表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やらかしていた男子ぼちぼち頑張る。  作者: ぐっちょん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/129

第82話

ブックマーク、評価ありがとうございます。

 このイベントは、紅組と白組と別れたグループが、自分たちの持ち歌を交互に歌い合い競うのだが、でもそれだけだとあまり売れていないグループは印象的に残らない。

 だから歌い終わった後に設けられているわずかな時間にちょっとした得意技を披露していたりする。


 それは手品だったり、歌と関係ないダンスだったり、コントだったり、モノマネだったり、念動で2つの物を同時に動かしている子もいて驚いたが(ミルもできる)、意外性があってこれがなかなか楽しい。


 楽しいのだが……


 スクリーンモニターに視線を向ければ、その下、4分の1くらいの位置には俺たち審査員の姿がずっと映りっぱなしになっているのだ。


 ぼーっとしている間抜けな姿を見せる訳にはいかないから気が抜けない。

 紅組、白組のリーダーからコメントも頻繁に求められるしね。


 申し訳ないと思ったのが、すごいとか面白かったとか、そんな大した事のないコメントしか言えなかったんだよね。

 審査員は初めてだし、何を言っていいか分からなかったんだ。大目にみてください。


「タケトく、じゃなくて、タケトさーん。ちょっとお願いがあります」


「お願いですか?」


「はい」


 最後の組のゆうの得意技披露に至ってはわざわざ俺をステージ上まで呼んでメイクをされてしまった。


「はい! 次は私、にこがタケトさんのヘアスタイルを整えますよ〜」


 ゆうの後に続く白組の子は俺の髪型を整えたいと言い、流す程度で緩めに纏めていた髪型を俳優さん並みにすっきり綺麗に整えられてしまった。


 メイクしてヘアスタイルを整えただけなのに、なんか別人になった気分。みんなもそう思うよね? ……え、思わない? 俺は俺らしい。


 お客さんたち無言で見ていたけど、大丈夫かな。面白くなかったんじゃないの? 『ふおーいあーず』の足を引っ張る形になってないか心配だったけど、すべてが整えられると会場から割れんばかりの拍手がおこり、さらに、


『きゃー!』

『タケトくーん!』

『カッコいい〜』

『似合ってるよ〜』

『タケトくーん』

『こっち向いて〜』


 カッコいいとか似合ってるとか、お約束の言葉まで観客席から聞こえてきて、みんなの優しさに涙が出そうになったよ。


「えへへ、お待たせしました。みんなもそろそろ『武装女子』の歌が聴きたいと思っていた頃ですよね。大丈夫、ちゃんと準備してますよ〜」


 ゆうがおどけた口調で話しつつ両手を広げて、ステージ後方のカーテンに身体全体を向けと、


「どうぞ」

 

 ゆうの掛け声に合わせて後方のカーテンが中央から左右に分かれてゆっくりと動き出した。


 ——なるほど……


 俺がメイクや髪型を整えてもらっている間にステージの後ろでは俺たち『武装女子』が演奏できるように楽器なんかをセットしてくれていたのね。


 段取りがいいというか、さすがプロだね。スタッフさんたちの手際がいい。


 ドラムのチコとキーボードのツクの位置だけが少し後方になるけど、ボーカルの俺やベースのナコとギターのシマは前方に移動すれば問題ないか。


 しかし、みんながいつでもオッケーと言わんばかりの顔で定位置に着いているのね。

 まあいいか、緊張はしてなさそうだし。


『きゃー』

『わー』


 観客席からは、俺たちに期待するように、カーテンが開いてからずっと割れんばかりの拍手が鳴り止まない。

 これはもう思いっきりやるしかないよね。


「それじゃタケトさん。お願いします」


 ゆうからマイクを渡されると、ゆうとにこさんはステージから降りていった。


 俺たちはあらかじめ二曲歌ってほしいと伝えられていたので、さっそくみんなに合図を送り一曲目『君の側で』の演奏に入る。


 ♪〜


 もちろん、ここはアイドルグループ『ふぉーいあーず』のステージなので下手な演奏はできない。俺たちはいつも以上に気合いを入れて望んだ。


 ♪〜


 気持ちも乗り今日は喉の調子もいい。おっと、意図せず漏れてしまうらしいリラクセーションはいつものように上空に散らすイメージを忘れてはダメだ。


「ふぅ……?」


 一曲を歌い終えると静まりかえっている会場内。やばい、みんなアイドルが好きで来場しているお客さまだから、俺たちの歌とは趣旨が違ったのかも、と不安が過ったその瞬間、


『わー』

『きゃー』


 黄色い声と共に拍手の嵐が巻き起こる。拍手を一生懸命してくれている人の中には涙を流している人の姿もある。


 ——よかった。


 大きく滑ってなかった会場の様子に安堵した。


「えっと、皆さまこんにちは。武装女子ボーカルのタケトです」


 それからバンドのメンバーを簡単に紹介してから、今日サプライズゲストとして迎え入れてくれた『ふぉーいあーず』のみんなや関係者、観客の皆さまにお礼を伝えてから二曲目『微笑みを君に』に入った。


 ♪〜


 この曲のコンセプトは、みんなが楽しくなれるようにイメージして作られた曲らしいから泣かれる心配はないと思っていたけど、あれ?


 二曲目も無事に歌い終わるとみんなが立ち上がり大喝采してくれるも、その顔には涙が伝っている。


 おかしいな、と思ったら『ふぉーいあーず』のみんなが「感動しました〜」と言いながらステージに上がってきた。

 そんな彼女たちの瞳にも涙の跡が……


 そのまま雑談トークに移ったので、涙の事には触れないでいたけど、なぜかゆうたちが、俺たちの歌のことをベタ褒めしてくる。


 俺も負けずにみんなの歌やダンスを褒めて褒めて褒めまくった。素直にうまかったし楽しかったから、その気持ちを伝えただけよ。


 そうしている間に後方のカーテンが閉まり、俺たちもそろそろステージからお暇しなければ……なんて思っていたら、


「ふふふ、楽しい時間ってあっという間だね。それじゃ最後に『ふおーいあーず』の曲『マサカのサンバ』をみんなで歌って踊って盛り上がってバイバイしようね。

 あ、武装女子の皆さんはこのまま一緒に踊りましょう〜」


 ゆうの突然の言葉に戸惑う俺たちバンドのメンバー。


 これは聞いてなかったことなので、これはゆうのアドリブなのかな? 結局降りるタイミングを逃してそのままステージに残り、俺たちは彼女たちと一緒にダンスを踊ることになった。


 マサカのサンバは誰でも見よう見まねで簡単に踊れるダンスだったので楽しく踊ったけど、ゆう、突然のアドリブはやめてくれ。心臓が止まるかと思った。


「みんな今日はありがとうね〜」


 最後に審査員から集計した結果を発表してハッピーディイベントライブは無事に終えた。


 ただこの舞台の裏では大変な事になっていて、ネッチューブの配信、コメント、同接数を監視していたマサカ社のスタッフたちは大騒ぎ。


 ただ、ステージにいた俺たちがその事実を知るのは何もかもが終わった後の事であり、『マサカ社アイドルグループ。ハッピーディイベント! ふぉーいあーず歌合戦。スペシャルゲストも来るよ』の再生数は生配信が終わった後も動画としてアップされ伸び続けていた。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。


※感想、誤字脱字報告ありがとうございますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