第78話 (面堂未留視点)
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3限目と4限目は教室での授業でしたので教室の後ろに置かれた椅子に座り見守り、休憩時間に入った。
みんなが机を移動させて……? なるほど、みんなで机を並べて食べるのですね。
俺の分のお弁当はいらないけどミルさんの分は準備した方がいい、と武人様が言っていた理由が分かりました。こういうことでしたか。
みなさまが持ち回りでお弁当を準備してくれているのですね。
香織奥様も分かっていたから無理にお弁当を作ろうとしなかったのですね。
そんなことを考えていると、
「ミルさん。ミルさんもこっちで一緒に食べましょう」
武人様から誘いを受けましたが、どうしましょう。
この姿は無駄に横幅があるのでみなさまのお邪魔になるのは目に見えている。
せっかくの武人様からの誘いですが、迷惑をかけるわけにはいきません。ここは辞退をしましょう。そう思ったのですが、
「ミルさん、こっち。こちらにどうぞ」
そう声をかけてくれたのは、たしか委員長であり武人様のバンドメンバーでもあるさき様。そのさき様が手招きしています。
さき様の席は机を並べた角の方ですか。なるほど、その隣りならば横幅のある私が座っても邪魔にはなりませんね。
「さき様ありがとうございます」
「ううん。私もミルさんとお話ししたかったから」
武人様の分のお弁当は用意していませんが、デザートはたっぷりと用意しています。
フルーツとクリームの入ったミニクレープにビスケットサンドやクッキーサンド。
好みが分かりませんのでたっぷり準備しましたが、武人様の性格上、武人様1人分だけお出ししてもみなさまに遠慮して食べてくれなかった可能性が高かったので幸いでしたね。
「デザートです」
軽く盛り付けて食事をご一緒しているみなさまの前にデザートを並べていけば、どこから出しているのか不思議そうに見られていましたね。もちろん武人様も。
ふふ、これは念出ですよ。念出は使いなれてくると、アポート(あらかじめ指定していた場所から物を取り寄せる)できるようになるのですよ。
まあ念出自体、国家資格がないと使用できませんが……
保護官ってすごいという声が耳に心地よいですね。
私は武人様の保護官です、大したことないと侮られる訳にはいかないですからね。
「武人くん。今日はみんなスタジオに行けるんだけど武人くんもどうかな?」
「武人くん、行こうよ」
放課後になると隣の席に座っていたつくし様とさちこ様が武人様をスタジオに誘っていました。
「そうだね。俺も元々スタジオに行くつもりだったから一緒に行こうか」
こちらにチラリと視線を送ってくる武人様。事前に、もしかしたら帰りはスタジオに寄るかもしれないと聞いていましたので問題ないです。
私はこくりと頷き肯定しておきます。
武装女子の新曲の動画を早くアップしたいと言うみんなの声に応えたいのですよね。実は私も密かに楽しみにしていますよ。
さき様、ななこ様、つくし様、さちこ様と新曲について話しながらスタジオに向かう武人様。
私はというと、
——いますね。
不自然な動きをする輩を複数人発見する。場合によっては排除しなけらばいけないのですが……
どうやら遠巻きに見ているだけのようですね。情報収集が目的なのでしょう。
そこで取り出したのは朱音様からお借りした音声遮断の念導具。
遠隔から念能力を使って情報を得ようとする者にとっては最悪の念導具でしょう。
さっそく使用すればその輩たちに焦りの色が現れました。
そのタイミングで私は気配を消して警戒心を強めます。
念能力で情報が得られないと知った輩が強行手段に出るとも限りませんからね。
——消えましたか。
不審な輩は退却するという選択肢を選んだようです。
残念ですこちらに向かって来てくれればまとめて排除できたものを……
相手が複数人いるため、この場から迂闊に離れられないのが痛かったですね。
「ミルさん。ここが俺たちがお世話になっているスタジオです」
「はい」
「ネネさんいるかな。ネネさんにもミルさんを紹介しときたいんだけどな」
そんなことを呟きながらスタジオの中に入って行く武人様。メンバーの方たちもその後に続きます。
私も不審な輩の感情色が見えなくなったので中に入るとしましょう。
「お! あなたがミルさんだね。私は松川音々、ネネちゃんって気軽に呼んでね」
パチリと片目を閉じてウィンクをしてくるネネ様。
右手をごく自然に差し出して来たので握手なのだろうと私も右手を差し出せば、がっちりと握ってくる。
「……」
「ミルさんだから、ミルっちね。ミルっちよろしく」
ミルっち? 何ですかこの人は。私に対する感情の色がすでに好意なんですけど、これは女性が男性に向ける色と一緒ですが……理解不能です。
「あ〜ミルさん気をつけてね。ネネさんって女性が好きなんだって」
香織奥様に聞いたと話してくれる武人様。女性なのに女性が好きって、やはり理解不能です。というかこの感覚は変装が見破られています。この人は何者ですか。
「失礼な。私、武人っちのことは好きよ。あ、その顔はウソだと思っているわね。いいわよ、今度かおりんと武人っちのベッドに潜り込んでやるから。にしし」
「いやぁ、それは遠慮しときます」
「どうしようかな、私はかおりんも武人っちも好きだからな……ふふふ」
「あはは、俺もネネさんは好きですよ……なんて冗談はこれくらいにして、ネネさんにミルさんのことを紹介できたし俺はスタジオの方に行きますね」
武人様は冗談だと思っているようですけど感情色の見える私からすると……
「ミルっちは保護官だよね。特等席があるから私と一緒にそっちで見学しましょう」
「はい」
ミルっちと呼ばれるのはちょっとむずむずしますが、まあ武人様や香織奥様と仲が良く、悪い人でもないようですから……好きに言わせておきましょう。
「ミルっち。ここよ」
案内された先はステージから少し離れた位置に設置していたソファー。観覧席にお客様がいないからこの場所からでも十分に演奏の様子が見えます。
「……!?」
『君の側で』を演奏した後に、新曲の音を合わせを始めましたが、生演奏はすごいのですね。初めて生で聴きましたが迫力が全然違います。
柄にもなく1曲目から感動して涙が出てしまいました。
不覚にもネネ様にバレてしまい優しそうな笑みを向けらてしまいましたよ……
2曲目の『微笑みを君に』は1曲目と打って変わって楽しくうれしい気持ちになりました。
胸の内側からポカポカと、さき様、ななこ様、つくし様、さちこ様がうれしそうに曲を弾き武人様が楽しそうに歌っていましたから、聴いている私まで楽しくなったのでしょう。
ネネさんからもそろそろ収録しても問題ない言われて大変喜んでいました。
同じ目標をもったみなさまが喜び合う姿はいいものですね。
「ミルさん。今日はお疲れ様。初めてのことばかりで大変でしたでしょう」
武人様と自宅に帰ってくれば先に帰宅していた香織奥様に出迎えられました。
急いで食事の準備を、と思いましたが、
「大丈夫ですよ。今日は早く仕事を切り上げてきましたから」
「すみません香織奥様」
「これから一緒に生活するのだから、そこはありがとうの方がいいかな。ふふ」
「はい、ありがとうございます」
香織奥様が準備されていた食事を3人で一緒に済ませてリビングでゆっくりとさせていただきましたが、こんなにも穏やかな気持ちのまま1日を終えることなんて……いつ以来でしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




