずくと赤く、眩い光を放つ…と親父殿も言っていたが、そんな様子は見られなかった。


ということは、近隣の里を襲った妖達がこの辺りにいるとは考えづらい…。

どうやら、親父殿の見回りも取り越し苦労で終わりそうだな。


まあ、何はともあれ、これで村の者達も安心できるということだ。俺は、ほっと安心して祠から出ようと妖刀を祀ってある祭壇に背を向けて歩き出した。


その刹那……!




『我が物となれ…』




突如、俺の耳に凛とした女の声が入ってきた。


「なっ!?」


ぞくり…と背筋に戦慄が走る。


とっさに聞こえてきた声に反応して、俺はすかさず後ろを振り向いていた。


しかし、そこには誰もおらず、妖が封印されたおぞましい妖刀が、祭壇の上に静かに鎮座しているだけだ。

まさか、この太刀の中にいる妖か?


いや…まさかな…。

あれだけの、陰陽師達による術や符で封じられているんだ。

太刀の中にいる妖は、喋ることすらままならない状態のはず…。


最近働き詰めで疲れていただけだろう。

俺は、無理矢理にでもそう思いこみ、逃げるようにその場を後にした。


頭の中に、はっきりと聞こえてきた女の声……。


一体何だったのだろうか…?


俺は、祠の出口が見え始めた所で安堵の息を吐き、冷静にさっき起きた出来事について考えていた…。


やはり、あの声の主は太刀に宿る妖なのだろうか?


そういえば、親父殿からあの太刀に宿る妖について聞かされたことが幾つかある。


一つは、太刀の中に宿った妖は、もとは人間で、美しい女性だったが、あまりにも酷な命運をたどり悪鬼へとなり果てたこと。


もう一つは、その荒れ狂う悪鬼を波我の一族が、命を掛けて太刀に封印したこと…。


そして、最後に…美しくも恐ろしいと言われ続けたその伝説の鬼姫の名前…。



彼女の名は……憐奈

この世の理を揺るがした伝説の鬼姫…。

仕事の都合上、更新いつになるかわかりませんが、感想などお待ちしておりますm(_ _)m

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