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やらかしていた男子ぼちぼち頑張る。  作者: ぐっちょん


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150/173

第150話

ブックマーク、評価ありがとうございます。

 あの子は1年生かな? 同じクラスじゃないけど見たことある子だね。その部員(女子生徒)が念道バック(自立型のサンドバックのようなもの)に向かって拳を打ち込む。


 ダンッ!


 豪快な音と共に、そのマシンの下辺りに108という数値が表示されている。


「おお……」


 100超えだ。これはすごいんじゃないかな? 前世(女性平均は60〜70くらい?)の感覚から思わず拍手をする……


「はあ、はあ、ども……」


 その部員は肩で息をしながらも、片手を挙げて応えてくれたが、表情は納得がいっていないような顔をしている。


「うーん」


 俺に付き添ってくれている部長さんも首を振っている。


 ——あれ。


 彼女たちの反応を見る限り、あまり良い数値ではなかったのかもしれない。


「これはね……」


 分かっていない俺を見かねたのか、部長さんが軽く説明してくれたけど、この競技は、念体を使いその破壊力の高さを競う『サイキックパワー』という競技の練習マシンらしい。

 かなり年季が入っているように見えるのはこの際気にしないけど、すごく気になる。


 この競技はとてもシンプルで念体を使いパワー測定マシンに向かってパンチするだけ。


 ただし、この競技というかマシン事態が、力任せにパンチしても反応しない。

 つまり念体の制御が甘ければ数値は低くなるのだとか。シンプルだと思っていた競技は、かなり繊細な競技だったみたい。


 ——簡易パワー測定マシンか……ちょっと触ってみたいな。


 実際に部員さんが普通に念体なしでパンチをしてもらったけど表示は0のままだった。いい音してたんだけどね。


「部長さん、108という数値は、大会ではどの辺りまでいけるんですか?」


「うーん。120はないと予選落ちしちゃうかな」


 なるほど、だから彼女は納得のいっていないような顔をしていたのか。


「あ、でも1年生で言えば頑張っている方だよ。ちなみに部長の私の最高記録は161です。えっへん」


「へぇ、すごいですね」


 ちなみにこの世界の一般女性、念体なしのパンチングマシーンの平均数値は30〜60くらいらしいが、残念ながら一般男性の記録はない。


「そうでしょ。すごいんですよ私は」


 部員さんが得意気に胸を張る。すごく褒めて欲しそうな顔を向けてきたので、素直に褒めておこう。


 150を超えてからは数値を1上げるだけでもかなり大変らしいから、本当にすごいのだとか。


 そんな話を聞くと、鍛錬時にとんでもない動きを見せるミルさんだとどれくらいの記録が出るのだろうか。

 かなり気になったが、パンチをした部員はまだ息を整えているんだよね。


 念体の展開中は、まるで水中の中で活動しているかのような空気抵抗? を受けるから疲れるんだよな。


 それでもパンチを1回しただけで肩で息をするほどの疲労はないと思うが……


「あー、彼女はちょっとハリキリ過ぎたのね」


 部長さん曰く、どうやら彼女は俺がいるからとハリキリ空回り、さらに今の1回にかなり集中していたようで、そのしわ寄せが一気に押し寄せてきたようだ。


「なるほど、勉強になります」


「そうでしょう、そうでしょう」


 俺が疑問に思った事を丁寧に教えてくれる親切な部長さん。ありがたい事に、笑顔で受け答えしてくれるからとても聞きやすい。


 そういえば、俺の場合は念体レベルは1だから抵抗という抵抗はほとんど感じず、さらにヒーリングの恩恵があるから疲労感もないんだよな。


 あ、でも念力は抜けていく感覚があるので念力は消費されていると思うけど、テレポートや念動で飛行している時に比べたら全然大したことない。なんてことを考えていると、


「タケトくんもどうかしら? やってみたくなったでしょ」


「うわっ」


 そんな声が突然、俺の耳元で聞こえて驚く。反射的に身体を仰け反らせて振り返れば能力先生と新山先生が俺のすぐ後ろに立っているではないか。びっくりしたんですけど。


 さきたちは分かっていたのかくすくすと笑っている。よし、あとで脇腹を突っついてやろうかな。


 脇腹をすぐに隠したななこにはバレてそうだけどまあいいや。


「能力先生、今日はお邪魔してますけど、耳元で突然声が聞こえたら誰だってびっくりしますからね。ところで新山先生は見学ですか?」


「まあまあ。いいじゃない」


「そ、そんなところかしら」


 俺が能力先生と新山先生に話しかけていると、


「集合!」


 トレーニングをしていた生徒たちが部長さんの掛け声に合わせて一斉に集まり能力先生と新山先生に向かって挨拶をする。


