表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過保護すぎてパーティを追われた無自覚万能冒険者は、ダンジョンで双子亜人の子育て中  作者: 水都ミナト@3/10【魔物解体嬢】②巻発売


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/14

第7話 ツリーハウスから見た景色


「アルク、シエル。よかったらツリーハウスに登ってみないか?」



 二人の元へと歩み寄り、腰を落として目線を合わせる。


 アルクとシエルは顔を見合わせてからツリーハウスを見上げ、小さく頷いた。

 彼らの目には、不安と好奇心の色が滲んでいる。



「俺が下で支えるから、一人ずつ登ってみてくれ」



 縄梯子の下に来たアルクとシエルは再び顔を見合わせてから、シエルが先に縄梯子に手をかけた。


 さすが子供というべきか、身体が軽く身軽なシエルはスイスイと縄梯子を登って、あっという間にツリーハウスに到着した。よじ登るようにして中に入り、ひょっこり顔を覗かせる。



「よし、次はアルクだ」


「う、うん……」



 アルクに目をやると、彼は両手を胸の前に抱えたまま頭上を見上げている。



「アルク、だいじょうぶだよ!」


「シエル……うう……」



 先に上に登ったシエルも激励を飛ばしている。


 アルクはごくりと大きく喉を鳴らし、恐る恐るといった様子で縄梯子に手をかけた。


 アルクが慎重に足を進めるたびに、縄梯子はギシギシと不穏な音を鳴らす。

 その度、アルクはびくりと肩を跳ねさせ、ギュッと縄梯子にしがみついた。



「アルク、力を抜くんだ。力みすぎると余計に揺れるぞ」



 俺は下で縄梯子を支えながら、頭上にいるアルクに声をかける。


 上からはシエルの応援を、下からは俺の後押しを受けつつ、アルクはじっくりと時間をかけて縄梯子を登り切った。



「よし、よくやった!」



 アルクがツリーハウスの中に入ったことを確認し、俺も風魔法でふわりと宙に浮かんで入り口へと降り立つ。



「わっ」


「ひゃっ」



 ツリーハウスの奥でお互いを称え合っていた二人は、急に俺が入ってきたからか驚いた様子でぴょんと跳ねた。



「すまん、驚かせた。さて、広さは……まあ、ちょうどいいぐらいか」



 双子と俺、三人並んで眠るには十分だろう。


 俺は一人満足して笑みを漏らし、窓に手をかけた。木板を嵌め込んだ窓は、グッと押し上げて突っ張り棒で支える簡単な仕組みにしてある。二人が間違って落ちると危ないので、高さは背伸びして届くぐらい、大きさは横長にして二人一緒に外を見られるようにした。



「ほら、見てごらん。なかなかの絶景だと思わないか?」



 アルクとシエルは窓枠に手をかけて外を覗き込んだ。



「……わあ」


「……すごい」



 そこに広がるのは、青々とした美しい森。青い空は果てしなく続き、白い雲がゆったりと気持ちよさそうに漂っている。眼下を見下ろせば、昨日今日と食事に使った切り株が指先ほどの大きさに見える。すぐ近くに流れる小川は陽光を反射してキラキラと輝いている。


 遠くには高い山も見えるし赤い岩肌も見える。


 俺はいつもこの辺りを拠点にしているから、そこまでこの隠しダンジョンを探索したわけではない。まだ見ぬ景色がきっと広がっているのだろう。



「ヴェルデのダンジョンは広くて美しいよな。お前たちは自由だ。どこへだって行ける。だが、絶対的王者のヴェルデがいても、普通に魔物が生息しているからな。自衛の術を身に付けるまで一人で遠出するのは禁止だぞ」



 俺の言葉に、神妙に頷く双子。



「いつか、あの山に行けるかな」


「ああ、きっと行けるさ」


「山の向こうにはなにがあるの?」


「なんだろうなあ。もしかすると湖があるかもな。砂漠が広がっているかもしれない」


「みずうみ……? さばく?」


「ああ、簡単に言えば、湖はでっかい水溜りだな。そこの小川よりもずっと大きくて、水がたくさんあるぞ。砂漠は砂地だ。有名な砂丘なんかは見渡す限り一面が砂で覆われているそうだ」


「わあ……」


「すごいね」



 二人の目は、まだ見ぬ世界を夢見てキラキラと輝いている。


 しっかりと生きる術を身に付けて、色んな場所を訪れて、色んな景色を見てほしい。


 そこに俺もいるかもしれないし、いないかもしれない。

 それはまだ先のことだから分からないが、この子達と一緒に、旅をするのも楽しそうだ。



 しばらくみんなで景色を楽しんでから、順番に縄梯子を降りて地上に戻った。


 やはりアルクは縄梯子が怖いようで、シエルよりもずっと時間をかけて慎重に降りていた。



「さて、次はベッド作りだ!」



 俺は昨日双子が使った麻布を手に取り、愛用のソーイングセットを取り出した。ボタンが取れたり、服の裾がほつれたり、魔物の爪に裂かれたりと、冒険者の服を繕う場面はよくある。裁縫技術は案外重宝するのだ。


 素早く針に糸を通し、麻布の三辺を縫って袋状にした。


 袋を開いて見せ、生命の樹の下でこんもり山になっている落ち葉を指差す。


 双子は心得たとばかりに頷くと、両手いっぱいに落ち葉を抱えて麻袋の中にどんどんと詰め込んでくれる。



「よーし、十分だろう」



 袋いっぱいになったところで、残りの一辺をササッと縫って閉じる。落ち葉はこまめに入れ替えた方がいいだろうから、ざっくり閉じる程度でいい。


 完成した落ち葉のベッドは、風魔法で持ち上げてツリーハウスまで運んだ。今日から二人はここで寝てもらおう。俺は寝袋があるから、二人のベッドの横で眠らせてもらうつもりだ。


 これで雨風を凌げる場所は確保できた。次は今晩の食材確保なのだが、俺たちが麻袋に落ち葉を詰め込んでいる間に、ヴェルデがホーンラビットを数頭仕留めてきてくれた。


 今日のところはヴェルデの好意をありがたく受け取り、ツリーハウスを作る過程で見つけて摘んでおいた香草を使って包み焼きにした。いそいそと香草を取り出した時、「いつの間に」とヴェルデはまた白い目で俺を見てきた。なんだよ。


 今日も切り株をテーブル代わりに食事を始める。明日はテーブルと椅子を作ろうか。


 美味しそうにホーンラビットの包み焼きに齧り付くアルクとシエルを眺めながら、頭の中で明日の予定を組み立てる。


 そして就寝時、やっぱりアルクは縄梯子が怖いようで、ツリーハウスに入るまでにかなり時間がかかっていた。



 うーん、となると……。



 俺は双子とヴェルデが寝静まったことを確認し、隠遁魔法で気配を殺してせっせととあるものを作り上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
୨୧┈┈┈┈┈┈ 3/10 発売┈┈┈┈┈┈୨୧

html>
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