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過保護すぎてパーティを追われた無自覚万能冒険者は、ダンジョンで双子亜人の子育て中  作者: 水都ミナト@3/10【魔物解体嬢】②巻発売


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第6話 ツリーハウスを作ろう!


 朝食は王都で買っていたパンにバターを塗っただけのシンプルなもので済ませた。


 双子は初めてのパンとバターに声にならない声を上げて感激していたが、明日からはこのダンジョンで手に入れたもので工夫しようと思っている。



「さて、まずは木材集めかな」



 食材集めも必須だが、まずは寝床作りだ。いつまでも木の下で彼らを寝かせるわけにもいかない。


 ひとまず雨風を凌げる壁と屋根があって、三人が川の字で眠れるほどの大きさがあれば十分だろうと、以前作ったことのあるツリーハウスを作ることに決めた。


 生命の樹の周辺には、立派に育った木がたくさん生い茂っている。

 枝の具合をいくつか確認し、目星をつけた木をツリーハウスにしてもいいかヴェルデに確認して許可を取った。ついでにツリーハウス用に木材を切り出す許可も得た。


 ここでの生活が落ち着いたら、時間をかけて小屋を建てたいな。


 なんてことを考えながら、ヴェルデに許された一帯で俺は愛用の剣を抜いた。そして具合を確かめるように軽く上下に振る。うん、しっかり手に馴染んでいる。



「ん?」



 視線を感じて振り向くと、ヴェルデの太い脚の間から双子が怯えた目でこちらを見ていた。俺、というより、俺の手元を見ているようだ。

 視線を落とすと、日の光を反射して、剣の刀身がキラリと光った。


 あー……剣はちょっと怖いか? なるべく早く済ませてしまわないとな。


 怖がらせて申し訳ないが、やはり慣れた武器の方が作業が早く片付くので少しの間我慢して欲しい。


 木を切るにはもちろん斧が最適なのだが、流石の俺も用意がない。材料さえあればサクッと作ってしまえるが、今日のところは工夫で乗り切るしかない。つまり、魔法の力に頼る。



「【武器強化】、【風刃・纏】」



 強化魔法で剣を強化し、風魔法で剣の周りに細かいかまいたちを纏わせる。


 この【風刃・纏】は、東方出身の冒険者に教えてもらった魔法だ。彼はナイフとは違った変わった形の武器にこの魔法を施して戦うのが得意だった。独特な語尾をし、黒装束を身に纏った面白い奴だったな。


 準備が整ったので、早速伐採してしまおう。

 俺は慣れた手つきで木を切り倒すと、同じサイズの木材を必要数切り出した。双子が怪我をしてはいけないので、表面をしっかり削って滑らかにすることを忘れない。棘が刺さったら大変だからな! あれは地味に痛い。


 切り出した木材を、身体強化をして全てツリーハウスにする予定の木の下まで運んでしまう。


 選んだ木を改めて見上げてみるが、やはり枝の伸び具合がちょうどいい。だが、不要な枝葉を少し剪定したほうがいいだろう。引っ掛けて怪我をしたら大変だ。



「【風刃】」



 風の刃を操り、枝を整える。落ちてきた枝は後で乾燥させて焚き火に使おう。

 それから身体強化で足を強化して、ツリーハウスの支えとする太い枝まで軽々と跳躍して木材を並べていく。


 縄でしっかりと固定し、懐から釘を取り出す。こんなこともあろうかと、釘は常備している。身体強化した拳をトンカチ代わりにどんどん打ちつけていく。


 床、壁と順調に組み上げていき、最後に屋根を乗せて完成だ。



「よし。次は余った木材を使って縄梯子を作るか」



 縄梯子用に、いいサイズの枝を取っておいたので、このまま作ってしまおう。


 まず、長めの縄を用意し、程よい位置でくるりと輪を作る。

 その輪の中にさらに輪を作るように縄を引き込む。できた二つ目の輪に足場用の枝を差し込み、縄を上下に引っ張ってしっかりと引き締める。


 縄梯子を使うのはアルクとシエルになるので、あまり間隔が空きすぎないように気を付けながら、等間隔に同じ要領で枝を縄で縛っていく。



「よし、こんなもんか」



 できた縄梯子を持って跳躍し、ツリーハウスの入り口のすぐ下にある太い枝にしっかりと巻き付ける。これで二人もツリーハウスに登ってくることができるだろう。


 安全確認のため、一つ一つ踏みしめながら縄梯子を使って地面に降り立った。

 うん、上出来だ。



「ツリーハウスの完成だ! あとで昨日シーツ代わりにした布に葉っぱを詰めて二人のベッドを作ろうか」



 ひと作業終えた達成感で清々しい気分になりながら、俺は静かにこちらを観察していた皆の方を振り向いた。


 すると、ヴェルデは奇妙なものを見るような目でこちらを見ており、双子もポカンと口を開けていた。どうかしたのか?



