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やらかしていた男子ぼちぼち頑張る。  作者: ぐっちょん


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第79話

ブックマーク、評価ありがとうございます。

「ありがとうみんな。ありがとうね……ぅぅ」


「さちこ?」


「さっちゃん……」


『武装女子チャンネル』の収益化の申請が通り初めて広告収入が入ってきその日の放課後。ネネさんのスタジオでさちこが突然泣きながら俺たちにお礼を言い出した。


 これは新曲『微笑みを君に』をアップして3日後のこと。

 今も再生数はすごい勢いで伸び続け、急上昇ランキングでは沢風くんの動画を初めて追い抜き1位に輝いた。

 その影響なのか、先に上げていた自己紹介動画が5位に、一曲目の『君の側で』が6位にまで上昇した。


 みんな大喜びで、わいわい、がやがや、スタジオ内の雰囲気はとてもいい。

 俺もみんなの喜ぶ姿を見て元気が出たし嬉しくもなった。


 ちなみに2位は沢風くんが昨日アップしたばかりのダンス動画で、3位、4位は女性ネッチューバーさんだが本職はアイドルや女優の子たちのおしゃべり動画だ。


 もちろん登録者数も以前の倍、800万人くらいに増えて1000万人超えも見えてきた。


 ただ動画数が3本しかないから次の動画も楽しみにしています、というようなコメントが多い。


 俺はそんなに焦らなくてもいいんじゃないかと思うけど、みんなは勢いのある今だからこそ早く期待に応えたい模様。

 

 それで毎日のように今後の活動について色々と話し合うんだけど活動はいまのところ順調で『武装女子チャンネル』の収益化の申請も通り、ついに初めて広告収入が入ってきんだよ。


 そうしたらさちこが突然泣き出してしまったわけだ。


「さちこちゃんどうしたの?」


「さちこちゃん」


 さちこは落ち着くと突然泣いたりしてごめんなさい、我慢でしなくて、でももう大丈夫です。と謝ってきた。

 いつも陽気で元気なイメージしかなかったからとても心配だ。


「さちこ、本当に大丈夫なのか?」


 言いづらいなら無理に聞かない方がいいけど、何かあったと思うんだよね。


「さっちゃん。もしかして」


「さちこちゃん。遠慮しないで。私たち仲間でしょう」


「そう、話せるなら話して欲しい。力になりたい」


「みんな……ぐすぐす」


 再び涙を流し始めたさちこは、少し落ち着いてからぽつりぽつりと語り出したが、内容は家庭のことだった。


 普段から父親のところに通うさちこの母親は、中学2年の頃くらいから父親のところに行っては2、3日は帰ってこない日が続き、高校に入ると週に4、5日は帰って来なくなったとか。


 家賃と生活費は出してくれていたが、母親はさちこに興味がなく会話は少ない。生活費がいつか途切れるんじゃないかと不安になったさちこはネッチューバーになった。


 母親が泊まりで通い出してから始めた自炊を活かして何かできないかと考えてのことだったらしい。


 それからだんだんと母親が家賃や公共料金の支払いに対して不満や愚痴が多くなり、つい先々月あたりからは母親自身が帰って来なくなったそうだ。


 たぶん父親の元で生活しているのだろうという。


 それならさちこも一緒に過ごせばいいと思うが、残念ながら父親は子どもが嫌いらしく、さちこは一度もあったことがないそうだ。


 当然それから家賃や生活費の振込はなく、母親に連絡してもスルーされる日々。


 いつかそんな日が来るんじゃないかと思っていたからすぐに学費を含め、全ての引き落としをさちこ名義に変更したそうだけど……ショックだっただろうと思う。


 大学進学資金を貯めていると聞いていたお弁当チャンネルとちょっとしたバイトの収入も、こんな日がいつかくるんじゃないかと備えていた生活費のためだったらしい。

 

 でも、今後は自分で稼いで全てを払っていかないといけないと不安になっていたところに、武装女子チャンネルの広告収入がとんでもない金額で驚きつつも、これでお金の心配をしなくてもよくなったと思ったら気が抜けたそうだ。


「お母さんとそんなことになってたんだね。さっちゃん。気づいてあげれなくてごめんね」


 つくしは中学の頃からの友だちだから家庭の事情を知っていたっぽいけど、母親がまったく帰って来なくなったことまでは知らなかったようだ。


 結婚した女性はそのほとんどが通い妻になるらしいが、ごく稀に男性の気まぐれで住み込みの妻になる女性もいるらしい。

 

