18 マリリンと散歩
私は領地に戻った後、いつものようにマリリンの元へ向かった。
「マリリン、今日は一緒に湖に行かない?」
「グゥゥォォ」
どうやらマリリンも厩舎で飽きていたらしく喜んでいる。
厩舎の係に声を掛け、マリリンは久々に厩舎を出た。マリリンは私を背に乗せてふわりと空高く飛び上がる。
この感覚が好きなのよね。
煩わしいことも忘れ、空の中を泳いでいく。領地と面している森の奥に私とマリリンがよく行く湖がある。
ここは森の中にぽっかりと開いた穴のように湖がある。一部の研究者からはマリリンの咆哮で大穴が空き、そこから川が流れ込み、湖になったんじゃないかと言われている。
湖の前で降り立ち、私はマリリンと歩き始めた。
「この間の彼は私の婚約者じゃなくなったんだ。仕方がないよね。でも、ちょっとは嬉しかったんだ。だってあんなに格好が良くて、真剣にみんなの前で私が好きだって言ってくれたのは彼だけだったもの。でも、ちょっと頼りなかったよね。私が彼よりも強いとやっぱりだめなのかな」
私の独り言にマリリンは黙って聞いている。
「先日、会ったオルガ様はね、とても優しそうに見えたわ。……分かってはいるの。どんな人であろうと、強くて責任もって領地を守ってくれる人を婿に取るしかないのは。
でも、少し、ほんの少しでも彼が私を理解し、好きでいてくれているといいな」
私は湖のほとりに座り、足を浸ける。
冷たくて気持ちいい。
今の時期は繁殖期ではないため魔獣も比較的落ち着いている。それにマリリンが傍にいてくれるので大方は怖がって出てこない。
しばらく水辺で遊んだ後、マリリンが警戒していることに気付いた。
私はそっと置いていた斧の柄に手を掛け、戦闘準備に入る。
――ガサガサ、パキリッ。
草むらから何かがこっちへ出てくる。マリリンの気配を恐れないのは自ら餌になりたい魔獣だけだろう。
「グルルルル」
草むらから威嚇をしながら出てきたのはガルムと呼ばれる大型の犬だ。熊に近いかもしれない。
相当お腹が空いているのだろうか、自分よりも何倍も大きなマリリンに標的を定め、走り出してきた。
マリリンもそれを理解しているため、口から火の玉を吐きガルムを攻撃する。
ガルムは素早く右に避けた。ガルムは飛びかかろうとしたけれど、マリリンは飛び上がりガルムの攻撃を避けた。
マリリンが飛び上がったことで私という存在に気付いたガルムはこちらに攻撃をしようと唸り声と共に飛びかかってくる。
チッ。
斧でぶった切るには距離が近い。そう判断した私はガルムに向かって氷魔法を唱えた。ガルムの口先と前足が氷魔法によって攻撃の手を止めることができた。
斧でそのまま叩き切ろうとした矢先。
マリリンが上空から急降下し、ガルムを両足で掴み、また急浮上した後、地面に向かって勢いよく叩きつけた。
―ドォォン。
凄まじい音が、その衝撃の凄さを物語っている。
とどめを刺すように火の玉を吐いてガルムに攻撃する。
毛の焼けた臭いが広がっている。
それでもガルムはピクピクと体が動いている。凄い生命力ね。
マリリンはそんなことはお構いなく器用に片足でガルムを押さえ、バリバリと食べ始めた。
マリリンも美味しく食事も摂れたし、運動もできたことだし、よかったわ。
その後、私たちは優雅に空の散歩を楽しんでから邸に戻った




