第165話 五章 2年生
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「おはようございます新山先生」
「おはようございますタケトくん」
今日から2年生。ありがたいことに担任は新山先生のまま、というか、1年生を担当していた先生方はみんなそのまま2年生を受け持つ形になったらしい。
たぶんこれは俺のせいでもあるかも。
3月の終わり頃だったかな、校長先生から突然連絡があり希望する担任の先生はいるかと聞かれお世話になった新山先生の名前を上げているからだ。
無理強いはさせたくないので新山先生に断られたら数学の佐藤先生も話しやすくていいし、他にも何人かの先生の名前を伝えていたけどね。
1年間よろしくお願いしますと微笑む新山先生。今日の新山先生はなんだか機嫌が良さそうだね。
ついでだから明日からのことを少し話しておこうかな。
「新山先生、明日からの事なのですが……」
それは男子生徒のことだ。始業式の今日は出席しないようだけど明日からは普通に登校してくるはずだ。
もしかしたらクラスメイトになるかもしれない。
新山先生は少し遅れて登校する俺に合わせていつも(俺が登校する日)正門で待ってくれているが、そういった対応を他の男子生徒にまでするとなればかなり大変だろう。
そう思ったからこその提案だった。
俺も流石に学校に慣れたしミルさんもいる。だからもう大丈夫ですってね。そう伝えたのに……
「そうね。でもね……」
新山先生がその事に関してはいままで通りで問題ない、俺は何も心配しなくていいと言う。
どうやら、同級生となる男子生徒は肥田竹人くんと尾根井三蔵くんで、3年生が陸奥利勝先輩。
3人の名前は聞いていたので覚えていたが、その3人の登校時間については午前中としかまだ決まっておらず彼らの気分次第らしいのだ。
知らなかったが彼らの昼食については先生方が順番でお弁当を準備しているとのこと。
ちなみに俺の方はというと、クラス女子の負担や妻たち(香織、ネネ、ミル)のことを考えて、妻たちが作ってくれるお弁当を持参するようになっている。
それでもおかずを1品だけでも食べてほしいとクラス女子からお願いされ、ご馳走になっている。
もちろん、もらってばかりは悪いので、仕事で県外に行った時なんかはちょっとしたお菓子のお土産を買ってきて、配ったりしているよ。
「本当ですか、無理してませんか?」
「ふふ、本当に大丈夫ですよ。ところでタケトくん……教室に入ったらきっと驚きますよ」
新山先生がくすくすと含みのある笑い方をする。なんだろう。今日の新山先生とても楽しそうだね。
……ってか俺、2年何組になるんだ?
「新山先生……驚くも何も、俺何組なのかもまだ知りませんよ」
「あら、そうだったわね」
「……」
「ふふふ」
「……」
「ふふ」
「あ、あの教えてくれないんですか?」
「そうね……でもやっぱり、行ってからのお楽しみってことにした方がいいかしら」
言いたそうで教えてくれない新山先生。
なんだかんだで、話題が逸れて気づけばサイキック健康体操の話になっている? でも、ありがたいことに新山先生は俺がイメージボーイになってから毎朝サイキック健康体操をするようになったのだとか。
クラスのみんなからもサイキック健康体操を始めたよってMAINはたくさんもらっていたけど、まさか新山先生までサイキック健康体操をしてくれているとは。うれしいね。
でもね。その時、歩きながらだったけど、俺の二の腕や胸筋、腹筋の辺りをちらちらと見ていたことには気づいていたんだけど……やはり、健康体操のあの衣装は不味かったのかと心配になる。
そんな話をしていれば、あっという間に2年の新しい教室にたどり着いた。
——2年A組だったのか。
「はーい。みなさん静かに」
新山先輩が教室のドアを開けた後、少し身体を横にずらして俺にも中を見るようにと目で訴えてきたので、少しだけ覗いて見れば、その瞬間に、待ってましたと言わんばかりの視線を、みんなから一斉に浴びる。
『あっ』
『きゃっ』
『きたよ』
『タケトくん!』
『タケトくんだ』
いつもなら手を振って応えるくらいの余裕はあるのだが、今はそれよりも驚きの方が上回った。
「こ、これは……」
「ふふ、どう? 驚いたでしょ」
「え、ええ」
2年生の教室はすごく広かった。というのも、教室と教室との間にあったと思われる壁がすべて取り壊されていて1つの大きな教室になっていたのだ。
とはいえ可動式のパネルっぽい間仕切りが境界辺りに見えているのでいつでも区切ることはできるようになっているのだろう。
「タケトくんの席はとりあえず教卓の前にあるあの席ね」
——えっ。
1年の時と同じ位置だ。またしても1番前の席でがっかりしてしまったが、その机の上には何やらタブレットらしきものが見える。
——あれは何だ?
気になった俺はみんなに挨拶をしながら自分の席に向かう。
みんな(クラス女子)からの視線をこれでとかっていうほど浴びるがあまり意識しないようにして、席に着く。
——お、やっぱりタブレットだったか。
「みなさんおはようございます」
俺がタブレットに気を取られている間に教壇に立った新山先生がホームルームを始めた。
「私が2年生クラスの担任になった新山美香です。今日から1年間よろしくお願いします」
それから副担任になった先生が3人(元1年生のクラス担任)と、その補佐をしてくれる先生が4人(元1年生のクラス副担任)が前に出てきて、簡単な挨拶をしたあとに、新山先生からクラスが1つになった経緯を説明してくれた。
ちなみに、先生たちの席はクラスの境目辺り、窓側に間隔を開けて机が並べられている。
そして、机の上に置いてあったタブレット。これは授業で使うためのもの。教室が広くなり後ろの席からでは前にある黒板が見えない。それを補うためのものだ。
今後はこのタブレットを使って授業を進めていく事になるらしい。
まあ、俺は1番前の、しかも真ん中の席だからあまり必要にならないのだけれど……と思ったらクラス全員の顔(自分の顔を含む)がタブレットには映っていて、居眠りなんかしていたらすぐにみんなにバレるようになっているっぽい。
これは気をつけ……なくても1番前の席に座る俺は寝れないけどね。
それから体育館の方で始業式があり、最後に生徒会から入学式についての連絡があった。
「生徒会からのお願いですが、毎年のことですから……」
——そういば、入学式だけは男子生徒も参加するんだったな……
俺も参加したので覚えている。男子生徒は自己中で協調性というものがないから、みんな好き勝手に行動する。
それでも女子生徒たちからは黄色い声が上がるものだから調子に乗る男子生徒もいたりする。
そういったことを踏まえて、必要以上に騒がないようにと注意喚起を促されて始業式は終わった。
でも、その帰り際に、3年生の方からものすごい視線を感じる。
何となく視線を向けてみれば、一度も見たことのない綺麗な感じの人が俺のことを見ていた。
「タケトくん、どうしたの?」
「いや、なんでもない」
あの人は誰だろう、なんて思ったのは一瞬のこと。その視線があまりにも鋭かった(睨まれているように感じた)のですぐに顔を背けてしまったよ。
——え、俺、知らない内に何かしてしまったか?
心当たりがあると言えばあるし、無いと言えばない。いや何言ってるんだろうね俺。とりあえず考えても今は分からないので、その後は俺と席が離れて寂しいと嘆くさきたちと一緒に教室に戻ったよ。
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