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過保護すぎてパーティを追われた無自覚万能冒険者は、ダンジョンで双子亜人の子育て中  作者: 水都ミナト@3/10【魔物解体嬢】②巻発売


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第11話 王都の街へ


「そろそろ色々と切れてくるな」



 俺はダンジョンにやってくる前に王都で仕入れた品々の在庫を確認しながら何気なしに呟いた。


 料理に不可欠な調味料や香辛料、布やロープ、それから服も擦り切れてきたので新調したい。


 アルクとシエルも一着ずつしか服を持っていないようなので、動きやすそうな服を何着か買ってやりたい。魔物の皮をなめして服を作ることはできるし、いつか作り方を教えてやろうとは思っているが、せっかく近くに街があるのだ。何も全て自給自足しなくてもいいと思っている。


 パーティを辞めて逃げるように街を出たため、正直少し気は重い。俺を知る冒険者に声をかけられても、愛想笑いの労力すら惜しい。まだ心の傷は癒え切っていないのでフードを被って買い出しをするつもりだが。ははっ……はあ。


 まあ、せっかく街に出るのだから、ついでに野菜や果物の種も買ってみようかと思っている。


 ここの気候は穏やかなので、栽培にはもってこいだと思うのだ。あわよくば小麦や稲を育てることができれば、食事の幅はぐんと広がる。生育を促進する魔法陣を組めば、それなりに育つのではないかと思っている。



「というわけで、俺は少しダンジョンを離れようと思う」



 早速、双子に街へ買い出しに行くことを伝えれば、二人は不安気に瞳を揺らした。


 悲壮感に満ち溢れた様子で手を取り合い、次第に目には涙が滲み始めたのでギョッとする。



 えっ、なんで⁉︎


 ちょっと出かけてくるだけなのだが……もしかして、俺がいないと寂しいとか? 

 まあ、そうなら嬉しいことだけど。


 動揺しつつも、少し嬉しい気持ちもあって表情が定まらない。


 やはは、と情けない顔をしながら頭を掻いていると、アルクとシエルが俺の服の裾をギュッと握った。その手は微かに震えている。



「リアンは……もどってくる?」


「わたしたちをおいていなくならない?」


「あ……」



 今にも溢れそうなほどいっぱいの涙を溜めて俺を見上げて切に訴えてくる二人の言葉を受けて、俺は鈍器で頭を殴られたような衝撃を覚えた。


 もう一ヶ月も一緒に過ごしていたから、すっかり忘れていた。

 アルクとシエルは、実の母親に捨てられたのだ。


 もしかすると、今の俺のように少し留守にするからと二人の前から姿を消したのだろうか。すぐに戻るから、待っているのよ。なんて言われたら、素直で人を疑うことを知らない双子はジッと母の帰りを待ったことだろう。何日も、何日も。


 ヴェルデ曰く、この場所に訪れることができるのは、その必要があるものだけなのだとか。たまに呼ばれていないものまで迷い込むことがあるらしが、基本的にはここに辿り着けるのはそれが必然であるものだけだという。


