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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

禁ずべき時間

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 一日のはじまりは朝にあり……といいたいところだけど、実際には違う。そのような人、多いんじゃないかな?

 起きるのは昼……いや、ヘタすると夕方近くなんてこともあるかもしれない。休みの日などのゆっくりできる時についつい布団を友達にしてしまって、起きることがかなわないままズルズルと時間を使ってしまう、なんてことだ。

 一日が24時間よりも多ければいい、とは誰もが一度は考えたことがあるんじゃなかろうか。それが眠る時間でなくても、自分が取り組むべきこと、取り組むたいことのために時間がもっと欲しい……と思うことはしばしば。私にだってある。

 それでも時間は等しく24時間しかないのだから、早起きは些細ながらも大事なこととして、長く伝わっているな。しかし、本当に世界のどこでも24時間しか、一日はないのだろうかね?

 私の昔の話なんだが、聞いてみないか?


 よく覚えている。当時は子供たちの間でテレビゲームが流行した時期だった。

 学生だった私たちもご多分に漏れず、それらのブームに乗ってハードとソフトをそろえて、ゲーム攻略にいそしんだものさ。

 子供の時分で、自分たちの能力を競うといったら、どれだけうまいか、どれだけでかいか、そしてどれだけ早いかこそがステータス。そうなると攻略が早いものこそ、一目おかれるのは自然な流れだった。

 据え置き機だと、みなそれなりの環境がないとできないこともあって、そこまで極端な差は開かなかったな。しかし、携帯ゲーム機の隆盛に伴い、すき間時間を縫ってプレイする子たちなどが増えて、なかなか問題になった。

 学校には不要物を持ってくるべからず、とルールで決まっていたから発覚して没収されてしまった子もちらほらいる。そうしてカミナリを落とされる恐れを踏まえても、時間さえあればプレイして優位性を保ちたかったんだ。

 ひとえに、みなから羨望のまなざしを浴びる、高みからの景色を得るために。


 しかし、ある時からそのてっぺんの景色を、ひとりの友達が独占するようになった。

 据え置き機勝負なら、先ほどいったように大差が生まれないので、真っ先に攻略を進められている人の順位はまちまち。しかし、携帯機に関しては彼がダントツで先に進めていることばかりとなった。

 はじめはハッタリかと思っていたけれど、試しに聞いてみたゲームの今後の展開や攻略法などを尋ねてみると、いずれも正確なものだ。このころはインターネットなどの情報網はないし、自分で体験する以外に、信ぴょう性ある情報を得られる機会はほとんどなかった。

 間違いなく攻略を進めている。けれども、いつそのようなゆとりがあったのか。

 彼は品行方正で評判だったし、ほかのしょっ引かれた子たちのようにゲーム機を持ち込むような真似はしていない。じゃあ、どうしているのか。

 そう尋ねてみると、彼は特別な場所があると、案内してくれたんだ。

 そこは学校の裏山の一角。ひときわ大きい樹の根元の根上がりの部分だった。

 もとの根が太く、密度も高いこともあって、外からの光をほぼ遮ってしまう空間がその中にある。

 先導する彼に続いて私が見たのは、ブルーシートと自転車用のライトをうまいこと根に引っかけるようにして、手元を照らせるようにした明かり。そして携帯ゲームたちだった。


「ここだと、短い間でめちゃくちゃ長くゲームを進めることができるんだよ」


 単に効率がいい、という話ではないだろう。それなら静かな空間でさえあれば十分。

 となると、彼がいっているのは……と私は直感する。

 よもやと思いながらも、いったん勉強道具を家においてゲーム機を持ってきた私は、そこで彼とプレイしてみたんだよ。


 私は時計を用意し、一緒にプレイしながらも時間を気にしていた。午後5時の門限に間に合うように帰るよう、家で厳命されていたのもあるが、想像していたことを確かめたいのもあったからね。

 そうして門限に間に合うまでの2時間あまりを過ごし、外へ出てみる私。ここにはあらかじめ別の腕時計を転がしておいたんだ。

 そこではっきりしたよ。あの値上がりの下と外の部分とでは時間の流れが違うことが。

 根上がりの下で過ごした2時間は、こちらにとって2分そこらの時間に過ぎなかったんだ。

 彼は少し前からこのことに気づき、最近はもっぱらここで携帯ゲームをしているとのことだった。


 ――いやいや、やばいってこんなこと。


 そう直感した私は、彼にここでのプレイを止めるよう説いたが、結局きいてはもらえなかった。

 なまじ優等生でもあった彼だ。自分が誰かにおくれを取ることに対して、私たちが感じる以上の屈辱を覚えていた可能性もある。それを克服できる環境を得られたとなれば捨てることもかなわないか、と。


 それから数か月後。彼はクラスに通ってくることはなくなったんだ。

 死んでしまったからさ。行方不明になった翌日に、彼の死体が例の根上がりの下から見つかったんだ。

 とても学生とは思えないほど老いさらばえた彼の死因は、老衰による臓器たちの不全だったんだよ。

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― 新着の感想 ―
時間の前借りでもしていたんでしょうかね。悲しい結末でしたが、やはり時間は平等に与えられていたのかなと思ったりです。 面白かったです。
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