第5話
生配信を終えた翌日
「おかしいな……」
登録者数が100万人近くまで増えていた。ツブヤイターのDM数もすごい。その内容は配信をやめないでというものが多いが……
けど、俺の気が変わることはない。俺は記憶が戻ってからの3ヶ月、自業自得なんだけど、色々あったから心身ともに疲れているんだ。しばらくは何も考えずにぼーっとして過ごしたい。
ピンポーン!
「来客? 珍しいな、誰だろ」
インターホンのモニターを確認すると、業者っぽい格好をした女性が数人見えた。
「どちら様でしょうか?」
「はい。私は野原建設の野原と言うものですが、本日は以前ご自宅の改修工事についてご相談を受けた件につきましてお伺いいたしました」
——野原建設……?
ああ、思い出した。この家を建てた業者さんだわ。仕舞ってあった建物の図面を引っ張り出して確認したから間違いない。一番始めに相談した先だし。
「えっと、野原建設さんには確かに以前改修工事の件で相談したことはありますが、すぐに断られましたよ」
電話対応してくれた女性に名前と住所を伝えたら有無を言わさず断られたんだよね。感じの悪い相手だったな。
「はい。そちらの件も含め、お詫びを兼ねてお伺いさせていただきました」
モニター越しに頭を下げている業者の方たち。他のどこの業者からも断られている現状だ、改修工事は正直してほしい。一度断られた先だけど話だけでも聞いてみようかな。
「今からそちらに行きますので少々お待ちください」
モニターを切ってから開き門のところまで行く。門さえ開けなければ中に入って来れないからね、ってなんだこれ。
「えっとなぜに土下座? 困りますから土下座はやめてください。やめないと俺、家の中に戻りますよ」
業者の方は当然に女性なのだが、ウチに来ていた4人が4人とも土下座をしたまま俺の事を待っていたのだ。驚いたよ。
俺の言葉に渋々といった様子で立ち上がる業者さんたち。立ち上がったら立ち上がったで何度も頭を下げてくるが、
「っ」
でもね、俺の姿を見てから一瞬動きを止めるって失礼だよね。変わりすぎって言いたいのかな? 俺だって別にダイエットを頑張った訳じゃないんだけどな。毎日の片付けと限りある食材を節約しながら過ごしていたら普通に痩せていたんだよ。
イケメンですね? あはは、お世辞は結構ですよ。
どうせ俺はデブだったからね。自分の容姿に期待なんてしていないから。
「それよりも話って何ですか?」
「は、はい。剛田様のご自宅は設計から建築、外構工事まで全てウチが手がけた物件でした。
10年保証の期間内であるにも関わらず電話対応したウチの者が私情で剛田様に断りを入れ、不愉快な思いと、ご迷惑をおかけしました事、大変申し訳く思っております。
つきましては、そのお詫びの意味も兼ねましてウチに改修工事の方をさせていただきたいのです。もちろん費用は一切いただきません。あ、これはつまらないものですけど、どうぞ」
「あ、どうも」
受け取らないのも失礼になる。俺は開き門の隣にある、宅配品なんかを受け取るちょっと小さめの扉の方を開けてから菓子折りを受け取る。ずしりとしたこの重さ、羊羹かな。渋いな。
「それで剛田様としてはどうでしょうか? お返事の方は……」
「えっと、俺としては大変ありがたい話ですが、本当に改修工事をしてくれるんですか? してくれるのなら別に費用がかかってもいいですよ。なんか悪いですし」
「いえいえ、元々こちらの対応に問題があったのです。先ほども申した通り無料でさせていただきますよ。というかさせてください。
それで……あ、私今回剛田様のご自宅を担当させていただきます野原香織と申します」
差し出された名刺には野原建設、常務取締役とあった。二十代半ばにしか見えないのにお偉いさん(役員さん)だった。
その後は家の状態を見たいというので彼女たちを敷地内に入れ、あとは勝手に家の中を見てもらうことにした。
貴重品は地下シェルター内の金庫に入れているし、盗られて困るものはないからね。
襲われる心配? 炎上していたころは別の意味で襲われる危険性があったが今は大丈夫。と思う。
男女比1:10だけど、貞操概念が逆転しているわけではないので女性がガツガツ襲ってくることはないんだ。
でも犯罪を犯す人は犯すし、同性同士の会話が過激になっていたりはするだろう。ネッチューブでしか知らないけど。
でもそんな事は前世でも普通にあったことだ。
ただし男性は女性からの視線を容赦なく受けるし、話しかけられもする。そのマジマジと見られる視線や話しかられることを鬱陶しく感じる男性は多く、それを避けるために引きこもる傾向にある。
男は基本的に傲慢で俺様系の人が多く自己中だからね。嫌はものは嫌なんだろう。これもある女性評論家がネッチューブで話しているのを見ただけだから本当かどうか知らないけど。コメント欄を見ると、そんな感じの男性は多そう。それでもいいという女性もね。
「これは酷い」
「剛田様は、こんな状態になった家にお一人で……」
「想像以上に酷かった」
「来て正解でしたね」
玄関に入った業者さんたちの第一声がこれ。俺は聞かなかったことにして邪魔にならないように雑草でもむしってようかな。
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——
1時間ほど家の中の状態を確認したり、撮影したりしている業者さんを遠巻きに眺めていれば、野原さんがこちらに向かってくる。終わったのかな?
「剛田様、ご迷惑でなければ、明日から早速取り掛からせていただけたらと存じますが、ご都合の方はどうでしょうか」
「えっと、あーはい、大丈夫です」
特別することはないのでお願いすることに。え、工事期間中、滞在できるホテルを準備する? いえいえそこまでしていただかなくても。寝れる部屋はありますから、ほら、地下シェルターとか。
「今日はお時間いただきありがとうございました。すぐに剛田様が住みやすいご自宅に戻させていただければと存じます。その、剛田様、もうしばらく、我慢してくださいね」
涙を浮かべながら野原さんが最後にそんな言葉を残して帰っていった。
建築のプロが泣きそうなほど俺の家は酷かったらしい。
最後まで読んでいただきありがとうございますm(__)m




