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過保護すぎてパーティを追われた無自覚万能冒険者は、ダンジョンで双子亜人の子育て中  作者: 水都ミナト@3/10【魔物解体嬢】②巻発売


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第14話 失敗を恐れるな


 攻撃魔法に対して前向きになってくれたのはいいが、うまくいかない時の二人の反応がどうも気になる。


 うまく魔法が発動できないと、びくりと肩を震わせてこちらを窺うように見上げてくるのだ。

 俺の反応を気にしすぎるが故に、魔法の発動にもムラが出るし威力が控えめというか、大人しい。



「ん? もしかして失敗するのが怖い、とか?」



 どうしてだろうと考えて、ふと思い至ったことを口にした。


 すると、アルクとシエルはびくりと再び肩を跳ねさせた。


 なるほど、やっぱり失敗が怖いというか、失敗した後の俺の反応を恐れているのか?

 失敗自体ではなく、俺に怒られたり、呆れられたりすることが怖いのか?


 いや、まだなんだかしっくりこないな。


 うーん、と顎に手を当てて考えながら二人に視線を落とす。


 俺の反応を窺う瞳を見て、ああそうか、と理解した。



 アルクとシエルは──失望されるのが怖いのか。



 俺は腰を落として目線を合わせると、両手で二人纏めて抱きしめた。


 突然の抱擁に、二人はカチコチに固まって動かない。



「俺は絶対に、お前たちに失望しない。努力する限り、付き合い続ける。だから、失敗を恐れずにどんどん挑戦するといい。全部俺が受け止めてやる」



 二人が身じろぎをして、こちらに顔を向けたのが分かった。



「で、でも……もう、なん回もしっぱいしてるし……」


「うまくできないの……」



 震える声で心の内を打ち明けてくれる二人の頭を撫で、そっと抱擁を解く。


 そして、二人の不安に揺れる瞳をまっすぐに見つめ返す。



「始めからできるやつなんていないさ。できるまでやればできる!」


「考え方が脳筋」


「うるせ」



 後ろで俺たちの動向を見守っていたヴェルデが余計なことを言ってくるが、気にしない。



「人が成長しなくなるのは、挑戦をやめた時だ」


「脳筋」


「うるせ」



 ヴェルデが呆れたような、面白いものを見るような目で見てくるが、気にしない。


 ヴェルデが言うように、俺の考えは確かに脳筋なのかもしれない。

 だが、あながち間違ってはいないと思う。


 もう限界だ、と思ったところから後一歩踏ん張れるかどうかで、成長度合いは目に見えて変わる。挑戦をやめた奴は、そこまでだ。自分の限界はここまでなのだと自分で線を引いてしまったら、もうその線を越えるのは困難に等しい。



「とにかく、お前たちには諦め癖をつけないでほしい。自分で自分の限界を決めるな」



 昔、生まれ育った村の爺に、ノミの話を聞いたことがある。

 始めは高く飛び跳ねていたノミを捕まえて瓶に入れて蓋をする。

 ノミはこれまで通りに飛ぶと蓋に頭をぶつけてしまう。

 しばらくその状態にしておくと、瓶の蓋を外しても、ノミは蓋の高さまでしか飛べなくなっているのだ。本当は、もっと高く飛べるのに。


 この子達にはそうなってほしくない。

 のびのびと自由に、自分の可能性を伸ばし、追求し、成長する喜びを知ってほしい。


 俺の気持ちや考えがどこまで伝わったかは分からない。

 だが、アルクとシエルは顔を見合わせ、安堵の笑みを浮かべたように見えた。




 ◇




 アルクとシエルが積極的に魔法の特訓に取り組んでくれるようになり、色々な属性の魔法を試した結果、どうやらアルクは火魔法と土魔法、シエルは水魔法と風魔法と相性がいいということが分かった。



「単純な話だが、髪色や目の色で得意な属性が分かることがある」



 赤髪のアルクが火魔法、青髪のシエルが水魔法に適性があることからも髪色と得意な魔法の特性に関係がないとは言い難い。


 二人は不思議そうな顔をして互いの髪を見つめた後、全く同じタイミングで俺の方を見た。


 そして、二人同時に口を開いた。



「「リアンは?」」


「ん? 俺か?」



 確かに、アルクやシエルのようにはっきりとした髪色であれば、得意属性が分かりやすい。反して、俺は黒髪だ。いわゆる五大属性を連想させる色ではない。



「俺は突出して得意な属性はないかな。でも、苦手な属性もないから、全部最高位の魔法まで習得したよ」


「あう……」


「はう……」



 黒髪は凡庸な髪色だが、平均的にどの属性の魔法も使用することができる。器用貧乏なんてよく揶揄されるものだが、俺はそれぞれの属性を自分の限界まで極めた。だから、得意属性はないが苦手な属性もない。


 自分の前髪を引っ張りながら答えたのだが、俺の答えを受けた双子は口をへの字にして不貞腐れてしまった。後ろでヴェルデがニヤニヤ笑っている。なんだよ。



「この男を基準にするでないぞ。こいつは異端児だ」


「なんだよその言い方は」


「あながち間違ってはおるまい」


「ぐっ」



 まあ確かに、パーティに尽くしすぎて辞めてくれって言われる俺は異端児なのかもな。


 あ、久々に思い出して凹んできた。最近考えることが減ってきたところだったのに。くそう。


 どんよりモードに入った俺の周りを、双子があわあわしながら慰めの言葉をかけてくれる。


 うっ、優しい子達だ。


 俺はギュッと二人を抱きしめた。二人は照れくさそうに身じろぎしつつも、前のように身をこわばらせることはない。少しは信頼関係を築けたのかな。



「時間はたっぷりある。焦らず得意な魔法をまずは伸ばしていこう。それ以外の魔法も使えるに越したことはない。一つずつ、な」


「「うんっ」」



 二人の目を見て微笑むと、アルクとシエルも頬を桃色に染めながら微笑みを返してくれた。


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