第22話 それぞれの戦い
そして翌朝、スッキリ目覚めた俺たちは昼前には目的の岩山に到着した。
探知魔法が得意なシャムに辺りの気配を探ってもらい、四羽のロックバードの位置を捕捉した。
ロックバードは鋭く丈夫な脚で、足場の悪い岩場を難なく移動する。体が大きく跳べない鳥だ。巣自体は高所に作る習性があるが、そのうち餌を求めて地上に降りてくるはず。
三人には道中にロックバードの特性を説明してある。
俺たちは顔を見合わせて、気配を殺して森に潜んでその時を待った。
しばらくジッとしていると、思った通り数羽のロックバードが降りてきた。餌を探しにいくのだろう。
「よし、じゃあ一人一羽ずつ。危ないと思ったらすぐに大きな声を出して助けを呼ぶこと。いいな?」
「う、うん」
「はいっ」
「余裕なのにゃ」
アルクとシエルはしっかりと短剣を構え、シャムは余裕たっぷりにそれぞれの獲物へと向かっていった。
「さて、俺もさっさと片付けて二人の様子を見守ろう」
俺の獲物であるロックバードは降りてきた四羽の中でも一番大きい。
羽をいただくので火魔法は厳禁だ。あまり傷つけずに倒したい。
「となると……これだな。【水刃】」
俺はロックバードに向かってパチンと指を鳴らした。顔の大きさほどの水球がこぽりと波打ちながら生まれ、水の刃となってロックバードの首を落とした。
通常、水魔法は水源に近いほど技の威力も規模も大きなものを扱える。だが、空気中の水分をギュッと凝縮して集めてしまえば、これぐらいの魔法は難なく使える。
水刃に首を落とされたロックバードは、叫び声を上げる間もなく地面に倒れた。
「よし、一丁上がり」
首を落としてしっかりととどめを差し、ついでに血を抜いておく。
羽は後ほどみんなで毟るとして、他の魔物に横取りされないよう結界を張っておく。
「みんなの様子は……っと」
辺りを見回すと、ちょうど森の入り口でシャムがロックバードと交戦している様子を捉えた。
シャムは素早い動きで相手を翻弄し、急所の首に噛み付いては離れてを繰り返している。
やがて消耗したロックバードが膝を折ったタイミングで、鋭い爪を振り上げてとどめを刺した。普段飄々としているが、シャムもたくさんの修羅場を潜ってきたのだろう。戦闘慣れしている様子が見て取れた。
「さて、二人は……っと」
シャムは大丈夫だろうと、アルクとシエルを探して森に足を踏み入れる。
すぐに、キィンという金属音が聞こえたため、気配を殺してそちらに向かう。
森の中の開けた場所で、二人は戦っていた。
短剣を振り翳して果敢に攻撃を仕掛けているが、ロックバードは二人の倍以上も大きな身体の割に機敏な動きをするためことごとく攻撃を躱されている。
なかなか間合いに踏み込めず、魔法も思うように使えていない。これは長期戦になりそうだ。
「ふむ、仕方がない」
俺は二人に対して密かに補助魔法を発動した。
足が地面を滑っているため、しっかりと踏みしめられるように脚力強化を施す。
これで瞬発力も上がるだろう。
短剣を持つ手も震えているので、腕力も強化しておこう。一撃の威力が上がるはずだ。
それから、小さなかすり傷を治癒し、魔力の底上げのために魔力増幅魔法を施した。
「「⁉︎」」
どれもほんの少し、彼らの後押しとなる程度の魔法だ。
だが、自分の身体の動きが良くなっていることに二人はすぐに気付いたらしく、動きが見るからに良くなっている。
「うんうん、いいじゃないか」
俺が二人の動きに満足して、腕組みをしながら木の影から様子を見守った。
今の二人に必要なのは、自分の力で敵を倒すことができたという成功体験だ。
その一助となれたのなら俺はとても嬉しいし、このまま二人には勝利の味を知ってほしい。
「……うにゃー」
――二人のサポートに集中していた俺は、いつの間にかシャムがそばまで来ていて、なんとも言えない顔でこちらを見上げていることには気が付かなかった。
やがて二人の剣がロックバードの首をとらえた。が、切り落とすことができずに剣が首に刺さったままになっている。
力任せに剣を振るっては、綺麗に首は落とせない。
「最後の一押しだな」
俺は二人の腕力をもう一段階強化し、ついでに風魔法を剣に纏わせて切れ味をよくした。
「「!」」
ザンッ、ザンッと続け様に首が落ちる鈍い音がして、ズウンと巨体が倒れて地面が揺れた。
二人がロックバードを仕留めたのだ。
「よし! 二人とも自分の力で倒せたな、良くやったぞ!」
俺は二人を労るために駆け寄った。
だが、ロックバードを単身で倒したはずの二人の表情は晴れない。
ギュッと拳を握り締め、倒したロックバードをジッと見下ろしている。
どうしたんだろう?
「? とにかく目的は果たした。羽をもごう。今晩の分の肉を切り出したら、残りは焼いてしまう。魔物の死骸は他の魔物を呼び寄せるからな」
「……うん、わかった」
その後も双子は黙々と羽をむしり、淡々と袋に詰めていった。
あれだけ羽毛布団を作ることを楽しみにしていたというのに、どうしたんだろう?
俺は二人に気分が沈んでいる理由がさっぱりわからず、終始首を傾げながら作業に集中した。




