第147話
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「先生おはようございます」
「ぉおはようございます、タケトくん」
新山先生といつものように朝の挨拶を交わすが……
——?
今日の先生はなんだかちょっとそわそわしているような、どこか落ち着きがない。こんな先生はとても珍しい。何かあったのだろうか。
「さ、昨夜放送されてましたね。タケトくんが出演していたうたコラボ。先生も見ましたよ」
そういうことか。番組での話が聞きたかったのか。俺がうたコラボに出演することはオファーがあった次の日には学校中に広まっていたからね。
もちろん、犯人はウチのクラス。クラスの半分ちかくが武装女子の事務所でバイトをしているから広まるのも早い。
初めての収録だったけど色々あったよな……まだみんなには教えてないけどシャイニングボーイズとの共演話も来てる。
南野マネージャーさんから中山さんに連絡があったんだ。
歌とはまったく関係ないグルメ番組のオファーが。5人の男性(俺とシャイニングボーイズ)1人ずつにサポートパートナー(女性)が付き料理対決する。
男性対決はみんなが見たいはずだからと、前回と同じミナミンテレビでやるらしいけど、どうしようか迷っている。
他にもサイキックスポーツ協会ってところからもサイキックスポーツの観戦に来ませんかというような、これまた歌とは関係ないメールも来ていたし。
ミルさん曰く人気が低迷しているので俺に応援してほしいのではないかと。ミルさんからサイキックスポーツはどんな競技か尋ね、ちょっとだけ興味が出た俺。
チケットを送ってくれるらしいし、今度観戦に行ってみるのもいいかなって思っている。
「ありがとうございます。それでその、どうでしたか」
なんて事を思い出しつつ、番組の感想を尋ねてみると先生がピタリと足を止めて俺の方に顔を向けていた。
「それはもうすゅご……えーこほん。凄かったわね。先生とても感動しました」
あれ、目の錯覚かな? 今一瞬だけ、いつものキリッとした先生の顔じゃなかったような……
「タケトくん? どうかしましたか?」
「いえ」
不思議そうに首を傾げる先生は……いつもの先生だ。やっぱり気のせいだったのだろう……
それからは、どこがよかった、とか、見ていて元気が出ました、とか、先生、感動して録画した番組を何度も見てしまいましたよ、などと口調はいつもの淡々とした感じだが、番組を見た感想を教えてくれた。
しかし、録画して何度も見るまでは、さすがにないだろうから、そこは先生の優しさだろうな。
「ありがとうございます。先生にそう言ってもらえるとうれしいですね」
「タケトくんは、とても頑張っていたのですね。あのレベルの念動操作は誰でもできることじゃありません。能力先生もう褒め……まずいわね」
能力先生がまずい? なんでだろう、気になる。先生の声が小さくてうまく聞き取れなかったんだけど、聞き返しても何でもありませんって、ホントなんだったんだろう。
そんな先生の隣を並んで歩くが、やっぱり最近の先生はちょっと雰囲気が変わった気がするんだ。なんかこう……綺麗になった?
あ、綺麗になったといっても、普段から先生は先生らしくキチンとした姿でお化粧もしているし普通に綺麗なんだけど、って、何を言ってるだろ。
もう、自分でも何を言ってるのか分からなくなってきたな。けど、やっぱり何かが違うんだよね。
ひょっとしてお化粧の仕方でも変えたのかな……? それとも……と先生の胸の辺りにある名札に目を向ける。これは昨日までなかったものだ。
いやいやこれは生徒たちだけの話で先生には関係なかったはず。
なんてことを考えていると、思ったよりも近くを歩いていた先生の肩に触れてしまい慌てて一歩離れる。
先生は気にしていないようだけど、前世の感覚で咄嗟に離れちゃうんだよね。こんな時の適切な距離感って時々分からなくなるからさ、むずかしいな。
「「「タケトくんおはよー」」」
先生の話に相槌を打ちつつ廊下を歩いていれば、いつも挨拶をしてくれる他のクラスの子たちが声をかけてきた。
「おはようございます」
「うたコラボ見たよ」
「タケトくんカッコよかったよ」
「ますます惚れちゃったよ」
「ビューティーバニー、うまかったよ」
「みんな見てくれたんだ。ありがとう」
教室の中から廊下にいる俺に向かって手を振ってくれるみんなに手を振り返す。
そんな彼女たちの胸の辺りにも名札がある。
これは婚約者云々で一之宮先輩と話し合った1週間後の『生徒会からのお知らせ』が再び(2度目)届いた次の日くらいから、俺に話しかけられても迷惑じゃない生徒は名札を付けてくれるようになった。
とはいえ、俺からじゃなくて話しかけられる回数の方が多いんだけど。
顔は分かるけど、今さら名前なんて聞けない、というような子たちがたくさんいたから、名札は正直ありがたい。
今のところ名札を付けていない生徒を見かけたことがないんだけど、全員が名札を付けているってことはないだろう。
俺のクラスに婚約者ができたのに、学校生活が今までとほとんど変ってないからそう思うんだけど、これは優秀な生徒会がうまく調整してくれたからだろうと思うんだよね。
実際、一之宮先輩たちは忙しそうだし。これは当分の間、一之宮先輩たちに頭が上がらないぞ。
「おはようございます」
教室に入り、着席した後に教壇に立つ先生に向かって挨拶をすると、すぐにホームルームが始まる。
「今日はみなさんにうれしいお知らせがります」
うれしいお知らせ? なんだろう。先生の言葉に教室内が少しざわつく。
「実はですね……」
その内容は1年の男子生徒が2名と2年の男子生徒が1名。今日から通ってくるというもの。
でも俺の時とは違い、午前中、しかも、好きな時間に登校して女子生徒とは別の教室で授業を受けたらすぐに下校するとのこと。
まずは学校に慣れてもらうところから始めるらしい。
なるほど、先生の名札の理由はこれか。危うく、恥ずかしい勘違いをするところだったよ。
「1年生が肥田竹人くんと、尾根井三蔵くん。
2年生が陸奥利勝くんです。 皆さんなら大丈夫かと思いますが、彼らを見かけても過剰に反応しないようにして下さいね」
そうしてホームルームは終わり先生は教室を出ていった。
それからは授業が始まるまでの小休憩。短い時間であるが、昨夜放送されたうたコラボの話題で盛り上がる。
ちなみに俺のクラスの子たち。俺がクラスに慣れるまで首から下げていた名札を今は胸に付けている。
その中には、さきとななことつくしとさちこも入っており、理由は婚約者だからこそこういう事はキチンとしておかないと大変らしい。
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