 二人のことも、ある日生命の樹の下で身を寄せ合って丸くなっていたところをヴェルデが見つけたらしい。



 ダンジョンとは、言い得て妙な場所だ。



 俺は込み上げてきた熱いものをグッと堪えてから腰を落とした。

 二人に視線を合わせ、両手でそれぞれの肩を掴む。



「安心しろ。俺は必ずここに戻る。アルクとシエルと、ついでにヴェルデがいるこのダンジョンが、今の俺の帰る場所だからな」


「リアン……」


「うりゅ……」


「ついでとは何だついでとは」



 二人の涙が表面張力の限界に挑戦する中、解せぬといった調子でヴェルデが顔を寄せてきた。


 俺たちの様子を少し離れた位置で静かに見守ってくれていたのだ。



「今から出れば日が暮れるまでには戻れると思う。昼飯は昨日の残りのスープを食べてくれ。かまどの使い方は教えているが、火事にならないように見てやってくれ」


「任された」



 ヴェルデの頷きを受け、俺も小さく頷きを返す。


 そして改めてアルクとシエルに視線を合わせ、二人の頭に手を置いた。



「じゃあ、行ってくる。留守は任せたぞ」


「う、うん。いってらっしゃい……」


「い、いってらっしゃい」



 俺はまだ少し不安そうに自らの服の裾を握りしめるアルクとシエルに微笑みかけ、懐から取り出した転移結晶を砕いた。


 眩い光に包まれて、次に目を開けるとそこは勝手知ったる王都の街だった。


 転移結晶にはダンジョンの入り口まで転移できるものと、王都のギルド前まで転移できるものの二種類存在する。もちろん後者の方がうんと値が張る。


 だが、ダンジョン暮らしをする以上、困った時にすぐに王都に来られるのは助かるので、今回使った分は後でしっかりと補充しておくつもりだ。



 王都の街は相変わらず活気に溢れている。



 ギルドの前は依頼者や冒険者が多く行き交い、転移結晶で姿を表す冒険者も珍しくはないので、俺が突然現れたところで誰も気にする素振りはない。


 俺は人混みに素早く紛れ、サッとフードを目深に被ってギルドの前から離れる。

 これでも王都を拠点に何年も冒険者をしてきたのだ。顔見知りはそれなりにいる。


 万が一にでもイカロスたちと顔を合わせたら大変気まずい。感極まって泣いて縋ってしまうかもしれないし、彼らを抱きしめて離さなくなるかもしれない。冷静でいられなくなるのは確かだろう。


 そのままそそくさとギルドを背にして商業地区へと足を向ける。


 まずは豊富な調味料と香辛料を備える店の扉を開ける。途端にツンとした独特の匂いが鼻の奥を刺激する。ここの香辛料はかなり質が高く、味がいい。世話になっているのでたまに素材採取のクエストを個人的に受注することもあった馴染みの店だ。


 多少レイアウトは変わっているが、陳列内容は前に来た時とそれほど違いはない。

 手早く塩胡椒、酒、砂糖を手に取る。東方の国の調味料であるショーユやミソも買っておく。使い勝手が良くて気に入ってるんだよな。


 それから、服飾店で大きめの布も買っておく。これも何かと便利だからな。


 続いて子供服が陳列されている一角へ足を踏み入れる。

 彼らのサイズ感を思い返しながら、いくつか服を見繕う。



「って言っても子供服なんて買ったことないしなあ……」



 うーん、としばらく悩んだ後、結局俺は店員のお姉さんに助言を求めた。



「あの〜……すみません」


「はい! いかがなさいましたか?」



 勇気を振り絞って話しかけると、お姉さんは百点満点の笑顔で答えてくれる。



「ええっと……」



 子供達の服を、と言いかけて、いや、俺の子供ではないからどう言えば? と思い直して口籠ってしまった。


 俺と、双子の関係を改めて説明しようと思うとどうにも難しい。

 面倒を見ている子供? ただの保護対象?


 なぜだかそんな説明がしっくりこずに喉奥で回れ右をして引っ込んでしまう。


 完全に不審者な俺に対しても笑顔を崩さないお姉さん。あなたの接客スキルは素晴らしい。



「あ、そうだ、親戚の子! 双子で、髪の色が――」



 ぎこちなくアルクとシエルの特徴を説明して、数着服を選んでもらった。その中から二人に似合いそうだなと思った服を無事に五着ずつ購入。

 なんとか選べてよかった。気に入ってくれるといいな。


 その後、しっかり自分の服も手に入れて、お姉さんに何度もお礼を伝えてから店を出た。


 あと買わないといけないのは……野菜と果物の種や苗だな。


 ブラブラと久しぶりの王都を眺めつつ、行きつけの青果店に入った。

 ここは野菜や果物だけでなく、薬草の類まで取り揃える店だ。


 種や苗も置いているので、トマトやにんじん、じゃがいもなどの野菜に加え、イチゴやイチジク、レモンにオリーブといった苗木を選んだ。ついでにポーションの素材や傷薬の材料も買っておくか。アルクとシエルに調薬についても教えてやりたい。


 素材は探せばダンジョンに自生しているだろうから、いつか探しに行こう。根っこごと拠点近くに植え替えて薬草畑を作るのもいいかもしれない。やりたいことが無限に出てきて困るな。



「すみません、お勘定お願いします」



 必要なものをカゴに入れて会計を頼みに店主のおっちゃんに声をかける。



「んお? なんだ、フードを被ってっから一瞬分からなかったが、リアンじゃねえか。久しぶりだなあ」



 げっ、バレた。流石にこの店にはダンジョンに潜るたびに買い付けに来ていたから、フードだけじゃおっちゃんは誤魔化せなかったか。



「えーっと、ご無沙汰してます」


「最近めっきり来ねえから心配してたんだぞ? 冒険者を辞めたって噂もあるぐらいだ。一体どこで何してたんだ?」



 うっ、痛いところをついてくる。やっぱりある程度噂は広がっているんだな……。



「はは……まあ、ちょっと冒険者業は休業中ってところですかね。のんびり過ごしてます」


「そうか。ま、何があったか詮索はしねえが、お前さんが元気そうで安心したよ。また近くに寄った時には顔を出すんだぞ」


「はい、ありがとうございます」



 深く事情を問われないで安心した。それと同時に、俺が冒険者として紡いできた縁が確かなものだったのだと感じることができて、なんだか胸が詰まってしまった。


 おっちゃんは、「おまけだ」と言ってリンゴを幾つか分けてくれた。



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