第105話
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香織さんの親戚(野原一族)と過ごす最後の日の夜(元日の夜、明日には自宅に帰るため)。
最後の夜というだけあって俺たちの事(家庭内)を踏み込んで聞いてくるお婆さんやお義母さんに、それに便乗する親戚一同。
そんな香織さんが振られている話はもっぱら子どもについて、というか俺との夜のお話。
俺はとても恥ずかしいが女性陣は違っていてとても興味津々。
たぶん、お酒が入っているからだよね?
嬉々として尋ねて親戚一同に香織さんが嬉しそうに答えているんだ。
「タケトくん、すごく優しいの……でもそれだけじゃなくて……」
聞こえない、俺には何も聞こえないぞ。
「そ、そんな感じなのね。いいわ〜、私も後10年若かったらお願いしたのにね〜」
「そうよね〜」
お義母さんと同じくらいの人だろうか、綺麗な感じの女性たちが俺に向かって笑みを浮かべている気がするが、俺は気づかないフリをして目の前にあるお鍋に箸を伸ばす。
「あ! タケトくん、私がとってあげるね。これでいいの?」
「タカコちゃんありがとう。じゃあ、それと、それと……」
「あ〜タカコねぇちゃんずるいよ〜。次はわたしがタケトくんにとってあげるからね〜」
「じゃあ、わたしはその次〜」
「あはは。ありがとう。えっと、みんなも俺ばかり見てないで食べようか……ほら、俺一人で食べても楽しくないからさ」
「「「は〜い」」」
そう、俺は大人たちのテーブルから少し離れた子どもたちだけのテーブルで食事をしていた。ミルさん? 今日のミルさんは俺の側ではなく香織さんの隣で相槌を打っている。
それだけ野原一家内は安全だと判断しているのだろうね。
「まあまあ。そうなの? 香織ちゃんから誘うことがほとんどなのね。あ、そうよ思い出したわ。私は『子生の採り』を利用していたから男性との経験はないけど、友人も男性からは誘ってくることがほとんどないから大変だったって言っていたわね」
「私もそんな話し聞いたことあるわね。だから夫(男)なんて必要ないと思っていたけどタケトくんなら全然ありよ。というか香織ちゃんよくやったわ。これで野原一族も……」
おっと、なぜか子どもたちまで、大人たちの会話に耳を傾けているじゃないか。子どもたちの意識がそっちに行かないように、慌てて適当な話題を振ってみる。
「そういえば、みんなの学校では何が流行ってるの?」
「えっとね〜」
洋服や音楽、ゲームなんかの流行りを、あれもだよ、これもだよって楽しそうに言い合いながら俺に教えてくれる子どもたち。
武装女子やタケトくんも大人気だよ、ってさりげなく気遣ってくれる優しい子たち、どうにか話題が逸れてよかったよ。なんて思っていたのに、
「香織ちゃんもやるわね〜」
「結婚してからほとんど毎日ならそろそろ兆しもあるんじゃないの」
「実は……今ちょっと遅れてて、あれにも反応があって……」
ぶっ! もしかしたらって話が少し前にあってそれからちょっと夜の営みを控えていたけど昨日の夜には遅れて半月になるから期待できるかも、でも、まだ分からないから、とちょっと遠慮気味に話していた香織さん。
お婆さんやお義母さんは自分の事のようにちょっと誇らしげ。なるほど、お婆さんやお義母さんたちのあの顔は確信犯だ。
それを伝えたくて話題を振ったんじゃないだろうか。
後で知ったことだが、ここ世界の男性は子どもができたと分かると嫌がり、酷い人だと手をあげる男性もいるそうだ。なんで? と思うがそれが普通らしい。
だから、その兆しがあれば男性に悟られないように距離をとる(実家に帰省するか、環境の整った場所でゆっくりと過ごす)女性が多いそうだ。
だから香織さんも俺の顔色を窺っていたそうだが、俺は逆に喜びうれしい、と伝えたものだから実家で過ごす予定を変更して俺と過ごすことを選んだ。
「きゃー」
「そうなの」
「やるじゃない」
ちょっとした歓声の後に一斉に向けられる視線。それは子どもたちからも。悪い事をしているような居心地の悪さを感じたよ。
————
——
『シャイニングボーイズ、カッコよかったですよ』
香織さんの周りにみんなが集まったタイミングで、こっそりと大部屋から抜け出した俺は朱音さんとミルさんとゲームをしていた。
今は討伐対象であるジェネラルオークの城のダンジョンを進んでいるが3人で進むと割と楽なダンジョンなのでこうして会話ができる。
ミルさん? ミルさんはすごいね。香織さんの隣にいたのに、俺が大部屋からこっそりと抜け出し、自分の部屋に向かって歩けば、隣に並んで歩いていたんだもん。驚き過ぎて心臓止まるかと思った。
『先越されました』
ん、先越された?
『朱音さんが育てたグループの無茶苦茶いい茶を改名してシャイニングボーイズになったんですよね?』
『ん? 違う。あれは南条グループの秘蔵っ子』
『南条グループの秘蔵っ子?』
『そう……』
南条グループには抱え込んでいる男性がいるらしく、その中でも女性にサービスのできる優秀な男性を選んだのだろうとのこと。
朱音さんは東条グループが沢風くんを引き込んだ辺りから計画していたのではないかと考えているらしい。
東条グループの一人勝ちを良しと考えていなかったのだろうとも。
そうでもないと、せっかく抱え込んでいる男性を世に出すようなことはしなかっただろうとね。
ちなみに西条グループにはそんな抱え込んでいた男性はいないそうだ。
これは男女比に違いがあるように遺伝子も女性側の遺伝子が強く、男性側の遺伝子の影響はほとんど受けないと世間一般では考えられているため。
俺はそんなこととは知らなかったから聞いた時にはびっくりしたよ。
『……それに無茶苦茶いい茶、まだ諦めてない』
突然プンプンと怒り出す朱音さんのアバター。
『やっぱり無茶苦茶いい茶のグループ名は事務所に却下されたんだ』
俺の言葉にしょんぼりとする朱音さんのアバター。朱音さんは言葉足らずなところがあるけど、なんとなく分かるんだよね。
『……そう。でも今はそれよりも問題がある』
朱音さんとしては春先のデビューを考えてるが、自分に甘い自由な男性グループ。弛ん……緩んだ体型を絞ることは難しそうだと朱音さんが話せば、ミルさんが珍しく発言する。
『お嬢様、それなら一層の事グループ名を『ぽっちゃり男子』にしてみてはどうでしょう』
しょんぼりとしていた朱音さんのアバターの頭上にエモートの落雷が落ちる。
『ミルは天才か!』
その後はクエストをサクッとクリアして解散。後日、朱音さんから男性アイドルグループの名が『ぽっちゃり男子』に正式に決まったと聞くことになる。
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