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過保護すぎてパーティを追われた無自覚万能冒険者は、ダンジョンで双子亜人の子育て中  作者: 水都ミナト@3/10【魔物解体嬢】②巻発売


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第21話 はじめての遠出


 翌朝早速、ヴェルデにロックバードの生息地について教えてもらった。

 やはり目星を付けていた岩山がロックバードの住処らしい。


 ヴェルデ曰くそれほど遠くはないということなので、予定通り一泊の想定で歩いて向かうことにした。遠くないとはいえ、野宿が必要となる。


 初めての遠出に、初めての野宿。

 アルクとシエルは期待と不安がせめぎ合っているようで、ソワソワと落ち着かない。


 拠点としているこの辺りには凶暴な魔物は少ない。だが、少し離れたらもしかするとたくさん魔物が生息するのかもしれない。



「ここは俺が野宿用のツリーハウスを……」


「やめろ」


「ですよね」



 ヴェルデにしっかり釘を刺されつつ、俺たち四人は荷物を背負って出発した。


 罠を張ったり、果実を採ったりしている一帯を抜ければ、そこは未知の世界だ。


 岩山までは森が続いているため、景色はいつもと変わらない。


 鼻が効き、気配に敏感なシャムが前を歩き、アルクとシエルを挟むように殿を俺が務める。


 珍しい薬草や果実を見つけたらマッピングし、休憩を挟みつつ日暮まで歩いた。



「よし、今日はこの辺りで野営をしよう」


「うんっ」


「なにをしたらいい?」


「疲れたのにゃあ」



 木々に囲まれた開けた場所を野営地に決め、俺たちは各自荷物を下ろした。


 まずは焚き火だな。

 休憩しつつとはいえ結構な距離を歩いたが、アルクとシエルは疲れた様子を見せずに焚き火用の木の枝を集めてくれる。



「シエル、風魔法を使って木の枝を乾燥させるんだ。枝から水分を蒸発させるようなイメージで……こうだ」


「うう……こう?」


「そうそう、うまいぞ」



 シエルは時折自ら起こした突風にひっくり返りながらも、集めた枝を乾燥させてくれた。



「次はアルクだ。焚き火に着火してみよう。小さな火種を落とすイメージだ」


「むむぅ……できた!」



 アルクは焚き火用の枝の山に両手を向け、小さな火球を生み出し、落とした。


 アルクが落とした火球からジワジワと火が広がり、パチパチと枝が爆ぜる音がし始める。



「よし、いいぞ。シエル、火種に少し風を送って火を大きくしてみてくれ。強すぎると火が消えるから控えめにな」


「はいっ」



 今度はシエルが両手を焚き火に添え、「むむむ」と言いながら焚き火に風を送る。


 程よい風に煽られて、火種はしっかり成長して力強い炎を立ち上らせた。



「二人とも出力の調整が上手くなってきたな。今日は未開の地での野営になるから、魔除けの香草を炊いておく。これが魔除けの香草だ。葉脈が紫色で、葉は濃い緑色をしているのが特徴だ。火に焚べれば獣型の魔物が嫌う匂いを発する。ちなみに、三人はこの匂いは大丈夫か?」



 一応は低ランクの獣型の魔物に効果があると謳われている香草であるが、万一にでも双子やシャムの身体に悪影響があってはいけないので、焚べる前に匂いを嗅いで確認してもらう。



「ん、とくに気にならないかな」


「わたしも」


「オイラも大丈夫にゃあ。この程度の魔除けじゃオイラを制することはできないのにゃあ」



 シャムは何だか偉そうなことを言っているが、三人とも平気そうなので安心した。


 鬼人族もケットシーも高位の魔物なので、魔除けの香草程度では効果がないのだろう。



「それじゃあ、焚べるぞ」



 葉を千切って焚き火に放り込む。一瞬炎がブワッと紫色に変色し、やがて落ち着いた橙色の温かな炎に戻っていく。



「よし、あとは天幕を張って、夕飯にしよう」


「はーい!」


「わーい!」


「腹ペコなのにゃ〜!」



 持参していた幕と木の棒を使って天幕を張り、道中で仕留めたホーンラビットを捌いていく。これまた持参していた特製のタレをかけてしっかり焼いて照り焼きにし、【アイテムボックス】から材料を投入した鍋を取り出して火にかける。



「にゃあ〜……流石に慣れているにゃあ。野営で携帯食じゃなくていつもと変わらない温かにゃ料理を用意するあたりがリアンらしいのにゃ」



 膝の上に両肘を突いて鍋を覗き込むシャムが、感心したような呆れたような声を漏らす。



「それは褒めているのか?」


「空間魔法の【アイテムボックス】を使える冒険者自体が希少なのを知っているのかにゃあ……Aランクの魔導師でも習得が難しい魔法なのにゃ……リアンはなんでもできすぎて怖いぐらいだにゃ」


「ん? なんか言ったか? もうすぐできるぞ」


「なんでもないのにゃ。楽しみにゃ!」



 何やらブツブツ呟いていたようだったが、夕飯の出来上がりが間も無くだと伝えれば、シャムはコロッと表情を緩ませた。


 鍋の蓋を開ければ、美味しそうな香りと共に湯気が立ち上り、示し合わせたかのように双子の腹の虫が「キュウ」と鳴った。



「ははっ、待たせたな」


「うう」


「あう」



 二人は恥ずかしそうにしつつも皿の準備をしてくれる。


 鶏ガラで作った野菜たっぷりのスープと、ホーンラビットの照り焼きをみんなで美味しくいただいて、寝支度を整えれば、三人はパタリと眠ってしまった。表には出さなかったが、流石にたくさん歩いて疲れたのだろう。


 俺は三人がすうすう寝息を立てて熟睡していることを確認してから、こっそり治癒魔法を施した。疲労した筋肉を回復させ、本人さえ気付かない小さな切り傷や擦り傷も癒しておく。


 それから辺りに防護結界を張って寝袋に潜った。Aランクの魔物に襲われても破られない強度の結界だ。これがあれば夜の見張りは不要で安心して眠ることができる。


 俺は木の葉の隙間から覗く星空をしばらく楽しんでから、ゆっくりと瞼を閉じた。


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