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過保護すぎてパーティを追われた無自覚万能冒険者は、ダンジョンで双子亜人の子育て中  作者: 水都ミナト@3/10【魔物解体嬢】②巻発売


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第8話 過保護はほどほどにしろ


「な、なにこれ……!」



 眠りから覚めた双子は、俺が夜鍋して作ったものを前にポカンと口を開けていた。



「縄梯子だと心許ないからな! 階段を作ったぞ!」



 そう、ツリーハウスの出入り口から、木の幹に沿って階段を作ったのだ。

 これだったら安定しているし、アルクも怖くないだろう。


 アルクの反応が気になってチラチラ見てしまうが、なんとも言えない複雑そうな表情をしていた。遠慮でもしているのか?


 昨日は結局朝方まで作業をしていたから、木の根元に寝袋を敷いて睡眠をとった。

 俺は頭上のツリーハウスを見上げ、両手を口元に添えて大きな声で呼びかける。



「せっかくだし、降りてみてくれ!」



 二人は顔を見合わせ、木の幹に捕まりながら足元を確かめるように一歩一歩慎重に降りてきた。



「どうだ、これでもう怖くないだろう」



 俺は両手を腰に添えて、少し胸を反らす。何しろ夜鍋して作った自信作だからな!

 だが、得意になっている俺とは対照的に、アルクもシエルも微妙な顔をしている。


 もしかして、まだ怖いのか? 手すりもつけようか?


 なんて考えていると、「クアァ」と鼓膜を震わす声がした。ヴェルデの欠伸だ。


 のそりと起き上がって再び欠伸をしたヴェルデは、俺と双子とツリーハウスと木の幹に沿わせた階段を順番に見て、胡乱な目をした。かと思ったら、パカリと開けられたた口の奥がチカチカと火花を散らし始めて──ブレスで階段を跡形もなく燃やされた。



「うわああああ! 俺の力作がああ!」



 木やツリーハウスに延焼させずに見事に階段だけを消し炭にするあたり流石だ……って、おい!



「過保護はほどほどにしろとあれほど言うたであろう」


「なんでだよ! 階段ぐらいいいだろう!」


「恐怖や苦手意識を克服する機会を奪うな」


「ぐぬぬ……!」



 ヴェルデの言っていることも分からなくもないが、理不尽すぎないか⁉︎



「それに、縄梯子であればツリーハウスに引き上げてしまえば地上から外敵が襲いくることもなかろう。階段なんてつけてみろ。登り放題ではないか」


「ごもっともで!」



 なんてこった、気が付かなかった。


 アルクとシエルは俺に哀れみの視線を向けてくるが、階段がなくなって残念がる様子はない。つまり、そういうことだろう。


 夜更かしして頑張ったのになあ……。


 俺はガクリと肩を落として、朝食の準備に取り掛かった。


 この日の夜、やっぱりおっかなびっくり縄梯子を使うアルクに何かしてやりたくて、夜遅くまで手動の昇降機のような仕組みを作った。翌朝、ヴェルデに踏み潰された。




 ◇




 せっかくツリーハウスができたというのに、二日続けて寝ずの作業をしたために、俺は結局まだ屋外で寝袋に包まれて眠っている。


 ともかく、雨風を凌げる寝床は確保できたのだ、次は何を整えよう?


 まだ一緒に過ごして数日だが、どうやら双子は随分と食いしん坊のようだ。育ち盛りなのだろう。


 ということで、俺はこの子達の胃袋を満たしてやりたい。ならばまずは調理場と食事をする場所が必要だろう。



「まずはテーブルと椅子、それができたら釜戸を作るか」


「かまど?」



 初めて聞いた言葉なのか、アルクとシエルはこてんと首を傾ける。角度まで同じでほっこりと温かな気持ちが胸に広がる。あー、なんだか癒されるな。



「釜戸っていうのはな、調理設備のことで、石や粘土なんかで作るのが一般的だ」



 俺は口頭で説明しながら、手頃な木の枝を拾って、ザリザリと地面に絵を描いてみせる。



「つまり、うまい料理を作るためのものだ」



 二人の反応を窺うと、食い入るように地面に描かれた絵を見つめていた。


 キラキラと、好奇心に満ちた目。

 昨日、麻袋に落ち葉を入れてもらった時と似た目をしている。



「あー……せっかくだし、作るのを手伝ってくれるか?」



 今日も一人で作業をしようと思っていたが、簡単な工作なら一緒にできるだろう。

 材料集めだけでもいい。


 いつもなら全部自分でやるのだが、どうしてか昨日嬉しそうに落ち葉を詰めていた二人の顔が頭から離れなかった。

 だからなのか、気付けば二人に手伝いを求めてしまっていた。



「ぼくも?」


「わたしも?」



 二人は目をパチパチ瞬かせながら顔を見合わせ、パァッと笑顔を咲かせた。



「とりあえず、それなりの大きさの石や岩を運んできてもらえると助かる。俺は石を削ったり、割ったりしてサイズの調整をしよう」


「わかった!」


「あんまり遠くには行くなよー!」



 役割を与えると、二人は嬉しそうに足を弾ませながら、あっという間に見えなくなった。


 俺はまだ二人のことを全然知らないし、これから知っていきたいと思っているところだが、何か役割を得た時にとても嬉しそうにするようだと気が付いた。手持ち無沙汰な時はオドオドとこちらの様子を窺っている節がある。


 奇妙な既視感を覚えたが、俺も作業を始めよう。


 ちなみにヴェルデは留守にしている。ずっとじっとしていると翼が凝り固まると言って、遠くまで飛んでいったのだ。夕刻には戻ると言っていた。


 さて、二人が釜戸用の手頃な石を集めてくる間に、テーブルと椅子作りに着手する。


 ツリーハウス作りで切り出した木材の中から、少し長めの丸太を二本と、その半分ほどの丸太を一本手に取る。長い棒二本の一旦を交差させ、縄を巻きつけてギュッと縛った。グラつかないようにしっかりと縛るのがポイントだ。


 キツく巻き締めてから、短い丸太を交差させた方と反対側に当て、二本の丸太にそれぞれに縛り付ける。


 それと同じものをもう一組作り、歩幅五歩分ほどの間を開けてそれぞれ地面に突き刺した。これが骨組みの基礎のようなものだ。


 二つのフレームに橋をかけるように丸太を渡し、どんどん枠組みを広げていく。

 橋渡しされた丸太に対して垂直になるように短めの丸太を隙間なく並べてズレないように縄でしっかりと結ぶ。


 最後に、少し太めで安定感のある丸太を手に取った。

 フレームからはみ出した短い丸太の上に二つのフレームを繋ぐように乗せ、これまた縄で縛る。ちょうど腰掛けやすい高さに配置したそれは、椅子として十分に機能するだろう。



「よし、こんなもんか」



 俺は縄の結び目を丹念にチェックしてから、自ら合格点を出して頷いた。


 丸太の椅子付きテーブルの完成だ。

 俺たち三人で使うには十分だろう。



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