「礼!」

「「「お願いします!」」」


 俺たちは部員ではないけど、雰囲気に流されたというか、気づけば一緒になって挨拶していたよ。


「はい。今日もケガがないよう気をつけていきましょうね」


「「「はい!」」」


 顧問の能力先生から連絡事項が伝えられると、各自トレーニングを再開させる。


「タケトくん。それでどう? やってみたいでしょ」


「そうですね……」


 やってみたくないかと言われれば正直やってみたい。

 でもな、念体レベル1の俺がやったところで部活の邪魔にしかならない気がするんだよな……


「邪魔になるからとか考えなくていいわよ。ほら、男性がこの競技に参加するなんてこと滅多にあることないじゃから、みんなにも良い刺激になると思うのよ」


 そういうことか、と考えた次の瞬間には、


「能力先生! タケトくんに無理強いはしないと約束しましたよね」


 新山先生が俺と能力先生の間に割って入り能力先生に注意する。


「無理強いじゃないわよ。タケトくんにどうかなって尋ねているだけよ。せっかくの機会だし何事も経験と思うのよね、経験、ね」


 せっかくの機会というのは、最近決まった校則に、男性も部活に参加していいことになったようだが、それは部活顧問がいる時に限るらしく、その事を言っているのだ。


 俺はバンドをしているから部活をする気はないけど、せっかくの機会だといえばそうだよな。


 とりあえず俺の事で先生方2人の仲が悪くなっても困る。


「新山先生大丈夫です。俺もやってみたかったんですよ」


「タケトくんならそう言うと思っていたわ」


 俺の言葉に笑みを浮かべる能力先生と、えっ!、と驚いた顔を向けてくる新山先生。


 新山先生にそんな顔をさせてしまい、申し訳ないと思った俺は前に出るタイミングで新山先生の耳元に素早く顔を近づけ、


「新山先生、庇ってくれてありがとうございます」


 小声でお礼を伝えた。


 かなり早口になったけど、伝わっただろうか。残念、新山先生が俯いているから分からないや。


 ————

 ——


「ふう」


 俺は今、念道球を握りしめて、パワー測定マシンの前に立ち心を落ち着かせている。


 知らなかったがパワー測定マシンと念道球は繋がっており、この念道球を握っていないと数値が正しく表示されないらしい。


「タケトくんリラックス、リラックス」


 初めてだと30〜60いけばいいだろう言う能力先生。

 それって念体なし(素の状態)の一般女性の平均値と一緒ですよね。


 能力先生に悪気はないのだろうけど、なんか悔しい。念体を展開しつつそんなことを考える。


 そもそも念体とは一度使うと解除するまで発動し続けるが、その間は念力をずっと消費しつづける事になる。


 もちろん再使用にはクールタイムが発生するが、このクールタイムにも個人差があ。

 

 ちなみに早い人でも1秒くらいらしい。


 俺はヒーリングの恩恵でクールタイムというものがない。だから念体を誤って解除してしまったとしてもすぐに再使用できてしまうのだ。


 ——ん?


 俺にはクールタイムがないって事は……もしかして!


 俺はそこであることを閃いた。そう、重ねがけだ。重ねがけをしたらどうなるのだろうかと。


 二重に発動するのか、それとも発動、念力消費、どちらもせずに不発に終わるのか。

 俺的には念力だけ消費して不発に終わる可能性が1番高いと思っているけど。


 ——試してみるか。


 みんなが注目しているのでとりあえず念体レベル1を展開する。僅かに周囲の動きが遅くなった。


 これはミルさんとの鍛錬でも普通に使っているものなので無意識に近い感覚で簡単に展開できる。


 問題はここから先だ。初めての試みでうまく発動できるのか。緊張からか鼓動を強く感じる。


「ふぅ」


 落ち着け、みんなから注目されている手前、時間はあまりかけれない。ほら覚悟を決めろよ俺。


 ——くっ……


 結論からいうと発動できた、が、かなり苦しい。効果もよく分からない。

 でも身体にかかる負荷と抵抗が増しているから少しは期待してもいかもしれない。

 だがこれを維持するのはつらい。今すぐにでも解除したい気分だ。やるならさっさとやらないと……


「行きます!」


 念体を気合いと根性で維持しつつ、俺は拳を前に突き出した。


 ドンッ!


 豪快な音が場内に響き渡り念道バックが僅かに揺れるが、それだけ。僅かに凹んだ表面もすぐに元に戻ってしまった。


 これじゃ大した記録も出ていないだろうと思ったが、パワー測定マシンの下方辺りには157という数値が表示されていた。


 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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