「……お主、建築の経験があるのか? ずっと見ておったが、木を切るところからツリーハウスとやらを建て終えるまで一時間もかかっておらぬぞ。手際が良すぎんか」


「え? うーん、経験というほどじゃないけど、建築ギルドで数ヶ月世話になったことはあるぞ。森の中で何泊もする必要があるクエストを受注することだってあるからな。パーティのみんなにはしっかりと休養を取ってほしいだろう?」



 実際、何度かツリーハウスを作った。天幕を張って地上で野営するよりもずっと安全だ。



「……それで、パーティの面々はなんと?」


「ん? いや、喜んでくれていたぞ? 初めてツリーハウスを作った時は子供みたいに目をキラキラ輝かせてたなあ……それが嬉しくて何泊も必要な時は決まって作ったっけ。三度目にもなれば最初みたいな反応はしてくれなくなったけどな」



 クエストによっては、討伐対象の魔物が現れるまでじっと一箇所で身を潜める必要があった。上空からだと獲物も仕留めやすいし警戒もされにくくて一石二鳥だったのだ。


 あの頃は楽しかったなあ……。

 あ、やべ。感傷に浸っちまう。


 ついしんみりしていると、ヴェルデは片手で顔を覆った。器用なやつだ。



「やはり、お主は少々……いや、かなり過保護であるな」


「え? そうか? みんなに快適に過ごしてほしいと思っていただけだぞ」



 ヴェルデの言わんとすることが分からず、首を捻る。


 ……そういえば、あの日のイカロスの表情は強張っていたような気がする。


 今思い返せば、兆しはそこら中にあったのかもしれない。

 些細なことの積み重ねで、今俺は大好きだった彼らと行動を共にすることが叶わなくなったのだろうか。



「……もしかして、みんなのためにサクッとツリーハウスを作るのは普通じゃない、とか」


「お主の基準を普通とするならば、常人は卒倒するであろうぞ」



 マジか。まあ、野宿といえば寝袋かテントが一般的だ。確かヴェルデはこのダンジョンでの出来事を把握できるようだし、他の冒険者たちが野宿をする様子だって知っているのだろう。


 みんなに手伝う隙も与えずにツリーハウスを建てる男は俺ぐらいなのか?

 俺は、自分の中の『当たり前』を見直したほうがいいのか?


 ……でも、大好きな奴らには快適に過ごしてほしいし、美味しいご飯を食べてほしいし、怪我もしてほしくないから魔物討伐もできれば俺に任せてほしい。まあ、流石にそれはみんなに悪いからせめて身体強化でバックアップを……あれ?


 戦闘は極力イカロスやエリナを立てて、彼らの支援に努めていた。

 だが、それ以外の荷物持ちや拠点の設営、食事の用意や買い出しなんかは嬉々として俺が担ってきた。



「ヴェルデ……俺、全部一人でやっていたかもしれない」



 ようやく、それがパーティとして歪な形であることに気が付いた。


 呆然としながらヴェルデに伝えると、ヴェルデは「ようやく気付いたか」と鼻で笑った。



「その気づきが第一歩であろう。お主はそこらのお人よしが尻尾を巻いて逃げるほどのお人よしなのだ。少しはそのことを自覚するがいい」



 自覚しろと言われても、俺にとってこれが当たり前なのだから、普通のラインが分からない。どこからが踏み込みすぎで、どこまでが許されるのか。


 それを探り、見極めることができたら、俺は誰かと共にまた冒険者としてパーティを組むことができるのだろうか。


 つい下げてしまっていた目線を上げると、ヴェルデの脚元から顔を覗かせるアルクとシエルが目に入った。



 彼らと関わることで、俺も変わることができるのだろうか。



「……善処するよ」


「我も協力は辞さぬ。基本的には口出しするつもりはないが、この子らのためにならぬと感じたことには遠慮なく干渉させてもらうぞ」


「ああ、助かるよ」



 偉大なる緑竜を見上げれば、不敵な笑みが返ってきた。


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