 たださちこの母親は通い妻から住み込みの妻になったから稀なケースなんだとか。


 ——あれ、ということは……時期的にも、そんな大変なことになっていたのに俺のお弁当も作ってくれていたのか……


 俺も1人になった不安や寂しさは分かる。だから気づけば、さちこを抱きしめていた。


「さちこ、俺も武装女子頑張るからな」


 そう思うと同時に手当があり生活に不安のない男性がいかに優遇されているのかと情けなくもなった。


「さっちゃん、私も頑張るよ」


「私もよ」


「うん」


「武人くん……みんなもありがとう」


「え、あ、うん」


 みんなの声で我に返り顔を赤くさせていたさちこから慌てて離れた。


 珍しくななこが物欲しそうな顔をしていたのでぽんぽんと頭を撫でておく。

 あら、頬を膨らませて不満そう。あれ、さきにつくしまで……


「も、もしかしてさちこみたいな子って多いのかな?」


 慌てて思ったことを考えることなく発言してしまったが、次の瞬間には、軽い気持ちで聞いていいことじゃないのかも、と後悔した。


 すぐにクラスの委員長をしているさきが答えてくれたからよかったものの、発言には気をつけようと思った。


「それは私もちょっと気になってて……」


 さきも全て把握しているわけじゃないが、クラスにも何人かそういう子がいて、そんな子はいくかのバイトを掛け持ちして頑張っているのだと教えてくれた。


「そうなんだ」


 さちこが落ち着いた後はゆっくりと過ごしたが、みんなが何やら考えている様子。


 かく言う俺もさちこやさきの話を聞いてからずっと考えていた。


 そう、俺にも武装女子チャンネルの収入が入ることになっている。これは元々貰うつもりのなかったもので、しかも男性だから全て非課税なんだ。

 この収入を何かに活かせないかとね。


 しかし、自分では考えが纏まらず自宅に帰り香織さんに相談してみることに。


 例えば、そんな子たちにアパートを無料で……は、さすがにやり過ぎなので、格安で提供すれば少しはゆとりある生活ができるのではないかと、住むところさえあれば心の持ちようだって違うのではないかとね。


「武人くん、それはね……」


 しかし、香織の答えは良いものではなかった。男性は自らが居住するための不動産以外の不動産は所有できないとね。


「え、それじゃあ……」


 ならば法人化して法人で買えばどうだろうかと尋ねてみれば、男性は代表者にも役員にもなれないのだとか。理由は妻を複数人持つことになる男性だから、それを認めると相続で揉めることになるからだそうだ。


 だから俺はこの家では世帯主だけど、香織さん自身も俺と結婚してはいるけど名字も変わらず野原家の世帯主のまま。


 つまり俺が香織さん以外の妻、えっと仮にネネさんとの間に子どもがいたとしても、そのネネさんとの子ども(女性のみ)はネネさんちの松川家の相続権はあっても野原家での相続権は発生しない。


 香織さんがネネさんの子を養子として迎え入れれば話は変わるらしいけど、これは妻たちの資産を守るためのものだ。


 男性の資産? ほとんどの男性が持ち家くらいしかないので、それは男性が好きにしていいことになっているが本人が亡くなればその資産も国に返還されてしまう。


 なんだそれ、と思うけど納得もできた。


 でも、そんな現実だから男性は何もしないし、自分で稼ごうとする男性もいなくなったのだ。


 だから男性が非課税になるのも、収入のある俺は特別なケースで、収入のある男性がいないから非課税扱いのまま、課税対象者にする必要がなかったのだと。

 俺は男性が優遇されているからだと思っていたけど、男性もなかなか……


「そっか、香織さんありがとう」


「ううん。いいのよ。それじゃあ私はミルさんと一緒に夕食の準備をしてくるわね」


 いつもにもまして上機嫌で相談に乗ってくれた香織さん。

 実は俺の提案で結婚記念の写真(ウェディングドレス着た香織とタキシードを着た俺の写真)を撮ったんだ。


 この世界では初めてのことだったらしくすごく喜ばれた。


 その記念写真は引き伸ばされて香織さんの会社にも飾られていて、お客様からの評判もよいと、今も俺のほっぺにキスをしてから台所に向かっていった。


「いまは武装女子チャンネルを頑張るしかないか」


 香織さんたちが台所に向かってからも、しばらく考えていたが結局、何も良い案が思いつかなかったのだ。そんな時、


 ピロン♪


 MAINにメッセージが届いた。


「ん?」


 ゆう:武人くん、動画みたよ〜


 それはマサカ社のアイドルグループ『ジャニュアリー』のゆうたちからだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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